看護臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)救急外来に「大量に血を吐いた」という主訴で52歳の男性が搬送されます。既往歴に非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)による肝硬変があります。顔面は蒼白で、冷や汗をかいており、意識は清明ですが不安そうです。バイタルサインは上記の通りです。
看護介入戦略 (Nursing Intervention)1.
一次評価(ABCDEアプローチ):
A(気道):吐血による気道閉塞のリスクを評価。必要に応じて吸引準備。
B(呼吸):呼吸数、SpO2をモニタリング。酸素投与を開始(通常は高流量)。
C(循環):
ここがポイント! 直ちに2本の太い静脈路(16-18G)を確保します。末梢静脈が確保困難な場合は、中心静脈路の確保を医師に要請します。確保後、指示に基づき生理食塩水や乳酸リンゲル液をボーラス投与(急速投与)します。同時に、
タイプ&スクリーン(交差適合試験前の血液確保)または緊急輸血の準備をラボに依頼します。
2.
継続的モニタリング:血圧、心拍数、呼吸数、SpO2、意識レベルを頻回に測定。尿量(カテーテル留置)も重要です。
3.
医師との連携と準備:循環が多少落ち着いた段階で、内視鏡的止血術(EVLなど)や薬物療法(バソプレシン誘導体、ソマトスタチン製剤)の準備を進めます。
患者の安全と注意事項 (Precautions)・
混同注意! 食道静脈瘤出血が強く疑われる場合、
絶対に安易に経鼻胃管を挿入しないでください。医師の明確な指示がある場合のみ、細く柔らかいチューブを使用するなど慎重に行います。
・輸液・輸血に伴う
輸血反応 (Transfusion reaction)や
体液過負荷 (Fluid overload)に注意します。特に肝硬変患者はアルブミンが低く、浮腫や腹水を来しやすいです。
・患者と家族の不安は極度に高まっています。処置の説明は簡潔に、安心させる声かけを心がけます。
看護処置と与薬フロー
| 段階 | 看護介入 | 目的・注意点 |
|---|
| 即時対応 (First 5 mins) | 酸素投与、太い静脈路2本確保、輸液蘇生開始 | 組織灌流と酸素化の維持。静脈路は可能な限り太いサイズ(16G以上)で。 |
| 初期蘇生 (First 30 mins) | バイタルサイン頻回測定、輸血準備、血液検査(CBC, 凝固機能) | ショックの程度を評価。Hb, Ht, PT-INRは出血量と肝機能を反映。 |
| 確定的治療へ | 内視鏡治療の準備、止血薬(テルリプレシン等)の投与 | 循環が安定し次第、原因に対する治療を開始。看護師は内視鏡室への移送を安全に実施。 |
先輩看護師からの一言
「出血性ショックの患者さんを前にした時、看護師の役割は『いかに迅速に循環を立て直すか』です。パニックになりそうですが、まずは『気道、呼吸、循環』の順番で動くという基本を思い出してください。静脈路確保は看護師の腕の見せ所。確実に太いルートを確保できれば、その後の治療の全てがスムーズになります。国試でも臨床でも、『生命の危機』が何かを理解し、優先順位を間違えない判断力が問われていますよ!」