看護学のコア解説
この問題は、
小児一次救命処置 (Pediatric Basic Life Support, PBLS)における、
乳児 (Infant)に対する
心肺蘇生法 (Cardiopulmonary Resuscitation, CPR)の
圧迫-換気比 (Compression-to-ventilation ratio)について問うています。年齢や救助者の数によって適切な比率が異なるため、正確な知識が救命の質を左右します。
重要概念の分析 (Key Concept)
乳児(生後1歳未満)のCPRでは、年齢区分と救助者の数が重要な判断基準です。アメリカ心臓協会 (AHA) のガイドラインに基づくと、
ここがポイント! 救助者が1人の場合、乳児・小児・成人を問わず、圧迫-換気比は「30:2」が標準です。これは、中断の少ない高品質な胸骨圧迫を優先し、冠動脈灌流圧を維持するという現代のCPR哲学に基づいています。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は②の「30:2 (30 compressions to 2 ventilations)」です。その根拠は以下の通りです。
1.
単独救助者 (Single rescuer) の原則:救助者が1人の場合、乳児であっても成人と同様に30:2の比率で実施します。これは、救助者が圧迫と換気を交互に行う際の効率性と、圧迫中断時間を最小限にするためです。
2.
ガイドラインの統一性:AHAの2020年ガイドラインでは、
混同注意! 救助者が2人以上いる
医療環境 (Healthcare setting)での乳児・小児CPRでは、
15:2が推奨されます。これは、換気がより重要となる小児の生理学的特徴を反映し、かつ複数人で役割分担できるためです。しかし、問題文には「A nurse is performing...」と単独の看護師が行っていると明記されているため、
30:2が正解となります。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
① 15:2:これは
2人以上の救助者がいる場合の乳児・小児CPRで推奨される比率です。単独救助者シナリオでは不適切です。
③ 5:1 および ④ 3:1:これらの古い比率は、過去のガイドラインや、
新生児蘇生 (Neonatal Resuscitation)の特定のアルゴリズムで言及されることがありますが、乳児(生後1歳未満)の標準的なCPRでは使用されません。新生児(生後直後から数時間)と乳児を混同しないことが重要です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
・
胸骨圧迫の深さ (Compression depth):乳児では胸の前後径の約1/3(約4cm)。
・圧迫部位 (Compression landmark):乳児では、混同注意! 単独救助者は乳頭を結ぶ線のすぐ下の胸骨上に指2本を置きます。2人救助者の場合は、両手で胸郭を包み、両親指で圧迫する「両母指環状法」が推奨されます。
・気道確保 (Airway):乳児は頭部が相対的に大きいため、「嗅ぎ位」と呼ばれる自然な位置を保つ程度の頭部後屈が適切です。過度の後屈は気道を閉塞させる危険があります。
概念のまとめ
・乳児CPRの圧迫-換気比は、救助者の数で決定される。
・単独救助者:30:2
・2人以上の救助者(医療環境):15:2
一目で比較!
| 対象 | 単独救助者 | 2人以上の救助者(医療環境) |
|---|
| 乳児 (Infant) | 30:2 | 15:2 |
| 小児 (Child, 思春期まで) | 30:2 | 15:2 |
| 成人 (Adult) | 30:2 | 30:2(チームでも変更なし) |
解剖生理と薬理のポイント
小児の心停止は、成人の心原性 (Cardiac origin)が多いのに対し、低酸素性 (Hypoxic)または呼吸原性 (Respiratory origin)であることが多いです。そのため、従来は換気(気道確保と人工呼吸)がより重視されていました。しかし、現在のガイドラインは、どの年齢でも最初に高品質な胸骨圧迫を開始し、中断を最小限にすることを最優先としています。これが単独救助者時に成人と同じ30:2を採用する背景にある生理学的根拠です。
暗記のコツとゴロ合わせ
「ヒト(1人)でやる子(児童・乳児)も、30に2」
(ヒト=単独救助者、子=小児・乳児、30に2=30:2)
「医療チーム、小児は15に2」
(医療環境で複数人いるときの小児・乳児CPRは15:2)
国試頻出ポイント
看護師国家試験では、「年齢区分(新生児、乳児、小児、成人)」「救助者の数」「圧迫-換気比」「圧迫の深さと方法」を組み合わせて出題されることが非常に多いです。問題文の最初の数語(「単独で」「チームで」「生後6ヶ月の」「3歳の」)をしっかり読み、シナリオを正確に把握することが正解への第一歩です。
国試出題パターンの変化に注意!
単純な比率の暗記だけでなく、「この状況で看護師が最初に取るべき行動は?」や、「胸骨圧迫の正しい方法として適切なのは?」(例:乳児での指2本の位置)など、実践的な手技の知識が問われるパターンも増えています。ガイドラインの背景にある「なぜそうするのか」という理由を理解しておくと、応用問題にも対応できます。