看護学のコア解説
この問題は、
小児の心肺蘇生法 (Pediatric CPR)、特に
乳児 (Infant)における
一次救命処置 (BLS: Basic Life Support)の最初の行動を問うています。成人と小児・乳児のBLS手順には重要な違いがあり、特に乳児では「安全確認」の後に「反応と呼吸の確認」が最初のステップとなります。
重要概念の分析 (Key Concept)
ここがポイント! 乳児(1歳未満)の心肺蘇生法は、成人のアルゴリズムとは異なります。成人では「反応の確認」→「119番通報とAEDの要請」→「呼吸の確認」という流れですが、
乳児や小児の心停止の多くは呼吸原性(窒息や呼吸不全が原因)であるため、最初に「反応と呼吸の同時確認」を行い、その場で大声で助けを呼ぶことが基本です。これは、単独救助者が多い状況を想定した、迅速な対応を促すための手順です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は①「反応性と呼吸を確認しながら、同時に助けを呼ぶ」です。これは、
アメリカ心臓協会 (AHA: American Heart Association)の小児BLSガイドラインに基づく標準的な手順です。具体的には、乳児の足の裏を軽く叩いたり、肩をたたいたりして反応を確認すると同時に、胸と腹部の動きを見て「普段通りの呼吸」があるかどうかを10秒以内で評価します。この評価を行いながら、大声で周囲に助けを求めます。これにより、心停止の可能性を判断し、次の行動(胸骨圧迫や人工呼吸)に移るかどうかを決定します。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ②「直ちに毎分100-120回の胸骨圧迫を開始する」は、
反応がなく、正常な呼吸がない(または死戦期呼吸のみ)と判断した後の最初の蘇生行動です。評価を飛ばしてすぐに圧迫を始めるのは誤りです。
③「頭部後屈顎先挙上法で気道を確保する」は、反応がなく、呼吸がないと判断した後、人工呼吸を行う前のステップです。最初に行うべきではありません。
④「バッグ・マスクデバイスを用いて2回の救急呼吸を提供する」は、気道を確保した後の行動であり、かつ単独救助者の場合、乳児・小児のCPRでは
胸骨圧迫から開始する(C-A-Bの順)ことが推奨されています。したがって、最初の行動としては不適切です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
- 乳児CPRの胸骨圧迫:乳児の胸骨圧迫は、両乳頭を結ぶ線のすぐ下の胸骨上を、指2本(2-finger technique)または両母指環抱法(two-thumb encircling hands technique)で行います。圧迫の深さは胸の前後径の約1/3(約4cm)です。
- 人工呼吸:気道確保後、救助者の口で乳児の口と鼻を覆って(口鼻同時)行うか、バッグ・マスクを使用します。1回の呼吸は1秒かけて、胸が軽く上がる程度が目安です。
- 救助者の数による違い:単独救助者の場合は「胸骨圧迫30回:人工呼吸2回」の比率です。2人以上の救助者がいる場合は「胸骨圧迫15回:人工呼吸2回」の比率が推奨されます。
概念のまとめ
乳児(1歳未満)BLSの最初のステップ:
安全確認 → 反応と呼吸の同時評価(10秒以内)+助けを呼ぶ。評価の結果、反応がなく正常な呼吸がなければ、直ちにCPR(胸骨圧迫から開始)を開始する。
一目で比較!
| 項目 | 成人・青少年 | 小児(1歳~思春期) | 乳児(1歳未満) |
|---|
| 最初の行動 | 反応確認 → 助けを呼ぶ・AED要請 → 呼吸確認 | 反応・呼吸の同時確認 → 助けを呼ぶ | 反応・呼吸の同時確認 → 助けを呼ぶ |
| 胸骨圧迫部位 | 胸骨中央(胸の真ん中) | 胸骨中央(胸の真ん中) | 両乳頭線のすぐ下の胸骨上 |
| 圧迫方法 | 手掌基部を重ね、肘を伸ばす | 片手または両手(体格による) | 指2本法 または 両母指環抱法 |
| 圧迫深さ | 約5cm | 胸の前後径の約1/3(約5cm) | 胸の前後径の約1/3(約4cm) |
| 圧迫:呼吸比(単独) | 30:2 | 30:2 | 30:2 |
| 圧迫:呼吸比(2人以上) | 30:2 | 15:2 | 15:2 |
解剖生理と薬理のポイント
乳児の解剖学的特徴:
気道 (Airway)が狭く柔らかいため、頭部を過度に後屈させると気道が閉塞するリスクがあります。気道確保は
スナッフィングポジション (Sniffing position)(頭部を少しそらせ、顎を上げる)が適切です。また、心臓は胸骨のすぐ下に位置しているため、胸骨圧迫の位置が成人と異なります。
暗記のコツとゴロ合わせ
乳児BLSの最初は「みる・きく・よぶ」
「
みる(反応と胸の動きを視診)」+「
きく(呼吸音を聴取)」を10秒以内で行いながら、「
よぶ(大声で助けを求める)」。これが最初の一連の行動です。
国試頻出ポイント
小児・乳児のBLSは、成人との手順の違い(最初の行動、圧迫部位・方法・深さ、圧迫呼吸比)が頻出です。特に「最初に何をするか」はほぼ毎回と言っていいほど出題されます。表で比較して覚えることが必須です。
国試出題パターンの変化に注意!
単純な手順の暗記だけでなく、「公園で倒れている乳児を発見した看護師の最初の行動は?」といった具体的なシナリオ問題や、「単独救助者と複数救助者での圧迫呼吸比の違い」など、応用形で問われることが増えています。常に「なぜその手順なのか(呼吸原性心停止が多いから)」という理由を理解しておきましょう。