看護学のコア解説
この問題は、
自閉スペクトラム症 (Autism Spectrum Disorder: ASD) の幼児期における中核的な臨床症状を、典型的な発達行動と鑑別しながら問うています。
ここがポイント! ASDの診断基準は、
①社会的コミュニケーションおよび相互関係における持続的障害と、
②限定された反復的な行動、興味、活動様式の2つの領域に基づいています。看護師は、これらの特徴を理解し、早期発見と家族支援の重要な役割を担います。
重要概念の分析 (Key Concept)
自閉スペクトラム症 (ASD)は、神経発達症の一つです。その中核症状は、対人相互反応の質的障害(例:アイコンタクトの欠如、名前を呼ばれても反応しない)、コミュニケーションの障害、そして常同的・反復的な行動や興味(例:手をひらひらさせる、体を前後に揺らす)です。3歳児という発達段階において、これらの症状は明確に観察可能であり、診断の重要な手がかりとなります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
選択肢③「アイコンタクトを避ける、名前を呼ばれても反応しない、反復的な手をひらひらさせる行動に没頭する」は、ASDの中核症状をそのまま示しています。
1.
アイコンタクトの回避:社会的相互関係の基本的な要素の障害です。
2.
名前を呼ばれても反応しない:共同注意(他者と注意を共有すること)の障害を示し、聴覚の問題ではなく社会的関わりの障害です。
3.
反復的な手をひらひらさせる行動:常同運動(ステレオタイプ)の典型的な例で、ASDの診断基準B(限定された反復的行動)に該当します。
これらの所見は、ASDを強く示唆する
レッドフラッグ (Red flags)です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 他の選択肢は、ASDに特異的ではない、典型的な幼児期の発達や行動です。
①
年齢相応の粗大運動技能を示す:ASDの子どもは運動発達に遅れがないことも多く、この所見だけではASDを否定も肯定もできません。ASDは主に社会性・コミュニケーション領域の障害です。
②
分離不安を示し、親しい養育者から安心を求める:これは典型的な愛着行動(アタッチメント)であり、健常な発達の証です。ASDの子どもはむしろ、養育者との愛着形成が独特であったり、分離に対する反応が乏しかったりすることがあります。
④
時折かんしゃくを起こし、他の子どもとおもちゃを共有するのが難しい:欲求不満によるかんしゃくや「貸して・どうぞ」の未熟さは、幼児期にはよく見られる行動です。これらはASDの可能性を示唆する場合もありますが、それだけでは診断的価値は低く、多くの定型発達児にも見られます。
関連概念の整理 (Related Concepts)
ASDのアセスメントでは、
早期兆候 (Early signs)を見逃さないことが重要です。喃語の少なさ、指さしの欠如、ごっこ遊びをしない、他の子どもへの関心の薄さなども重要な観察ポイントです。看護師は、予防接種や健診の場などで、これらのサインに気づき、適切な専門機関への紹介につなげる役割があります。
概念のまとめ
・ASDの中核症状:
社会的コミュニケーション/相互関係の障害 と
限定された反復的行動・興味。
・幼児期のレッドフラッグ:アイコンタクトの欠如、名前への反応なし、指さしの欠如、常同運動。
・鑑別のポイント:運動発達や一時的なかんしゃくなどは、ASDに特異的ではない。
一目で比較!
| 観察項目 | 自閉スペクトラム症 (ASD) に特徴的 | 典型的な幼児期の発達/行動 |
|---|
| アイコンタクト | 避ける、乏しい | 適度に取る |
| 名前への反応 | 反応しないことが多い | 振り向く、反応する |
| 遊び | 一人遊びを好む、ごっこ遊びが少ない | 他の子どもに関心を示し、並行遊びやごっこ遊びをする |
| 行動 | 手をひらひらさせる等の常同運動 | 欲求不満による一時的なかんしゃく |
| 愛着 | 独特な愛着(過度に無関心または過剰) | 養育者への明確な愛着と分離不安 |
暗記のコツとゴロ合わせ
・ASDの核心は「
ソーシャル(社会性)」と「
こだわり」。この2つが揃えば強く疑う。
・ゴロ:「
目が合わない、呼んでもこない、一人でぱたぱた」→ アイコンタクト障害、呼名反応なし、常同運動を連想。
国試頻出ポイント
ASDに関する国試では、
中核症状の具体的な事例(本問のように)や、
家族への支援、
療育の基本原則(TEACCHプログラムや応用行動分析(ABA)など)が問われます。症状を単に暗記するのではなく、「なぜその行動が起こるのか」(感覚過敏、予測の困難さなど)という背景を理解しておくと応用が利きます。
国試出題パターンの変化に注意!
同じASDの知識でも、
①症状の鑑別(本問)→
②診断後の看護計画立案(構造化と視覚的支援)→
③青年期・成人期の二次障害(不安、抑うつ)への対応と、ライフステージに応じた出題がなされます。基礎となる中核症状の理解は、すべてのパターンの土台となります。