核心解説
この問題は、在宅療養中の患者に発生した
褥瘡 (Pressure Injury) の評価ツールである
DESIGN-R (褥瘡状態評価スケール) の構成項目に関する知識を問うています。褥瘡の重症度評価と治癒過程のモニタリングにおいて、正しい評価スケールの理解は
科学的根拠に基づくケア (Evidence-Based Practice) の基盤となります。
1. 核心概念の分析 (Key Concept)
褥瘡の評価は、
創傷治癒 (Wound Healing) の段階を客観的に評価するために不可欠です。DESIGN-Rは、褥瘡の状態を多面的に評価するための日本の代表的なスケールであり、その項目は褥瘡の病態生理を反映しています。具体的には、創の深さ、浸出液の状態、創の大きさという基本的な創傷評価項目に加え、治癒の指標である
肉芽組織 (Granulation Tissue) の形成状態、治癒を阻害する
壊死組織 (Necrotic Tissue) の有無、感染の有無を示す
炎症 (Inflammation) の徴候、そして
ポケット (Pocket / Undermining) の有無を評価します。これら7項目の頭文字をとってDESIGN-Rと命名されています。
2. 正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 正解は3番です。DESIGN-Rの7項目は、深さ (
Depth)、滲出液 (
Exudate)、大きさ (
Size)、炎症 (
Inflammation)、肉芽 (
Granulation)、壊死組織 (
Necrotic tissue)、ポケット (
Pocket) です。この組み合わせが、褥瘡の重症度(深さ、大きさ、壊死組織、ポケット)と治癒過程の活動性(滲出液、炎症、肉芽)の両方をバランスよく評価できるよう設計されています。
3. 誤答の分析 (Distractor Analysis)
各選択肢には、DESIGN-Rに
混同注意!されやすい要素が含まれています。
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疼痛 (Pain): 褥瘡の随伴症状として非常に重要ですが、DESIGN-Rの構造的評価項目には含まれません。疼痛は患者の主観的体験であり、別途
NRS (Numerical Rating Scale) などで評価します。
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感染 (Infection): DESIGN-Rでは、「炎症」の項目の中で発赤、腫脹、熱感などとともに感染兆候の有無を総合的に評価します。そのため「感染」という独立した項目としては存在しません。壊死組織と感染の関係を正しく理解することが重要です。
4. 関連概念の整理 (Related Concepts)
褥瘡評価においては、DESIGN-Rだけでなく、リスクアセスメントツールである
ブレーデンスケール (Braden Scale) や
OHスケール、褥瘡の深度分類である
NPUAP分類 (ステージI~IV, DTI, Unstageable) との使い分けも重要です。DESIGN-Rは、既に発生した褥瘡の状態を経時的に追跡し、ケアの効果を判定するために用いられます。
概念整理
| 頭文字 | 評価項目 | 評価のポイント |
| D | 深さ (Depth) | 肉眼的な深さをスケールで評価。深部組織損傷 (DTI) の可能性も考慮する。 |
| E | 滲出液 (Exudate) | 量(少量・中等量・多量)と性状(漿液性・膿性など)を評価する。 |
| S | 大きさ (Size) | 創の長径×短径で面積を算出し、ポケットは含めない。 |
| I | 炎症 (Inflammation) | 発赤、腫脹、熱感、疼痛、感染兆候の有無を総合的に評価する。 |
| G | 肉芽 (Granulation) | 良性肉芽と不良肉芽(浮腫性・易出血性など)の割合を評価する。 |
| N | 壊死組織 (Necrotic tissue) | 黒色(硬い)・黄色(軟らかい)壊死組織の有無と割合を評価する。 |
| P | ポケット (Pocket) | 皮下に広がる間隙(Undermining)の有無と広がりを評価する。 |
一目で比較!
| 評価ツール | 目的 | 主な評価項目 |
| DESIGN-R | 褥瘡の状態評価(重症度・治癒過程) | 深さ、滲出液、大きさ、炎症、肉芽、壊死、ポケット |
| ブレーデンスケール | 褥瘡発生のリスク評価 | 知覚の認知、湿潤、活動性、可動性、栄養状態、摩擦とずれ |
| OHスケール | 褥瘡発生のリスク評価(高齢者向け) | 自力体位変換、病的骨突出、浮腫、関節拘縮 |
| NPUAP分類 | 褥瘡の深度分類 | ステージI~IV、DTI(深部組織損傷)、分類不能 |
看護過程ポイント
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アセスメント: DESIGN-Rを用いた客観的評価に加え、疼痛、臭気、周囲皮膚の状態、ドレッシング材の適合性も評価する。栄養状態(血清アルブミン値)や体圧分散寝具の適合性といった全身要因のアセスメントも不可欠。
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看護診断: 「皮膚組織完全性の障害」「感染リスク状態」「身体損傷リスク(治癒遅延)」
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計画: DESIGN-Rスコアの改善を目標とし、創の状態(滲出液、壊死組織、感染徴候)に応じた
創傷被覆材 (Wound Dressing) の選択と交換頻度を決定する。栄養サポートやポジショニング計画も立案する。
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実施: 疼痛に配慮した洗浄、壊死組織のデブリードマン(医師の指示の下)、適切なドレッシング、除圧の徹底。
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評価: DESIGN-Rの経時的な再評価。肉芽形成の増加、壊死組織や滲出液の減少は治癒の指標となる。評価に基づき計画を修正する。
暗記のコツ
「DESIGN-Rは、褥瘡のデザインを見る!」と覚えましょう。D(深さ)E(エキスエート)S(サイズ)I(炎症)G(グラニュレーション)N(ネクローシス)P(ポケット)をそのまま英単語で記憶すると、日本語訳の微妙な違い(疼痛・感染)に惑わされません。日本語で「炎症/感染」の違いを問われることがあるので注意が必要です。
国試頻出ポイント
褥瘡評価は、在宅看護論、老年看護学、基礎看護学の領域で横断的に出題されます。DESIGN-Rの項目を問う単純知識問題だけでなく、「この褥瘡のDESIGN-R評価の記述で適切なのはどれか」という状況設定問題(事例問題)として、創傷の記述を正しく分類できるかが試されます。特に「炎症と感染」「壊死組織とスラフ(黄色壊死組織)」の区別は頻出です。
出題パターン注意!
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単純暗記型: 今回の問題のように、DESIGN-Rの7項目を直接問うパターン。
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事例判断型: 褥瘡の写真や状態の説明文を提示し、「DESIGN-Rの項目『N』の評価として正しいのはどれか」など、臨床的なアセスメント能力を問うパターン。この場合、黒色化した硬い壊死組織(エスカー)と黄色い軟らかい壊死組織(スラフ)の両方がNに該当することを理解しておく必要がある。