看護学のコア解説
この問題は、
看護師の業務委譲 (Delegation)の原則、特に
委譲の5つの権利 (Five Rights of Delegation)に基づいて、
無資格補助者 (UAP: Unlicensed Assistive Personnel)に安全に委譲できるタスクを判断する能力を問うています。これは、チーム医療における
ここがポイント!看護師の責任とリーダーシップの核心に関わる重要な概念です。
重要概念の分析 (Key Concept)
委譲の5つの権利とは、看護師が業務を安全に委譲するための判断基準です。
1.
正しいタスク (Right Task): 委譲可能なルーチンで予測可能な業務か。
2.
正しい人 (Right Person): 委譲先のスタッフがその業務を行うための教育・訓練を受け、能力があるか。
3.
正しい状況 (Right Circumstances): 患者の状態が安定しており、リスクが低いか。
4.
正しい指示・コミュニケーション (Right Direction/Communication): 何を、いつまでに、どのように行い、何を報告するかが明確に伝えられているか。
5.
正しい監督 (Right Supervision): 看護師が適切な監督、評価、フィードバックを行っているか。
UAPに委譲できる業務の特徴は、「
混同注意!看護判断 (Nursing Judgment)」を必要としない、標準化された基本的なケアです。具体的には、食事・排泄・清潔の介助、安定した患者の歩行介助、バイタルサイン測定(ただし、評価は看護師が行う)などです。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は①「理学療法士から許可が出た安定した術後患者の歩行介助」です。
これは
委譲の5つの権利に完全に合致します。
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正しいタスク: 歩行介助は、UAPが訓練を受けた基本的な身体介助です。
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正しい状況: 患者は「安定した術後」であり、かつ「理学療法士から許可が出ている」という客観的評価が加わっており、リスクが低い状態です。
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正しい人: UAPは通常、患者の移動・歩行介助の訓練を受けています。
看護師は、患者の状態が変化していないか事前に確認し、歩行中の安全を監督する責任があります。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
② 糖尿病患者への経口薬投与:
混同注意!薬剤投与は、
看護師の独占業務 (Nurse-Only Function)です。投与前の患者確認、薬剤の知識、副作用の観察など、高度な判断と責任を伴うため、UAPには委譲できません。
③ 胸痛で新入院した患者の初期アセスメント: アセスメントは看護過程の第一歩であり、
看護診断 (Nursing Diagnosis)につながる専門的判断を必要とします。「胸痛」という不安定な症状を持つ患者の評価は、特に看護師が行うべきです。UAPはバイタルサインを「測定」できますが、そのデータを「評価」し、看護計画を立てるのは看護師です。
④ 退院前の患者へのインスリン自己注射指導: 患者教育 (Patient Education) は、患者の理解度や学習能力を評価し、個別化した指導を行う専門的業務です。特にインスリン注射は技術と知識が必要なため、看護師の責任範囲です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
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看護師の業務範囲 (Scope of Nursing Practice): 各州の看護師法で規定される、看護師が行える業務の範囲。アセスメント、計画、実施、評価、患者教育、投薬などが含まれる。
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責任と説明責任 (Responsibility and Accountability): 看護師は委譲した業務の結果に対して、最終的な説明責任を負います。UAPの行動も看護師の監督下にあるとみなされます。
概念のまとめ
- 委譲可能: ルーチンで予測可能、判断を要しない基本的ケア(安定患者のADL介助、歩行介助、単純なバイタル測定)。
- 委譲不可(看護師の独占業務): 投薬、静脈穿刺、創傷処置、看護アセスメント、看護診断、患者教育、輸血管理。
一目で比較!
| 業務内容 | 委譲の可否 | 判断の根拠 |
|---|
| 安定患者の歩行介助 | 可 | ルーチン、予測可能、UAPの標準訓練範囲 |
| 経口薬の投与 | 不可 | 薬理学的知識と判断が必要(独占業務) |
| 新入院患者のアセスメント | 不可 | 看護判断の出発点。データ収集は可だが、解釈・評価は不可 |
| インスリン自己注射の指導 | 不可 | 個別化された患者教育は専門的業務 |
暗記のコツとゴロ合わせ
委譲「できない」業務の覚え方
「薬(くすり)を教(おし)えるのは、看護師のアセスメント」
→ 薬物投与、患者教育、看護アセスメントは、看護師の独占業務で委譲不可!
国試頻出ポイント
委譲の問題は、「UAPに委譲できるのはどれか」という形で頻出です。選択肢の中に必ず1つは「歩行介助」「食事介助」「清拭介助」などの基本的ケアが入っています。逆に、「投薬」「アセスメント」「複雑なドレーンの管理」「患者教育」が入っている選択肢はほぼ間違いです。
国試出題パターンの変化に注意!
単純な「委譲できるのはどれか」だけでなく、「看護師がUAPに指示を出す際、最も適切なのはどれか」(正しい指示の出し方=具体的で明確なコミュニケーション)や、「複数の業務がある中で、看護師が自ら行うべき優先度が高いのはどれか」(委譲できない業務の優先順位付け)といった応用問題も出題されます。常に「看護判断が必要かどうか」を基準に考えましょう。