看護臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
60歳男性、長年のアルコール性肝硬変の既往あり。突然の大量吐血と冷汗、顔面蒼白で救急搬送。血圧
88/52 mmHg、脈拍
128回/分・微弱。意識は清明だが不安が強い。緊急内視鏡で食道静脈瘤からの活動性出血を確認。
看護介入戦略 (Nursing Intervention)
1.
アセスメントと初期対応:ABC(気道、呼吸、循環)の確保。酸素投与、太い静脈路の確保(14-16Gカテーテル)、
ここがポイント! 血液型検査と交差試験のための採血を同時に行う。
2.
出血制圧への準備:医師からセングステーケン・ブレイクモアチューブ挿入の指示が出たら、迅速にチューブと減圧装置、潤滑剤、固定テープ、吸引器を準備。挿入中は患者のバイタルと苦痛のサインを観察し、安楽な体位(半坐位)を保つ。
3.
挿入後の管理:チューブの位置とバルーンの圧を確認。口腔内の吸引を頻回に行い、誤嚥を予防。バルーンによる圧迫痛や、まれに食道穿孔などの合併症に注意する。
患者の安全と注意事項 (Precautions)
・気道確保は最優先:吐血時は横向きにし、吸引器を常備。
・循環動態のモニタリング:ショックの徴候(血圧低下、頻脈、尿量減少)を見逃さない。
・絶飲食(NPO)の徹底:医師の指示があるまで、一切の経口摂取は禁止。
看護処置と与薬フロー
| 段階 | 看護ケアの焦点 | 具体的な行動 |
|---|
| 急性期(出血中) | 生命徴候の安定化と止血 | 太い静脈路確保、輸液・輸血開始、止血チューブ挿入の準備と介助、酸素投与、バイタルサインの5-15分毎のモニタリング |
| 安定期(止血後) | 再出血予防と合併症管理 | チューブの固定と圧管理、口腔ケア、栄養管理(腸管安静後は低蛋白食へ)、肝性脳症の兆候(見当識障害、羽ばたき振戦)の観察 |
| 退院前・指導期 | 生活習慣改善と再発防止 | アルコール禁止の徹底、定期的な内視鏡検査の重要性、食道静脈瘤結紮術後の食事(柔らかい物から開始)の指導 |
先輩看護師からの一言
「食道静脈瘤出血は、『時間との勝負』の典型です。患者さんは自分の血を吐く恐怖と戦っています。看護師は、冷静かつ迅速に技術的な準備を行うと同時に、『大丈夫です、一緒に頑張りましょう』と声をかけ、患者さんの手を握るような心のケアも忘れないでください。技術と温かさの両方が、危機的状況を乗り切る力になります。」