看護学のコア解説
この問題は、
高位脊髄損傷 (High-level spinal cord injury)の急性期に発生する
神経原性ショック (Neurogenic shock)を早期に発見するための、
最も重要なアセスメントについて問うています。
重要概念の分析 (Key Concept)
C5脊髄損傷 (C5 spinal cord injury)は、
頚髄 (Cervical cord)の損傷であり、
交感神経線維の遮断を引き起こします。交感神経は心拍数を増加させ、末梢血管を収縮させる作用があります。これが遮断されると、
血管拡張 (Vasodilation)と
徐脈 (Bradycardia)が生じ、結果として
ここがポイント! 低血圧を伴う
神経原性ショックに陥ります。受傷後数時間以内に発症することが多く、
生命を脅かす緊急事態です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解の①「血圧 80/45 mmHg、心拍数 52 bpm」は、神経原性ショックの典型的な徴候です。
収縮期血圧 80 mmHgは明らかな低血圧、
心拍数 52 bpmは相対的徐脈を示しています。これは自律神経系のバランスが崩れ、副交感神経優位(迷走神経の影響が相対的に強くなる)の状態です。この状態は循環血液量の減少を伴わない「
混同注意!分布異常性ショック (Distributive shock)」であり、直ちに昇圧剤投与や輸液管理などの介入が必要です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
②「乳頭線以下の感覚消失」と③「下肢の運動不能」は、C5レベルの
完全損傷 (Complete injury)では
予測される神経学的欠損です。これらは損傷の重症度を示す重要な所見ですが、それ自体が直ちに生命を脅かす状態ではありません。④「尿閉と膀胱拡張」は、
脊髄ショック期 (Spinal shock period)にみられる自律神経障害による
無緊張性膀胱 (Atonic bladder)の症状です。確かに管理が必要ですが、神経原性ショックに比べれば緊急性は低いと言えます。
関連概念の整理 (Related Concepts)
脊髄損傷の急性期には、
脊髄ショック (Spinal shock)と
神経原性ショック (Neurogenic shock)が混同されがちです。
混同注意! 脊髄ショックは損傷直下の脊髄機能が一時的に完全に消失する状態(反射消失、弛緩性麻痺、感覚消失など)を指し、
神経原性ショックは自律神経系の障害による循環動態の不安定さ(低血圧、徐脈)を指します。両方が同時に起こることもあります。
概念のまとめ
・高位脊髄損傷(特にT6以上)の急性期には、神経原性ショックのリスクが高い。
・神経原性ショックの特徴:
低血圧 + 徐脈(他のショックでは頻脈が多い)。
・最も重要なアセスメントは
バイタルサイン(血圧、脈拍)の継続的モニタリング。
一目で比較!
| 状態 | 主な原因 | 特徴的なバイタルサイン | メカニズム |
|---|
| 神経原性ショック | 脊髄損傷(T6以上) | 低血圧 + 徐脈 | 交感神経遮断→血管拡張、心機能抑制 |
| 出血性ショック | 大量出血 | 低血圧 + 頻脈 | 循環血液量の絶対的減少 |
| アナフィラキシーショック | 重度のアレルギー | 低血圧 + 頻脈(または不整脈) | 血管透過性亢進、血管拡張 |
解剖生理と薬理のポイント
・交感神経の出発点は脊髄
胸髄 (Thoracic cord) T1〜L2。頚髄損傷ではこの経路が遮断される。
・治療には、血管収縮作用を持つ
α作動薬 (Alpha-agonist)(例:ノルアドレナリン)や、心拍数を増加させる
β作動薬 (Beta-agonist)が使用されることがある。
暗記のコツとゴロ合わせ
神経原性ショックの特徴は「
低く、遅い」(血圧が低く、脈が遅い)。他のショックは「低く、速い」が多いので、ここが鑑別ポイント!
国試頻出ポイント
脊髄損傷の急性期看護では、
「ABC(気道、呼吸、循環)」の優先順位が最も重要です。麻痺の有無よりも、まず生命を脅かす状態(呼吸障害、ショック)がないかをアセスメントする力を問われます。
国試出題パターンの変化に注意!
同じ「脊髄損傷」でも、急性期は「神経原性ショック」、慢性期は「自律神経過反射 (Autonomic dysreflexia)」が頻出テーマです。時期によって看護ケアの優先順位が180度変わることを意識しましょう。