核心解説
この問題は、
多職種連携 (Interprofessional Collaboration) における看護師の
記録 (Documentation) と
情報提供 (Information Sharing) の原則を問うています。
医療チーム内での情報共有は、患者の安全と治療の継続性を担保する基盤です。看護記録は、単なる業務の記録ではなく、
法的な証拠能力 (Legal Document) を持つ重要な医療情報です。そのため、記録の内容は
客観的 (Objective) かつ
具体的 (Specific) であることが絶対的に求められます。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 正解は
「客観的な観察事実に基づき『食事摂取量が通常の50%である』と記載する」 です。
この記述は、誰が見ても同じ解釈となる
客観的データ (Objective Data) です。具体的な数値を用いることで、患者の状態変化を経時的に評価でき、医師や管理栄養士など他職種が正確なアセスメントと具体的な介入計画(例:栄養補助食品の追加、食事形態の変更)を立案するための強力な根拠となります。これは
POS (Problem Oriented System) における SOAP 記録の「O:客観的情報」の原則に完全に合致します。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 医療現場では「観察した事実」と「観察から生じた自分の判断・推測」を明確に区別することが極めて重要です。
1.
「この状態は異常ではないか」という疑問形の記載: 記録は判断を仰ぐためのメモではなく、
事実とアセスメントを明確に伝達するツールです。異常の可能性を感じたなら、「呼吸数30回/分、SpO2 92%」という客観的事実と「呼吸困難感の増強が疑われる」というアセスメントを分けて記載すべきです。
2.
「今後の処置について確認が必要」という記載: これは単なるタスク管理であり、患者の状態を何も伝えていません。
「なぜ確認が必要なのか」という患者の状態(例:創部に発赤と熱感があるため、抗菌薬の指示確認が必要)を客観的事実と共に記述しなければ、情報提供として不十分です。
4.
「患者は元気がないように見える」という記載: これは記録者の
主観的印象です。「元気がない」の解釈は人によって異なります。これを伝えるなら、「自発的な会話がなく、視線が合わない」「ADL全般に介助を要する」といった
行動観察に基づいた客観的事実を記載します。
5.
「本人は退院を希望していない」という記載: 情報が不足しています。
「退院を希望しない理由」(例:「一人で生活できるか不安」「経済的な心配がある」)を患者の言葉をそのまま引用する形で記載することで、初めてMSW(医療ソーシャルワーカー)など他職種が具体的な支援を検討できる情報となります。
関連概念の整理 (Related Concepts)
看護記録の指針となる
SOAP形式 を復習しましょう。
| 要素 | 内容 | 記載例 |
|---|
| S (Subjective) | 患者の主観的情報(訴え、希望) | 「昨夜は痛くて眠れなかった」 |
| O (Objective) | 客観的情報(観察事実、数値) | 血圧 160/90mmHg、顔面蒼白、冷汗あり |
| A (Assessment) | アセスメント(分析・解釈) | 創痛による睡眠障害と血圧上昇が疑われる |
| P (Plan) | 計画(今後の方針) | 医師へ報告、疼痛コントロールの強化を検討 |
概念整理
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客観的情報 (Objective Data): 計測可能で、誰が見ても同じ結果になる情報(バイタルサイン、検査データ、具体的な行動観察)。
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主観的情報 (Subjective Data): 患者自身が感じていること、訴え。記録する際は、看護師の解釈を交えず、
患者の言葉を引用符で囲んでそのまま記載することが原則です。
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看護記録の目的: 情報共有(コミュニケーション)、看護の継続性の確保、法的証拠、教育・研究、業務改善(監査)。
一目で比較!
| | 良い記録の例 | 悪い記録の例 |
|---|
| 食事 | 朝食:全粥を3割摂取 | あまり食べられず |
| 睡眠 | 22時消灯、1時と3時に覚醒あり | よく眠れていない様子 |
| 疼痛 | NRS 7/10、体動時に増強 | かなり痛がっている |
| 精神状態 | 終日カーテンを閉め切っており、看護師の声かけに「放っておいて」と返答 | 元気がない |
看護過程ポイント
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アセスメント: 情報収集の段階から、客観的データと主観的データを意識的に区別して収集する。
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計画・実施: 他職種と共有すべき目標は、具体的で測定可能なものとする(例:「3日後までに自力で50%以上の食事摂取ができる」)。
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評価: 記録された客観的事実に基づき、介入の効果を評価し、計画を修正する。
暗記のコツ
「記録の3S」で覚えましょう!
Simple (簡潔に): わかりやすく、簡潔な文章で。
Specific (具体的に): 数値や固有名詞、患者の言葉をそのまま使って。
Scientific (客観的に): 事実に基づき、自分の推測や印象は区別して。
国試頻出ポイント
看護記録の原則は、
基礎看護学の必須問題として毎年のように出題されます。特に、SOAP形式の各要素に該当する記述を選ばせる問題、個人情報保護の観点から不適切な記録を選ばせる問題、そして本問のように
多職種連携における情報共有の質を問う問題が増加傾向にあります。
出題パターン注意!
本問のような単純な知識問題だけでなく、
状況設定問題として出題される可能性もあります。「術後1日目の患者の看護記録として適切なのはどれか」のように、具体的な臨床場面を想定した選択肢から、SOAPに基づいた記述や客観的事実に基づく記述を選択させる応用力が試されます。