看護学のコア解説
この問題は、小児整形外科疾患である
レッグ・カルベ・ペルテス病 (Legg-Calvé-Perthes disease)の特徴的な身体所見(フィジカルアセスメント)について問うています。この疾患は、
大腿骨頭の特発性無血管性壊死 (Idiopathic avascular necrosis of the femoral head)であり、4〜8歳の男児に好発します。
重要概念の分析 (Key Concept)
レッグ・カルベ・ペルテス病の本質は、大腿骨頭への血流が途絶えることによる骨壊死です。壊死した骨は脆弱になり、体重負荷により徐々につぶれ(扁平化)、治癒過程で新しい骨が形成されます。この過程で、関節の適合性が失われ、
関節包の拘縮 (Joint capsule contracture)や
関節内炎症 (Intra-articular inflammation)が生じます。これが、特徴的な可動域制限の原因です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
ここがポイント! レッグ・カルベ・ペルテス病の最も特徴的な身体所見は、
股関節の内旋 (Internal rotation) と外転 (Abduction) の制限です。これは、関節包の炎症と拘縮、および大腿骨頭の変形により、これらの動きが特に障害されるためです。アセスメントでは、仰臥位で股関節と膝関節を90度屈曲させた状態で(股関節屈曲位)、内旋と外転の動きを評価します。痛みは持続的ではあるものの、
「重度の急性疼痛」ほどではなく、跛行が主訴となることが多い点が鑑別の鍵です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ①「重度の急性疼痛と荷重不能」:これは、
大腿骨頸部骨折 (Femoral neck fracture)や
化膿性股関節炎 (Septic arthritis)など、より急性で重篤な状態で見られます。レッグ・カルベ・ペルテス病の疼痛は通常、鈍痛で間欠的です。
②「患側股関節の明らかな変形」:レッグ・カルベ・ペルテス病では、初期には外見上の変形は目立ちません。変形はレントゲン画像上で確認される大腿骨頭の扁平化です。
④「股関節部の腫脹と熱感」:これは、化膿性関節炎や外傷後の炎症など、急性炎症過程を示唆します。レッグ・カルベ・ペルテス病は慢性の過程であり、通常、著明な発赤や熱感は伴いません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
小児の跛行を来す他の重要な疾患として、
一過性股関節滑膜炎 (Transient synovitis)(多くはウイルス感染後、安静で改善)や、思春期に発症する
大腿骨頭すべり症 (Slipped capital femoral epiphysis: SCFE)があります。SCFEでは、股関節の
外旋制限 (Limited external rotation)が特徴的で、レッグ・カルベ・ペルテス病の「内旋制限」と対照的です。
概念のまとめ
・レッグ・カルベ・ペルテス病:4-8歳男児に多い大腿骨頭の無血管性壊死。
・主訴:跛行、股関節・鼠径部・膝の鈍痛(関連痛)。
・特徴的所見:
股関節の内旋・外転制限。
・画像診断:単純X線が基本。初期は関節裂隙の拡大、進行期は骨頭の扁平化・硬化像。
・治療:年齢と病期に応じ、観血的・保存的治療(装具、免荷)。
一目で比較!
| 疾患 | 好発年齢 | 主な機序 | 特徴的な身体所見 |
|---|
| レッグ・カルベ・ペルテス病 | 4-8歳(男児) | 大腿骨頭の無血管性壊死 | 股関節の内旋・外転制限 |
| 一過性股関節滑膜炎 | 3-8歳 | ウイルス感染後の関節包炎症 | 可動域制限はあるが、レッグ・カルベ・ペルテス病より軽度。安静で速やかに改善。 |
| 大腿骨頭すべり症 (SCFE) | 思春期(肥満児に多い) | 成長板の脆弱性による骨頭の後下方すべり | 股関節の外旋制限、歩行時足先が外を向く |
| 化膿性股関節炎 | 全年齢(乳幼児も) | 細菌感染 | 激痛、荷重不能、発熱、局所の熱感・発赤 |
解剖生理と薬理のポイント
・大腿骨頭の血液供給:小児期は大腿骨頭靭帯内の動脈が主要な栄養血管。この血管が何らかの理由で閉塞すると、壊死が起こる。
・治療の目標:大腿骨頭を寛骨臼に包み込むように保持し(包容療法)、正常な球状の形で治癒させること。これにより、将来の変形性股関節症を予防する。
暗記のコツとゴロ合わせ
・「
レッグ・カルベ・ペルテス、内に外に動かせん」:内旋・外転制限を覚えましょう。
・「
SCFEは外に回せん」:大腿骨頭すべり症は外旋制限。対になるように覚えると混乱しません。
国試頻出ポイント
小児の整形疾患では、
「好発年齢」「主訴」「特徴的な身体所見」の3点セットで出題されることが非常に多いです。レッグ・カルベ・ペルテス病は「4-8歳男児」「跛行と股関節痛」「内旋・外転制限」を確実に押さえましょう。また、選択肢に化膿性関節炎や骨折などの急性疾患が混ざり、鑑別を問うパターンも頻出です。
国試出題パターンの変化に注意!
単に「特徴はどれか」と問うだけでなく、「この所見から看護師が疑う疾患はどれか」という鑑別診断的な出題や、「治療として適切なのはどれか(装具療法、免荷指導など)」という看護ケアへの応用パターンもあります。病態を理解していれば、どのような問われ方にも対応できます。