こんな問題があと439問挑戦 ›
在宅療養者の状態・状況にあわせた看護
在宅終末期にある患者の家族が、「夜中に何度も大きな声でうなされて、見ているのが辛い」と訪問看護師に相談した。患者は末期がんであり、現在はオピオイドと抗コリン薬を定期服用している。この症状の原因として最も考えられるのはどれか。
-
1
不穏状態
-
2
終末期にみられる喘鳴(death rattle)
-
3
脳転移によるけいれん発作
-
4
オピオイドの副作用によるせん妄
✓ 正解
-
5
低血糖発作
解説
終末期患者に夜間のうなり声や不穏がみられる場合、オピオイドや抗コリン薬の副作用によるせん妄(特に夜間せん妄)が最も考えられる。喘鳴(death rattle)は呼吸音であり、うなり声ではない。脳転移によるけいれんは全身性の症状を伴うことが多い。
同じテーマの次の問題在宅で終末期を過ごすがん患者の訪問看護において、患者から「痛みが強くなってきた」と訴えがあった。経口のモルヒネ硫酸塩水和物(徐放錠)を1日2回服用している。痛みの評価と対応として最…この問題が収録された問題集在宅看護論、地域・在宅看護論KRW 12,900
核心解説
この問題は、終末期看護 (End-of-Life Care) における症状マネジメント (Symptom Management) と薬物有害反応 (Adverse Drug Reaction) のアセスメントを問うています。特に、終末期に頻用される薬剤の副作用が、患者の新たな苦痛の原因になりうることを理解する必要があります。
1. 核心概念の分析 (Key Concept)
患者は末期がんでオピオイド (Opioid) と抗コリン薬 (Anticholinergic Agent) を定期服用しています。夜間に大声でうなされるという症状は、意識レベルの変動 と不穏行動 を示唆しています。これらの薬剤は、終末期の疼痛や呼吸器症状緩和に不可欠ですが、高次機能を司る中枢神経系に影響を与え、せん妄 (Delirium) を誘発する主要なリスク因子となります。
2. 正解の根拠 (Answer Rationale)
選択肢4: オピオイドの副作用によるせん妄
最重要! オピオイドは大脳皮質や辺縁系に作用し、抗コリン薬はアセチルコリンによる神経伝達を阻害することで、どちらも薬剤性せん妄 (Drug-Induced Delirium) を引き起こします。特に、日中の傾眠と夜間の不穏・興奮(夜間せん妄)の日内変動は、せん妄の特徴的な症候です。大声でのうなり声は、内的な不安や幻覚・錯覚に対する反応である可能性が高く、本症例に最も合致します。
3. 誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意!
- 選択肢1「不穏状態」は症状名であり、原因の特定には至っていません。問題は「原因として最も考えられるもの」を問うているため、より具体的な原因を特定する必要があります。
- 選択肢2「終末期にみられる喘鳴 (death rattle)」は、気道内分泌物が貯留し、吸気・呼気時に「ゴロゴロ」という呼吸音が生じる状態です。うなり声とは明確に異なる身体所見です。
- 選択肢3「脳転移によるけいれん発作」は、けいれん (Convulsion) のような全身性の不随意運動や意識消失を伴うことが一般的であり、単なる大声でのうなり声とは病態が異なります。
- 選択肢5「低血糖発作」は、冷や汗、動悸、意識レベルの低下などを伴いますが、オピオイド服用患者に特異的な症状ではなく、また大声を出すなどの興奮様症状は典型的ではありません。
4. 関連概念の整理 (Related Concepts)
混同注意! 終末期の不穏は、身体的苦痛(尿閉、便秘、疼痛)や精神的苦痛(死への不安)が原因となることもあります。これらをアセスメントした上で、薬剤性せん妄の可能性を評価します。せん妄の評価スケール(CAM: Confusion Assessment Method)を用いた客観的なアセスメントも重要です。
概念整理
| 概念 | 説明 |
|---|
| オピオイド誘発性せん妄 | オピオイドの神経毒性による意識障害。幻覚、錯覚、興奮、日内変動が特徴。 |
| 抗コリン薬の副作用 | 中枢性抗コリン作用により、記銘力低下、見当識障害、幻覚、興奮などを惹起。 |
| Death Rattle | 終末期の下顎呼吸に伴い、貯留した分泌物が振動して生じる呼吸音。苦痛とは限らない。 |
一目で比較!
| 項目 | せん妄 (Delirium) | 認知症 (Dementia) |
|---|
| 発症 | 急性(時間~日単位) | 慢性(月~年単位) |
| 意識 | 変動あり(混濁) | 清明(末期まで保たれる) |
| 注意・集中力 | 著しく障害 | 比較的保たれる |
| 症状の変動 | 顕著な日内変動(夜間悪化) | 比較的一定 |
看護過程ポイント
アセスメント: せん妄の直接因子(薬剤、感染、電解質異常)と準備因子(高齢、認知症既往)を評価。CAMを用いたアセスメントと、医師への報告(SBAR: いつもと違う夜間の大声、オピオイド使用中であること)が不可欠。
看護診断: 「薬剤性せん妄に関連した急性混乱」「環境の変化と疾患の終末期経過に関連した不安」
看護介入: 安全確保(ベッド柵、転倒予防)、不穏時の非薬物的介入(家族の付き添い、安心できる声かけ、環境調整)、原因薬剤の評価と医師への疑義照会(減量・変更の提案)。
暗記のコツ
暗記ポイント! 「夜間のうなり声+オピオイド服用=薬剤性せん妄を疑え!」と覚えましょう。終末期の意識変動は、薬剤の影響を真っ先に疑うのが鉄則です。「Death Rattle」は呼吸音の異常であり、声とは区別します。
国試頻出ポイント
終末期患者のせん妄マネジメントは、国試の状況設定問題で頻出 です。特に、オピオイドやステロイド、抗コリン薬といった頻用薬の副作用アセスメント、および家族への病状説明とケア参加支援の視点が問われます。
出題パターン注意!
単純な原因選択問題から、「この患者への看護師の対応で優先されるのはどれか」「家族への説明で適切なのはどれか」という看護介入やコミュニケーションの応用問題へと発展します。せん妄発生時の環境調整、安全確保、家族ケアの優先順位をセットで押さえておきましょう。
臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
「85歳、男性。肺がん末期で在宅療養中。疼痛コントロールのためオキシコドン内服と、気道分泌抑制のためスコポラミン貼付剤を使用している。3日前から昼夜逆転傾向あり。本日未明、突然『そこに誰かいる!出て行け!』と大声で叫び、ベッド上で起き上がろうとした。奥様が訪問看護師に緊急連絡。バイタルサインに著変はないが、呂律が回らず、何かを怖がっている様子。この状況で看護師は何を考え、どう動くべきか?」
看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)
観察 → アセスメント → 報告 → 介入 → 評価- 1安全確保と観察まず転倒・転落予防のため、ベッドを最下段にし、周囲の危険物を除去する。バイタルサイン、SpO2、意識レベル(GCS)、瞳孔所見を観察。痛みの有無、尿閉・便秘の有無を確認する。これは 身体的原因の除外 のためです。
- 2アセスメント最重要! 急性発症の意識変動と幻覚であり、使用薬剤(オピオイド、抗コリン薬)の副作用が第一に疑われる。身体所見から低血糖や脳転移による急性増悪の可能性も評価する。
- 3報告 (SBAR)「S(状況): 在宅療養中のAさんが未明に大声で叫び、不穏状態です。B(背景): 肺がん終末期で、オキシコドンとスコポラミンを使用中。3日前から昼夜逆転傾向。O(観察): 意識レベルはGCS E3V4M6、幻覚・興奮あり。バイタルサインは安定。A(アセスメント): 薬剤性せん妄の疑いが強いです。R(提案): オピオイドの減量または変更、非薬物的介入の指示をお願いします。」
- 4介入と評価医師の指示のもと、オピオイドの減量や種類の変更(スイッチング)を検討。興奮に対しては非薬物的介入(家族の声かけ、薄暗い照明を避ける、本人が安心する物を置く)を徹底し、最終手段として向精神薬の使用を検討する。介入後は、せん妄症状の改善と有害事象(過鎮静、転倒)の有無を評価する。
看護プロトコル
観察項目: 意識レベル(GCS, RASS)、CAMスコア、バイタルサイン、痛みの有無(PAINAD)、排泄状況(尿閉・便秘)、内服薬の遵守状況と副作用の兆候。記録のポイント: 発症時間、具体的な言動と状況、バイタルサイン、実施したケアと患者の反応、医師への報告内容と指示をSOAP形式で明確に記録する。家族への説明: 「お薬の影響で、一時的に意識が混乱している可能性が高いです。決してお父さんがおかしくなったわけではなく、治療の副作用の一つです。安全に見守りながら、医師と薬の調整をしてみましょう」と、家族の不安と自責感を軽減する言葉がけが重要です。
先輩看護師の一言
「在宅での急な症状の変化は、ご家族にとって本当に大きな不安です。『いつもと違う』に最初に気づき、電話をくれたご家族の頑張りを認め、労うことが、ケアの第一歩です。薬剤性せん妄は、原因を取り除けば改善する可能性が高い病態です。薬に詳しくなり、『この症状、もしかして薬のせい?』と常にアセスメントする視点を国試の勉強から養ってくださいね。」
- せん妄 — 身体的要因(薬剤、感染など)により急性に発症する意識障害。注意・記憶・見当識の障害や幻覚、興奮を伴い、日内変動が特徴。
- オピオイド — 中枢神経系のオピオイド受容体に作用し、強力な鎮痛効果を示す薬剤群。モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルなど。副作用に便秘、悪心、せん妄、呼吸抑制がある。
- 抗コリン薬 (Anticholinergic Agent) — 神経伝達物質アセチルコリンの作用を阻害する薬剤。気道分泌抑制、消化管鎮痙などに用いる。中枢性副作用として、記憶障害、せん妄、幻覚を起こしうる。
- 終末期喘鳴 (Death Rattle) — 終末期に自力で喀痰排出が困難となり、気道内分泌物が貯留して吸気・呼気時に生じる「ゴロゴロ」という呼吸音。一般的に患者本人の苦痛は少ないとされる。
- 症状マネジメント (Symptom Management) — 疾患の治癒が困難な患者に対し、身体的・精神的・社会的苦痛を包括的に評価・緩和し、QOL(生活の質)を維持・向上させるためのケア。
MyMerciで看護師国家試験を完全対策
過去問と詳しい解説を無料で。弱点を分析し、進捗を管理してより効率的に学習しましょう。
無料で始める
学習参考用です。実際の臨床は最新のガイドラインと所属機関のプロトコルに従ってください。