看護臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
72歳、糖尿病歴30年の男性。右下肢の難治性潰瘍と壊疽のため、右膝下切断術を施行。術後24時間、バイタルサインは安定しているが、左足の観察を依頼される。
看護介入戦略 (Nursing Intervention)
1.
緊急アセスメント:左足の
6Pを評価する(Pain:疼痛、Pallor:蒼白、Pulselessness:拍動消失、Paresthesia:感覚異常、Paralysis:麻痺、Poikilothermia:冷感)。足背動脈と後脛骨動脈の拍動を触知・ドップラーで確認。
2.
即時報告:異常所見を直ちに主治医またはオンコール医師に報告。血管外科コンサルテーションが必要な場合が多い。
3.
肢位の調整:患肢(左足)を心臓より低くしない(下垂位は浮腫を悪化させる)。ただし、急性虚血が疑われる場合、医師の指示に従う。
4.
継続的モニタリング:15〜30分ごとに皮膚色、温感、毛細血管再充満時間をチェックし、変化を記録。
患者の安全と注意事項 (Precautions)
・ 絶対に左足をマッサージしたり、温めたりしない(塞栓が移動するリスクがある)。
・ 血圧測定や静脈採血は、可能な限り左腕を避ける(唯一の健肢の血流を妨げる可能性がある)。
看護処置と与薬フロー
| 状況 | 看護ケアのポイント |
|---|
| 対側肢の循環障害が疑われる時 | 1. 医師へ即時報告。 2. 医師の指示で、血液凝固検査(PT-INR, APTT)やD-ダイマー検査の採血準備。 3. 血管拡張薬や抗凝固薬の投与指示が出る可能性がある。与薬時は出血傾向に注意。 |
| 幻肢痛の管理 | 1. 疼痛スケールで評価。 2. 医師の指示に基づき、鎮痛薬(NSAIDs、オピオイド)を適切に投与。 3. 非薬物療法(ミラーセラピー、リラクゼーション)も併用。 |
先輩看護師からの一言
「切断術後の患者さんを看護する時、つい手術をした方の創部ばかりに目が行きがちです。でも、本当に看護師の腕の見せ所は、『手術をしていない方の足』をどれだけ注意深く観察できるかです。糖尿病や動脈硬化のある患者さんでは、血管の病気は全身性です。片方の足を失ったという事実は、もう片方の足も同じ危険にさらされているという『体からの最大級の警告』なのです。バイタルサインと同じくらい、対側肢の皮膚の色と温感、拍動は、毎回の巡回で必ずチェックする習慣をつけましょう!」