核心解説
この問題は
在宅療養者の環境アセスメントと転倒予防 (Fall Prevention) に関する問題です。
訪問看護 (Home Health Nursing) の場面では、病院とは異なり、住み慣れた家の中にこそ多くの
転倒リスク (Fall Risk) が潜んでいます。選択肢の中から、他の選択肢のように
転倒を予防する対策 ではなく、
最も危険な「未対策」の環境 を見抜くことがポイントです。
1. 核心概念の分析 (Key Concept)
脳梗塞 (Cerebral Infarction) 後の片麻痺や筋力低下がある高齢者にとって、
玄関の段差 は最も危険な障害物の一つです。段差を越える動作には、下肢を高く上げるバランス能力と筋力が必要であり、これらが低下している療養者にとっては、つまずきによる転倒リスクが極めて高くなります。
最重要! 訪問看護師は、家屋の環境を評価する際、段差の解消が最優先課題であることを理解しなければなりません。
2. 正解の根拠 (Answer Rationale)
選択肢2は、
混同注意! 一見すると「段差がある」という静的な事実に過ぎないように見えますが、
「スロープが設置されていない」という
未対策状態 である点が決定的なリスクです。段差は、住宅改修の必要性をアセスメントする上で最優先される危険因子であり、スロープや手すりの設置が推奨されます。
3. 誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 選択肢3(居間のカーペット)は非常に紛らわしい選択肢です。カーペットは、めくれやへたりがあればつまずきの原因となるため、テープで固定するなどの対策が必要です。しかし、問題文には「めくれている」とは書かれておらず、適切に設置されていればクッション性があり、転倒時の
外傷予防 (Injury Prevention) にもつながります。つまり、カーペットの存在そのものが「最もリスクが高い」とは断定できません。
4. 関連概念の整理 (Related Concepts)
在宅における転倒リスクアセスメントツールとしては、
転倒リスクアセスメントスコアシート (Fall Risk Assessment Score Sheet) などがあり、内的要因(年齢、既往歴、筋力、視力など)と外的要因(家屋環境)を総合的に評価します。訪問看護では、環境面から危険を予測する
危険予知トレーニング (KYT: Kiken Yochi Training) の視点が重要です。
概念整理
| 要素 | 転倒予防のポイント |
| 手すり・スロープ | 段差や移動経路に設置し、バランスを補助する。未設置は即リスク。 |
| カーペット | めくれやへたりは危険だが、固定され平坦であれば緩衝材として有用。 |
| 照明 | 足元灯は夜間頻尿による転倒を防ぐ必須の対策。 |
| 滑り止め | 浴室や脱衣所の水濡れによるスリップを防止する。 |
一目で比較!
| 選択肢 | アセスメント |
| 1. 廊下の手すり | 安全対策実施済み (転倒リスク低) |
| 2. 玄関の段差 | 未対策の危険因子 (転倒リスク高) |
| 3. 居間のカーペット | 条件次第 (固定されていれば安全) |
| 4. 足元灯 | 安全対策実施済み (転倒リスク低) |
| 5. 浴室マット | 安全対策実施済み (転倒リスク低) |
看護過程ポイント
アセスメント (Assessment): 下肢筋力、バランス能力、視力、内服薬(睡眠薬・降圧薬など)の副作用、排泄パターン、家屋の段差・照度・置物の状況を評価する。
看護診断 (Nursing Diagnosis): 「移動能力の障害に関連した転倒リスク」などが挙げられる。
介入 (Intervention): 住宅改修(手すり設置、段差解消)、福祉用具導入、整理整頓の指導、履物の選定を行う。
暗記のコツ
「転倒リスクは『未対策』を探せ!」 国家試験では、一見普通に見える「段差」や「敷居」が、対策がされていないがゆえに正解になるパターンが頻出です。安全対策が「すでにされている」選択肢は、緊急性が低いため誤答になります。
国試頻出ポイント
第104回から最新回まで、在宅看護論の実地問題として毎年のように出題されています。特に
「最もリスクが高い」「優先して指導すべき」 という問い方で、リスクの優先順位付けが問われます。
出題パターン注意!
事例問題として、脳卒中や大腿骨頸部骨折の既往がある患者が「退院直後」の設定で出題されることが多いです。「退院直後」はまだ自宅環境に身体が適応しておらず、特にリスクが高い時期である点を押さえましょう。