核心解説
この問題は、
在宅中心静脈栄養法 (Home Parenteral Nutrition: HPN) 管理中に発生した
カテーテル関連血流感染 (Catheter-Related Bloodstream Infection: CRBSI) が疑われる兆候への初期対応を問うています。
最重要! 在宅では医師がその場にいないため、看護師は
アセスメント (Assessment) と
報告 (Reporting) の役割が特に重要になります。発赤と浸出液という局所所見を正確に評価・記録し、医師の判断を仰ぐことが看護師の最初の対応として最も適切です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
4. 発赤の範囲を測定し、写真で記録して主治医に報告する。
客観的データ (Objective Data) を収集し、医師へ
SBAR (Situation, Background, Assessment, Recommendation) を用いて報告することは、在宅看護における
看護実践 (Nursing Practice) の基本です。発赤範囲の測定と写真記録は、感染の進行度や治療効果を経時的に評価するための重要な客観的データとなります。主治医はこの情報に基づき、抗菌薬投与、カテーテル抜去の要否、ドレッシング交換の頻度など、具体的な指示を出すことができます。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 看護師の裁量権と医師の指示が必要な医療行為の区別がポイントです。
①
混同注意! 直ちにカテーテルを抜去し、主治医に報告する。 カテーテルの抜去は
侵襲的医療行為 (Invasive Medical Procedure) であり、医師の指示が必要です。また、現段階では感染が確定しておらず、抜去以外の治療(抗菌薬ロック療法等)の可能性もあるため、看護師の単独判断での抜去は不適切です。
②
混同注意! 浸出液の細菌培養検査を依頼し、経過観察とする。 培養検査の依頼も医師の指示が必要な診療行為です。また、感染を疑う所見があるにもかかわらず経過観察とするのは、感染悪化のリスクを高め、
敗血症 (Sepsis) に至る危険性があるため不適切です。
③
混同注意! 挿入部の皮膚を消毒し、新しいドレッシング材で密閉する。 消毒やドレッシング交換は看護師が日常的に行うケアですが、感染が疑われる状況では、検体採取(培養検査)の前に処置をしてしまうと正確な原因菌の同定が困難になります。医師の指示なく消毒して閉鎖することは、診断の機会を損なう可能性があります。
⑤
混同注意! カテーテルの使用を中止し、末梢輸液に切り替える。 カテーテル使用の中止や輸液ルートの変更は、医師の治療方針の決定事項です。在宅IVH患者にとって中心静脈ルートは生命線であり、看護師が独断で中止することは許されません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
在宅IVH管理における
感染サーベイランス (Infection Surveillance) の基本は「局所所見」と「全身所見」の評価です。局所所見(発赤、腫脹、熱感、疼痛、排膿)に加え、
発熱 (Fever) や
悪寒戦慄 (Rigor)、血糖値の急激な変動といった全身性炎症反応症候群 (SIRS) の兆候の有無も同時にアセスメントする必要があります。報告の際は、これらを
SBAR で整理して伝えます。
概念整理
| 概念 | 内容 |
|---|
| カテーテル関連血流感染 (CRBSI) | カテーテル挿入部の微生物が血流に入り込み全身感染を引き起こす。発赤・腫脹・排膿などの局所症状から、発熱・悪寒などの全身症状まで幅広い。 |
| 在宅看護での看護判断 | 医師の包括的指示(プロトコル)の範囲内での対応と、新たな問題発生時の「異常の早期発見→アセスメント→正確な報告」が役割の中心となる。侵襲的処置や治療変更は医師の指示が必須。 |
一目で比較!
| 日常的なドレッシング交換 | 感染を疑う場合の対応 |
|---|
| 目的 | 感染予防、皮膚の清潔保持 | 感染の有無の評価、重症化予防 |
| 看護師の行動 | 消毒 → ドレッシング材貼付 | 評価・記録(写真・サイズ測定)→ 未処置のまま医師へ報告・指示を仰ぐ |
| 根拠 | 無菌的操作による定期的ケア | 培養検査提出前に消毒すると原因菌検出率が低下するため |
看護過程ポイント
-
アセスメント: 発赤の範囲・硬結・疼痛・熱感の有無、浸出液の性状・量・臭気、バイタルサイン(特に体温)、全身倦怠感など感染兆候の有無を包括的に評価する。
-
看護診断: 中心静脈カテーテル関連感染リスク状態 / 皮膚統合性障害のリスク状態
-
計画: 医師の指示のもと、感染管理計画(ドレッシング交換の頻度、消毒薬の種類、抜去・再挿入の判断基準)を立案する。
-
実施: 評価した客観的情報を医師に報告し、指示に従う。患者・家族へ清潔保持の方法や異常時の報告基準を指導する。
-
評価: 局所所見・全身所見の改善、患者・家族がセルフケアを適切に行えているか。
暗記のコツ
「
在宅で感染疑い!慌てず測って、撮って、報告を!」と覚えましょう。カテーテルトラブル時は、まず客観的データを揃えて医師につなぐのが看護師の腕の見せ所です。「抜く」「検査する」「点滴を止める」といった治療行為は、
「医師の指示が必要」とセットで記憶します。
国試頻出ポイント
在宅看護領域の事例問題で頻出です。特に「看護師が
単独で判断し、実施してよい行為」と「
医師の指示が必要な行為」の線引きを問われます。カテーテル抜去、培養検査の依頼、薬剤の使用・中止はすべて医師の指示が必要な「診療の補助」行為に該当することを理解しておきましょう。
出題パターン注意!
状況設定問題で、患者背景(例:高齢者で発熱に気づきにくい、家族がケアを行っている)が追加され、「家族への指導内容」や「あらかじめ取り決めておくべきプロトコル」を問われる形にも発展しやすいです。常に「在宅」という特殊な環境(医師が不在、家族がケア提供者)を意識して学習を進めましょう。