核心解説
この問題は、
在宅中心静脈栄養法 (Home Parenteral Nutrition: HPN) 実施中に発症した
カテーテル関連血流感染症 (Catheter-Related Bloodstream Infection: CRBSI) が疑われる緊急時の看護対応を問うています。
悪寒戦慄と38.5℃の発熱は、細菌が血液中に侵入し全身に波及している
菌血症 (Bacteremia) から
敗血症 (Sepsis) への移行を示唆する
危険な徴候 (Red Flag Sign)です。
核心概念の分析 (Key Concept)
中心静脈カテーテル (CVC) は血管内に留置される異物であり、
バイオフィルム (Biofilm) を形成した細菌の温床となりやすいです。一度CRBSIを発症すると、短時間で
敗血症性ショック (Septic Shock) へ進行し、生命予後を著しく悪化させます。在宅看護において、感染徴候を早期に発見し、適切な医療機関への橋渡しを行うことは訪問看護師の最も重要な役割です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 在宅管理の限界を超える緊急事態であり、
直ちに主治医に連絡し、受診を促すことが最優先です。CRBSIの確定診断には
血液培養 (Blood Culture) 検査が必要であり、起因菌に応じた抗菌薬投与が不可欠です。これらは在宅では実施できません。訪問看護師は「観察→判断→報告→連携」の役割を担います。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①
混同注意! 輸液の変更は、感染源であるカテーテルが体内に留置されたままでは根本的な解決になりません。また、輸液内容の変更は医師の指示が必要な「医療行為」です。
② ライン交換だけでは、すでにカテーテル内や血中に侵入した菌を除去できません。むしろ、ライン操作による新たな汚染リスクもあります。
④
混同注意! 出口部感染 (Exit-site infection) のみで全身症状がない場合の局所ケアとは異なります。発熱がある時点で全身感染に進展しており、ドレッシング交換より受診が優先されます。
⑤ 解熱剤内服により一時的に症状が隠蔽 (Masking) され、病態の進行を見逃し、適切な治療開始が遅れる危険があります。
関連概念の整理 (Related Concepts)
CRBSIの診断基準として、
DTP (Differential Time to Positivity)(末梢血とカテーテル血の血液培養陽性化時間差)が重要です。カテーテル血が末梢血より2時間以上早く陽性化した場合、CRBSIと診断されます。また、在宅での「
セルフチェック表」を用いた患者教育も再発予防に有効です。
概念整理
| 項目 | CRBSI 疑い時の判断 |
|---|
| 主症状 | 悪寒戦慄 (Rigor) + 発熱 (Fever > 38.0℃) |
| 病態進行 | 菌血症 (Bacteremia) → 敗血症 (Sepsis) → 敗血症性ショック (Septic Shock) |
| 看護師の役割 | 緊急度のアセスメント (qSOFAスコア確認含む)・主治医へのSBAR報告・受診調整 |
| 禁忌事項 | 自己判断でのライン操作・投薬・経過観察のみでの在宅継続 |
一目で比較!
| 鑑別 | カテーテル関連血流感染症 (CRBSI) | 出口部感染 (Exit-site Infection) |
|---|
| 症状 | 発熱・悪寒戦慄 (全身症状) | 刺入部の発赤・腫脹・疼痛・排膿 (局所症状) |
| 緊急度 | 緊急! 即日受診が必要 | 準緊急(外来受診調整、ドレッシング強化) |
| 対応の要点 | カテーテル抜去検討、抗菌薬全身投与 | 局所消毒強化、軟膏処置 |
看護過程ポイント
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アセスメント (Assessment): 発熱・悪寒戦慄に加え、
血圧低下・頻脈・意識レベルの変化がないか
qSOFA (quick Sequential Organ Failure Assessment)スコアで評価する。
-
看護診断 (Nursing Diagnosis): 感染症に関連した体温調節の障害(リスク状態)
-
計画 (Planning): 患者・家族に受診の必要性を説明し、移動手段を確保する。
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実施 (Implementation): 主治医へ
SBAR (Situation-Background-Assessment-Recommendation)で報告。来院時には、発症時間やラインの状況を正確に伝える。
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評価 (Evaluation): 安全に医療機関へ到着したか、感染兆候が改善しているかを確認する。
暗記のコツ
「
CRBSI は『急いで病院 (C:カテーテル, R:関連, B:血流, S:即, I:医療機関へ)』」と覚えましょう。発熱+カテーテル=「即受診」が鉄則です!
国試頻出ポイント
在宅看護論や基礎看護学の感染管理分野で頻出です。「訪問看護師が行えること・行えないこと」の判別問題として出題されます。医療行為の範囲(指示の要否)を明確に区別できるようにしましょう。
出題パターン注意!
状況設定問題で、「患者が受診を拒否している」という倫理的葛藤を絡めた複合問題として出題されることもあります。その場合は、
患者の自己決定権を尊重しつつも、生命の危機を伝え、受診の必要性を丁寧に説明するコミュニケーションが求められます。