在宅で療養中の患者に生じた褥瘡に対して、滲出液が中等量あり、壊死組織が混在している。この創部に対して訪問看護師が選択する… | MyMerci
在宅における医療管理を必要とする人と看護
問題

在宅で療養中の患者に生じた褥瘡に対して、滲出液が中等量あり、壊死組織が混在している。この創部に対して訪問看護師が選択する適切な被覆材はどれか?

解説
滲出液が中等量あり壊死組織が混在する創部には、滲出液を吸収し壊死組織の融解を促進するアルギン酸材が適している。ハイドロコロイド材は滲出液の少ない創、ポリウレタンフィルム材は滲出液のない創、ハイドロゲル材は壊死組織の自己融解を促進するが滲出液吸収力は弱い。シリコン材は創部への貼付と剥離が容易な素材である。

詳細解説

核心解説 この問題は、褥瘡 (Pressure Injury) の創傷管理と創傷被覆材 (Wound Dressing) の選択に関する実践的な知識を問うています。創部の状態(滲出液量、壊死組織の有無、感染の有無)を正確にアセスメントし、それぞれの被覆材の特性に基づいて最適なものを選択することが、効果的な治癒促進と悪化防止の鍵となります。 核心概念の分析 (Key Concept): 最重要! 創傷被覆材の選択においては、創傷治癒理論に基づいた湿潤環境療法 (Moist Wound Healing) の原則が重要です。創面が乾燥しすぎず、かつ過剰な滲出液で周囲皮膚が浸軟(ふやけ)しない、最適な湿潤環境を保つことが求められます。 正解の根拠 (Answer Rationale): 正解は アルギン酸材 (Alginate Dressing) です。
  • 高い吸収力: アルギン酸材は海藻由来の天然繊維で、自重の数倍から十数倍もの滲出液を吸収しゲル化する性質があります。そのため、中等量以上の滲出液がある創傷に適しています。
  • 壊死組織の除去促進: ゲル化した被覆材は創面を適度な湿潤状態に保ち、自己融解デブリードマン (Autolytic Debridement) を促進し、混在する壊死組織の除去を助けます。
  • 止血作用: アルギン酸材に含まれるカルシウムイオンがナトリウムイオンと交換される過程で、軽度の止血作用も期待できます。
問題文の「滲出液が中等量」で「壊死組織が混在」しているという条件に最も合致するのがアルギン酸材です。 誤答の分析 (Distractor Analysis):
  1. ポリウレタンフィルム材 (Polyurethane Film): 混同注意! フィルム材は防水性と透明性に優れていますが、吸収力がほとんどありません。滲出液のない、またはごく少量の表層的な創傷(上皮化が進む浅い褥瘡など)の保護に用います。中等量の滲出液がある場合、浸軟や感染のリスクが高まるため不適切です。
  2. シリコン材 (Silicone Dressing): シリコンは素材の特性であり、特定の創傷被覆材を指すものではありません(例:シリコン粘着性フォーム材)。シリコンは皮膚への接着が穏やかで、剥離時の痛みや皮膚損傷が少ないという利点がありますが、問題文の創部状態(滲出液・壊死組織)に対する第一選択の根拠とはなりません。
  3. ハイドロゲル材 (Hydrogel Dressing): 混同注意! ハイドロゲル材は水分を多く含み(約70-90%)、乾燥した壊死組織に水分を供給して自己融解デブリードマンを促します。しかし、滲出液の吸収力は非常に低いため、滲出液が多い創傷に使用すると浸軟や細菌増殖の原因になります。壊死組織の「混在」と「中等量の滲出液」に対応するには不向きです。
  4. ハイドロコロイド材 (Hydrocolloid Dressing): 混同注意! ハイドロコロイド材も滲出液を吸収してゲル化しますが、その吸収容量は中等度であり、過剰な滲出液には対応しきれません。主に滲出液が少量から中等量の創傷に適しており、壊死組織への自己融解促進効果もありますが、問題の条件ではアルギン酸材の方が高い吸収力と壊死組織除去能力で優れています。
関連概念の整理 (Related Concepts): 褥瘡の局所治療においては、DESIGN-R®2020などの褥瘡状態評価スケールを用いて、深達度 (Depth)滲出液 (Exudate)大きさ (Size)炎症/感染 (Inflammation/Infection)肉芽組織 (Granulation)壊死組織 (Necrotic tissue)ポケット (Pocket) を総合的に評価します。被覆材は、これらの評価項目と治癒の進行度に合わせて動的に変更する必要があります。
概念整理
被覆材の種類主な特徴適応
アルギン酸材超高吸収性、ゲル化、自己融解促進、止血作用中等量~多量の滲出液、壊死組織、感染創、ポケットあり
ハイドロコロイド材吸収性、ゲル化、自己融解促進、防水性少量~中等量の滲出液、浅い褥瘡、上皮化の促進
ハイドロゲル材水分供給、自己融解促進、冷却効果、低吸収性滲出液なし~少量、乾燥した壊死組織
ポリウレタンフィルム材透明、防水、非吸収性滲出液なし、表層的な創の保護、二次固定
フォーム材 (シリコン)吸収性、クッション性、低刺激性中等量の滲出液、疼痛を伴う創、脆弱な皮膚周囲

看護過程ポイント
  • アセスメント: 訪問看護では特に、家庭での体位、使用している体圧分散寝具、栄養状態(食事摂取量、体重変化、血液データ)が褥瘡の発生・悪化に直結します。創部の観察に加え、これらの全身状態のアセスメントが必須です。
  • 看護診断: 「皮膚統合性障害」「身体可動性障害」「栄養障害:必要量以下」などがリスク因子として挙げられます。
  • 計画: 被覆材の選択だけでなく、除圧 (Pressure Redistribution)(ポジショニング、体圧分散寝具の使用)、栄養管理 (Nutritional Support)(十分なエネルギーとタンパク質、亜鉛、ビタミンC等の摂取)、スキンケアの計画を立案します。
  • 実施: 被覆材の交換時には、剥離に伴う疼痛や新生肉芽組織の損傷に細心の注意を払います。家族が交換を行う場合は、適切な方法を指導します。

暗記のコツルギン酸は、ふれる滲出液をっという間に吸収!」「ル(ハイドロル)は、乾いた傷に水分をットさせる」など、語呂合わせで覚えると想起しやすくなります。
国試頻出ポイント 創傷被覆材の選択は、在宅看護論や成人看護学の慢性期看護、褥瘡対策の分野で頻出です。特に「滲出液量」と「壊死組織の有無」の組み合わせによる選択が、状況設定問題で問われることが多いため、今回の事例は典型パターンとして確実に理解しておきましょう。
出題パターン注意! 単に被覆材の名称と特徴を問うだけでなく、「訪問看護師としてこの患者・家族にどのような生活指導を追加すべきか」「この被覆材を選択した後、次に観察すべき優先項目は何か」といった形で、看護過程を連鎖的に問う応用問題へと発展しやすいテーマです。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario) 「80歳女性、脳梗塞後遺症で左片麻痺があり、ベッド上で過ごすことが多い。娘と二人暮らしで、訪問看護を週2回利用している。本日訪問すると、仙骨部に発赤と一部黄白色の壊死組織が混在する褥瘡があり、ガーゼには漿液性の滲出液が中等量付着していた。娘は『昨日から急に滲出液が増えた気がする』と話している。」 看護師として、この褥瘡に最適な被覆材を選択し、娘に指導すべきことは何でしょうか? 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)
  1. 観察とアセスメント: バイタルサイン測定に加え、褥瘡部を洗浄し、DESIGN-R®を用いて詳細に評価します。深さ(d2? D3?)、滲出液の性状(漿液性・膿性、におい)、周囲皮膚の状態(浸軟、発赤、硬結)、ポケットの有無を確認します。全身状態として、食事摂取量や発熱の有無も確認します。
  2. 判断と選択: 中等量の滲出液と壊死組織の混在から、アルギン酸材を選択します。創部に充填し、二次被覆材で固定します。もし感染が疑われる強い臭気や膿汁があれば、医師に報告し、抗菌作用のある銀含有アルギン酸材の使用も検討します。
  3. 家族指導: 被覆材が滲出液で飽和し、二次被覆材まで滲みてきたら交換時期のサインであることを伝えます。また、最重要! 褥瘡の予防と治癒には除圧が不可欠であるため、体位変換の方法と頻度(2時間ごとが基本だが、個別性に合わせる)、良肢位保持のためのクッションの使い方を再指導します。栄養面では、タンパク質(肉、魚、卵、大豆製品)を意識して摂取するよう具体的にアドバイスします。
  4. 評価: 次回訪問時に、滲出液量の変化、壊死組織の減少、肉芽組織の形成状態を評価し、創傷の治癒段階に応じて被覆材の変更(例:肉芽形成が進み滲出液が減少したらハイドロコロイド材へ変更)を検討します。
患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)
  • 被覆材の貼付範囲は創部より2~3cm大きくし、周囲の健康な皮膚を保護します。
  • アルギン酸材は乾燥した創面には固着しやすいため、壊死組織が除去され肉芽が盛り上がってきたら、ハイドロゲル材やハイドロコロイド材など、より刺激の少ない被覆材へ切り替えていきます。
  • 訪問看護では、医療材料の在庫管理も重要です。必要な時に被覆材が不足しないよう、計画的な供給と家族への保管方法の指導を行います。

看護プロトコル
段階ポイント
観察項目創部(DESIGN-R®)、滲出液(量・性状・臭気)、周囲皮膚、バイタルサイン、疼痛、栄養状態
報告基準 (SBAR)感染兆候(発熱、膿性滲出液、悪臭、周囲の蜂窩織炎)や急激な悪化(滲出液の急激な増加、壊死範囲の拡大、ポケット形成)を認めたら直ちに医師へ報告。
記録のポイント創部の写真やトレーシングで客観的評価を記録し、経時的な変化を追えるようにする。使用した被覆材の種類と交換時の所見を明確に記載。
家族への説明褥瘡は「治るのに時間がかかる」ことを伝え、日々の小さな変化に一喜一憂しないよう精神的に支える。家族が行うケア(体位変換、栄養サポート)が治癒を大きく左右することを強調し、励ます。

先輩看護師の一言 「訪問看護の現場では、病院と違って『これが最適!』と思っても、ご家庭に常備している材料や経済的な事情、家族の介護力によって現実的に選択できる被覆材が限られる場合もあります。知識としての『最適解』を知った上で、患者さんと家族にとっての『最善解』を一緒に考えていく柔軟性も、とても大切な看護の力ですよ。国試の勉強でしっかり基礎を固めましょう!」

重要概念

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