看護学のコア解説
この問題は、小児整形外科疾患である
レッグ・カルベ・ペルテス病 (Legg-Calvé-Perthes disease)の特徴的な臨床症状を問うています。この疾患は、
大腿骨頭の無腐性壊死 (Avascular necrosis of the femoral head)を本態とする進行性の疾患です。
重要概念の分析 (Key Concept)
レッグ・カルベ・ペルテス病は、
ここがポイント! 4〜8歳の男児に好発します。大腿骨頭への血流が途絶えることで骨が壊死し、その後、血流が回復して骨が再構築されるという長い経過をたどります。そのため、
急性の激痛や炎症所見は少なく、むしろ「気づかないうちに跛行(はこう)が始まる」ことが特徴です。壊死した骨は脆弱で、体重負荷により徐々に変形し、関節可動域制限を引き起こします。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解の③「跛行はあるが痛みは軽度で、股関節の外転と内旋が制限されている」が最も特徴的です。理由は以下の通りです。
1.
疼痛の性質:急性炎症や骨折と異なり、
跛行 (Limp)が主症状で、痛みは軽度または全くないこともあります(痛みがあっても鼠径部や膝に放散する鈍痛)。
2.
関節可動域制限のパターン:壊死や変形により、特に
股関節外転 (Hip abduction)と
内旋 (Internal rotation)が早期から制限されます。これは診断の重要な手がかりです。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 他の選択肢は、異なる疾患で見られる所見です。
- ①「重度の急性疼痛と荷重不能」:これは大腿骨頭すべり症 (SCFE: Slipped Capital Femoral Epiphysis)の急性期や、化膿性股関節炎 (Septic arthritis)、骨折などで見られる急性の所見です。
- ②「股関節の変形、外旋、短縮」:これは典型的な大腿骨頸部骨折 (Femoral neck fracture)後の所見です。レッグ・カルベ・ペルテス病では、経過が長いためこのような急激な変形は稀です。
- ④「患側股関節の腫脹と熱感」:これは化膿性関節炎や若年性特発性関節炎 (JIA: Juvenile Idiopathic Arthritis)などの炎症性疾患で見られる所見です。レッグ・カルベ・ペルテス病は非炎症性の壊死性疾患なので、通常、局所の熱感や発赤は目立ちません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
小児の跛行を来す主な整形外科疾患を鑑別できることが重要です。レッグ・カルベ・ペルテス病(4-8歳男児)、大腿骨頭すべり症(思春期の肥満児に好発)、化膿性関節炎(発熱、激痛、急性経過)、一過性股関節炎(感冒様症状後の急性跛行)などが代表です。
概念のまとめ
レッグ・カルベ・ペルテス病は「小児期の大腿骨頭の無腐性壊死」。主症状は「
痛みの少ない跛行」と「
股関節外転・内旋制限」。急性炎症症状(発熱、腫脹、激痛)はない。
一目で比較!
| 疾患 | 好発年齢・特徴 | 主な症状 | 疼痛の特徴 |
|---|
| レッグ・カルベ・ペルテス病 | 4-8歳、男児に多い | 痛みの少ない跛行、外転・内旋制限 | 軽度の鈍痛、または無痛 |
| 大腿骨頭すべり症 (SCFE) | 思春期(10-16歳)、肥満児に多い | 跛行、股関節痛(鼠径部、膝)、外旋位 | 慢性型は鈍痛、急性型は激痛 |
| 化膿性股関節炎 | 乳幼児を含む全年齢 | 発熱、患肢の不動、腫脹・熱感、激痛 | 重度の自発痛、触れると激しく泣く |
| 一過性股関節炎 | 3-8歳、感冒の後 | 急性の跛行、股関節痛 | 急性だが、化膿性よりは軽度 |
解剖生理と薬理のポイント
大腿骨頭は、小児期は成長軟骨板(骨端線)により栄養血管が分断されており、血流が脆弱です。何らかの原因でこの血流が阻害されると、骨細胞が壊死します。治療の基本は「
免荷 (Non-weight bearing)」と「
関節可動域訓練 (Range of motion exercise)」を組み合わせ、球形の大腿骨頭が再構築されるのを待ちます。場合によっては外科的介入(骨切り術)が行われます。
暗記のコツとゴロ合わせ
「
レッグ・カルベ・ペルテスは、痛くない跛行(はこう)」と覚えましょう。また、好発年齢の「4-8歳男児」は、「ヨン(4)ヤ(8)男子」と語呂合わせできます。SCFE(思春期肥満児)との鑑別が頻出です。
国試頻出ポイント
小児の跛行疾患の鑑別は超頻出です。年齢、疼痛の有無と程度、全身症状(発熱)の有無、関節可動域制限のパターン(内旋制限か外旋制限か)をセットで問われることが多いです。レッグ・カルベ・ペルテス病では「疼痛より跛行が主訴」「外転・内旋制限」を押さえましょう。
国試出題パターンの変化に注意!
単に症状を選ばせるだけでなく、「この患児に対して看護師が最初に行うべきアセスメントは何か?」(例:歩行観察、疼痛の部位と性質の聴取、関節可動域のチェック)や、「保護者への説明で適切なものは?」(例:「長期間の治療と経過観察が必要な病気です」)といった、看護実践に結びついた形で出題されることも増えています。