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在宅療養者の状態・状況にあわせた看護
在宅で療養する廃用症候群の85歳女性。訪問看護師が、ベッド上での筋力維持を目的としたリハビリテーションを指導することになった。最も適切な運動はどれか。
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1
立位でのスクワット運動
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2
階段の昇降練習
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3
ベッド上での足関節の底背屈運動
✓ 正解
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4
歩行器を使用した歩行練習
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5
腹臥位での背伸び運動
解説
廃用症候群の高齢者でベッド上での生活が主体の場合、安全に実施できる運動として、ベッド上での足関節の底背屈運動(アキレス腱伸ばし)が適切である。これは下肢の筋力維持と深部静脈血栓症の予防にも効果的である。腹臥位や立位、歩行練習は、この患者の現在の身体機能では転倒リスクが高く、適切ではない。
同じテーマの次の問題脳梗塞の既往がある75歳の男性が、自宅で訪問リハビリテーションを開始することになった。訪問看護師が初回訪問時に最も優先して評価すべき項目はどれか。この問題が収録された問題集在宅看護論、地域・在宅看護論KRW 12,900
核心解説
この問題は 廃用症候群 (Disuse Syndrome) の高齢患者に対する 訪問看護 (Home-Visit Nursing) での安全な運動指導を問うています。安静臥床 (Bed Rest) による筋力低下・関節拘縮の進行度を見極め、最重要! 患者の現在の活動レベルに応じた「安全かつ効果的な運動」を選択することが鍵です。
核心概念の分析 (Key Concept): 問題文の「在宅療養」「廃用症候群」「85歳」「ベッド上での筋力維持」というキーワードから、この患者の 活動耐性 (Activity Tolerance) は著しく低下しており、離床が困難な状態であるとアセスメントします。廃用症候群の進行度に応じた段階的なリハビリテーションの原則(ROM訓練→筋力増強訓練→起立・歩行訓練)を理解しているかが試されています。
正解の根拠 (Answer Rationale): 最重要! ベッド上での生活が主体の患者にとって、足関節底背屈運動 (Ankle Pumps) は、重力に抗さずに実施できる最も安全な下肢筋力維持訓練です。これは廃用症候群の予防段階で最初に導入される運動であり、下腿三頭筋のポンプ作用を促進し 深部静脈血栓症 (Deep Vein Thrombosis: DVT) の予防にも直結するため、非常に理にかなった看護介入です。
誤答の分析 (Distractor Analysis): 混同注意! スクワットや階段昇降、歩行練習は、いずれも抗重力位(立位)での運動であり、現在ベッド上での筋力維持が必要な段階の患者には 転倒リスク (Fall Risk) が非常に高く禁忌です。腹臥位での背伸び運動は、体位変換に介助が必要な場合が多く、85歳の廃用症候群患者では呼吸状態の悪化や関節痛を誘発する危険性があります。
関連概念の整理 (Related Concepts): 廃用症候群の進行は「不動→筋萎縮→関節拘縮→起立性低血圧」という悪循環を辿ります。看護師は、廃用症候群の進行段階 をアセスメントし、関節可動域訓練 (ROM Exercise) から筋力増強訓練、そして基本動作訓練へと段階的に安全に移行する計画を立案しなければなりません。
概念整理
| 運動の種類 | 目的 | 適用段階 | リスク |
|---|
| 関節可動域訓練 (ROM) | 関節拘縮予防 | 廃用症候群予防期〜急性期 | 極めて低い |
| 等尺性運動 (筋収縮運動) | 筋力維持・DVT予防 | 安静臥床期 | 低い(血圧上昇に注意) |
| 足関節底背屈運動 | 下腿筋力維持・静脈還流促進 | 安静臥床期(ベッド上) | 極めて低い |
| 抗重力運動(立位・歩行) | 全身持久力・バランス向上 | 離床期・回復期 | 高い(転倒・骨折) |
一目で比較!
| 比較項目 | 廃用症候群 (Disuse Syndrome) | サルコペニア (Sarcopenia) | フレイル (Frailty) |
|---|
| 主原因 | 不動・安静による二次的機能低下 | 加齢による原発性の筋量・筋力低下 | 加齢に伴う多面的な予備能低下 |
| 進行 | 比較的急速に進行 | 緩徐に進行 | 可逆性がある(健常⇔フレイル⇔要介護) |
| 介入の焦点 | 早期離床・段階的運動負荷 | レジスタンス運動+栄養介入 | 運動・栄養・社会参加の包括的介入 |
看護過程ポイント
アセスメント (Assessment): 現在のADL、ベッド上での移動能力、関節可動域、筋力(MMT)、バイタルサイン、運動への意欲、疼痛の有無を評価します。看護診断 (Nursing Diagnosis): 「身体可動性障害 (Impaired Physical Mobility)」「活動耐性低下 (Activity Intolerance)」が主たる看護診断です。計画 (Planning): 患者・家族と目標を共有し、「1週間後、ベッド上で両足関節の底背屈運動を1日3回、痛みなく実施できる」といった具体的で達成可能な短期目標を設定します。実施 (Implementation): 運動はデモンストレーションを行い、できたことを称賛し、自己効力感を高めます。実施前後のバイタルサイン確認と、疼痛増強 時の即時中止を指導します。評価 (Evaluation): 下肢の浮腫軽減、関節可動域の維持、患者の「できた」という発言など、客観的・主観的データで評価します。
暗記のコツ
「寝たきりからの第一歩は、足首パタパタ、つま先トントン」と覚えましょう。足関節底背屈運動は、重力に逆らわず、循環を促進する、まさに「ベッド上の歩行」とも言える基本運動です。
国試頻出ポイント
廃用症候群とその予防は、老年看護学、成人看護学(長期臥床患者)で頻出です。「安静臥床時の合併症(褥瘡、DVT、肺炎、便秘、起立性低血圧)と予防ケア」をセットで問う問題が典型です。今回は「予防ケア」の中から「運動」に焦点を当てた応用問題でした。高齢者の転倒リスクを常に念頭に置いた選択が求められます。
出題パターン注意!
状況設定問題で「長期臥床後の初回離床時の看護」が出題される場合、本問の知識が応用されます。離床前に必ず 起立性低血圧 (Orthostatic Hypotension) の有無を評価する手順と、段階的なギャッジアップの重要性を押さえておきましょう。
臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario): 85歳女性、廃用症候群にて在宅療養中。訪問時、患者は「最近、ふくらはぎが張る感じがする」と訴えています。両下腿に軽度の圧痕性浮腫を認め、ホーマンズ徴候 (Homan’s Sign) は陰性。下肢の皮膚温に左右差はありませんが、ベッド上での活動はほぼ見られません。訪問看護師として、浮腫の軽減と筋力維持のためにどのような運動を提案しますか。看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment): 最重要! まず、下腿の腫脹や疼痛が 深部静脈血栓症 (DVT) の初期徴候でないかを厳密にアセスメントします。DVTが否定されたら、足関節底背屈運動 を指導します。具体的には、「つま先をすねの方にゆっくり引きつけ、次に足の甲を伸ばす運動を5〜10回、1日数回行いましょう」と、患者が理解しやすい言葉で伝えます。同時に、下肢挙上の体位も指導します。患者が一人で実施できない場合は、家族や訪問介護員に実施方法を指導し、ケアの継続性を確保します。患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions): 運動中に 呼吸困難や胸痛 が出現した場合は肺塞栓症 (Pulmonary Embolism) のリスクがあるため、直ちに運動を中止し救急要請するよう指導します。また、骨粗鬆症の合併も考え、関節可動域訓練の際は愛護的に行い、疼痛 を訴えたら決して無理に動かさないことを徹底します。
看護プロトコル
観察項目: 下肢の皮膚色、浮腫の程度、皮膚温、疼痛の有無、足背動脈の拍動、運動実施前後のバイタルサインと自覚症状。報告基準(SBAR): Situation(DVT疑いの症状出現)、Background(廃用症候群で長期臥床中)、Assessment(下肢の腫脹・疼痛増強、皮膚色変化)、Recommendation(至急の診察依頼)。記録: 運動指導内容、患者・家族の理解度と実施状況、運動後の反応(自覚症状・他覚所見)をSOAP形式で具体的に記載します。
先輩看護師の一言
「廃用症候群の方への運動は、0から1を生み出す大切なケアです。患者さんのわずかな変化も見逃さず、『すごいですね、昨日よりつま先がよく上がっていますね』とポジティブなフィードバックを返すことで、リハビリへの意欲を支えていきましょう。DVTの早期発見という、安全を見守る目も忘れずに!」
- 廃用症候群 — 安静や活動制限による不動が原因で、筋萎縮、関節拘縮、起立性低血圧、褥瘡など全身に生じる二次的な機能低下の総称 (Disuse Syndrome)
- 足関節底背屈運動 — 足首を交互に反らせたり伸ばしたりする運動。下腿三頭筋を収縮・弛緩させ、静脈還流を促進し、深部静脈血栓症(DVT)を予防する (Ankle Pumps)
- 深部静脈血栓症 — 主に下肢の深部静脈に血栓が生じる疾患。不動が原因となり、血栓が遊離すると肺塞栓症を引き起こし致命的となる (Deep Vein Thrombosis: DVT)
- ホーマンズ徴候 — 足関節を背屈させた際にふくらはぎに疼痛が生じる現象。DVTを示唆する身体所見だが、感度・特異度は高くない (Homan’s Sign)
- 関節可動域訓練 — 関節の動く範囲を維持・拡大するための訓練。他動的、自動的、抵抗運動などがあり、廃用症候群予防の基本となる (Range of Motion Exercise: ROM)
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