看護学のコア解説
この問題は、
統合失調症 (Schizophrenia)の症状分類、特に
陽性症状 (Positive symptoms)と
陰性症状 (Negative symptoms)の鑑別について問うています。看護師国家試験では頻出の重要な概念です。
重要概念の分析 (Key Concept)
統合失調症の症状は、大きく「陽性症状」と「陰性症状」に分類されます。
ここがポイント!
- 陽性症状 (Positive symptoms):通常は存在しない異常な体験や行動が「付加される」症状。幻覚、妄想、まとまりのない会話、緊張病性行動などが含まれます。
- 陰性症状 (Negative symptoms):通常は存在する機能や感情が「減弱・欠如する」症状。感情の平板化、意欲の低下、社会的引きこもり、思考の貧困などが含まれます。
この分類を理解することは、患者の状態を正確にアセスメントし、適切な看護ケアを計画する上で不可欠です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は④「患者は、人々が自分に対して陰謀を企てていると告げる声が聞こえると訴える」です。
ここがポイント! これは
幻聴 (Auditory hallucination)(異常な知覚体験)と
被害妄想 (Persecutory delusion)(異常な思考内容)という、二つの典型的な陽性症状を組み合わせた表現です。幻覚や妄想は、陽性症状の核心をなす所見です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 他の選択肢はすべて陰性症状を示しています。
- ①「長時間動かずに座り、質問に反応しない」:これは無動・昏迷 (Akinetic mutism)や緊張病性の無言・無動に近く、陰性症状(または緊張病)の側面です。陽性症状の「興奮・多動」とは逆の状態です。
- ②「身だしなみが悪く、だらしない外見である」:これは自己管理能力の低下 (Poor self-care)を示し、意欲低下や無関心といった陰性症状に起因します。
- ③「感情表現が乏しく、単調な声で話す」:これは感情の平板化 (Blunted affect)と単調な話し方 (Monotonous speech)であり、陰性症状の典型的な表現です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
統合失調症の症状は、陽性・陰性以外にも「認知機能障害」(記憶、注意、実行機能の低下)や「解体症状」(会話や行動のまとまりのなさ)に分類されることもあります。看護ケアにおいては、陽性症状が強い急性期には安全確保と現実検討の支援が、陰性症状が目立つ慢性期には生活技能訓練(SST: Social Skills Training)や意欲向上への働きかけが重要になります。
概念のまとめ
| 症状分類 | 特徴 | 具体例 |
|---|
| 陽性症状 (Positive Sx) | 通常ないものが付加される | 幻覚 (特に幻聴)、妄想 (被害、関係)、まとまりのない会話、興奮、緊張病性興奮 |
| 陰性症状 (Negative Sx) | 通常あるものが減弱・欠如する | 感情の平板化、意欲・気力の低下、引きこもり、会話の貧困、快感消失、自己管理低下 |
一目で比較!
| 鑑別ポイント | 陽性症状 | 陰性症状 |
|---|
| 核心 | 幻覚、妄想 | 意欲低下、感情平板化 |
| 患者の訴え | 「声が聞こえる」「狙われている」 | 「何もする気が起きない」「どうでもいい」 |
| 看護ケアの焦点 | 安全確保、現実検討の支援、興奮時の対応 | 生活リズムの確立、SST、意欲を引き出す関わり |
| 薬物療法の反応 | 比較的反応しやすい | 反応しにくく、治療の課題 |
解剖生理と薬理のポイント
統合失調症の病態には、脳内の
ドーパミン (Dopamine)神経系の過活動(特に中脳辺縁系経路)が陽性症状に関与していると考えられています。そのため、治療の第一選択となる
抗精神病薬 (Antipsychotics)は、主にドーパミンD2受容体を遮断することで陽性症状を抑制します。陰性症状や認知機能障害には、ドーパミン以外の神経伝達物質(グルタミン酸、セロトニンなど)の関与も指摘されています。
暗記のコツとゴロ合わせ
- 陽性症状:「陽気に幻想(妄想)を語る」→ 陽性、幻覚・妄想、興奮・多動。
- 陰性症状:「陰気で無気力、引きこもり」→ 陰性、無気力・無関心、引きこもり・感情平板化。
国試頻出ポイント
「陽性症状 vs 陰性症状」の鑑別は、ほぼ毎回と言っていいほど出題されます。症状の具体例が選択肢として並び、「どれが陽性(または陰性)症状か」を選ばせるパターンが最も多いです。幻聴と被害妄想の組み合わせは、陽性症状の「決定版」として覚えておきましょう。
国試出題パターンの変化に注意!
近年は、単なる症状の分類だけでなく、「陽性症状が強い患者に対する看護師の対応として適切なものは?」「陰性症状へのアプローチとして効果的なのは?」といった、
症状に応じた看護介入 (Symptom-specific nursing intervention)を問う問題が増えています。症状を分類できるだけでなく、その症状を持つ患者にどのようなケアが必要かをセットで学習することが合格のカギです。