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在宅療養者の状態・状況にあわせた看護
問題

75歳の女性。慢性閉塞性肺疾患(COPD)で在宅酸素療法(HOT)を導入している。訪問看護師が訪問した際、療養者から「最近、少し動いただけで息切れがひどくなり、家事がほとんどできなくなった」と訴えがあった。疾病の再発予防と日常生活活動(ADL)維持のために、訪問看護師が最初に行うべき評価はどれか。

解説
COPDの増悪が疑われる状況で、ADL低下の原因が呼吸状態の悪化によるものかどうかを評価することが最優先である。パルスオキシメータでSpO2を測定し、低酸素血症の有無を確認することで、増悪の程度を判断し、緊急対応の必要性を評価できる。その後、酸素流量の調整や医療機関への連絡を検討する。
同じテーマの次の問題在宅で療養中の80歳女性、脳梗塞後遺症で左片麻痺があり、妻が主介護者である。訪問看護師が日常生活活動の低下予防を目的に評価する項目として最も優先度が高いのはどれか。

詳細解説

核心解説 この問題は、慢性閉塞性肺疾患 (Chronic Obstructive Pulmonary Disease, COPD) の在宅療養者に対する訪問看護 (Home-Visit Nursing) のアセスメント優先順位を問うています。ADL(日常生活動作)の低下という訴えの背景に、COPDの急性増悪 (Acute Exacerbation of COPD, AECOPD) による低酸素血症 (Hypoxemia) が潜んでいる可能性を疑うことが最重要です。

核心概念の分析 (Key Concept): 「息切れによるADL低下」の訴えに対して、単なる老化や体力低下と決めつけず、病態の悪化をまず客観的に評価する必要があります。看護師は、観察(O)→アセスメント(A)→計画(P)→実施(I)→評価(E)の看護過程 (Nursing Process) に基づき、最初に客観的データ(O)を収集しなければなりません。

正解の根拠 (Answer Rationale): 最重要! 訪問看護師が最初に行うべき評価は、パルスオキシメータによるSpO2の測定です。COPD増悪の最も直接的な客観的指標は動脈血酸素飽和度 (SpO2) の低下であり、緊急度の判断(例:SpO2 88%以下)や、医師への報告、酸素流量変更の必要性を決定する根拠となります。バイタルサイン (Vital Signs) の中でも呼吸状態の評価が最優先されるべき状況です。

誤答の分析 (Distractor Analysis):
1. 混同注意! 在宅酸素療法(HOT)機器の点検も重要ですが、ADL低下の直接的原因が機器の故障なのか、病態自体の悪化なのかを評価することが先決です。機器に問題がなくても病態は悪化します。
2. 混同注意! 食事摂取量の評価は栄養状態の把握に重要ですが、急性増悪が疑われる状況での緊急評価としては後回しになります。
3. 混同注意! ADL尺度の活用は長期的な支援計画には必須ですが、「なぜADLが低下したのか」という原因検索が先です。呼吸状態が改善すればADLも改善する可能性があります。
4. 混同注意! 服薬状況の確認は治療効果や副作用を評価するために重要ですが、今まさに起きている息切れとADL低下の直接的な原因評価には、呼吸状態の客観的数値が優先されます。

関連概念の整理 (Related Concepts):
COPD増悪の兆候 (Sentinel Signs):息切れの増強、痰の量・性状の変化、喘鳴の増加、SpO2低下、発熱、傾眠傾向。
訪問看護での急変時対応フロー:1. バイタルサイン測定(特に呼吸状態)→ 2. 主治医/連携医療機関へのSBAR報告(状況・背景・評価・提案)→ 3. 指示に基づく対応(酸素流量調整、受診調整など)。

概念整理:
COPD増悪の病態連鎖: 感染/大気汚染 → 気道炎症悪化 → 気流閉塞進行/ガス交換障害 → 低酸素血症 (Hypoxemia) / 高二酸化炭素血症 (Hypercapnia) → 労作時呼吸困難 (Dyspnea on Exertion) 増強 → ADL低下
訪問看護アセスメントの優先順位: ABCDアプローチ(A:気道, B:呼吸, C:循環, D:意識)に基づき、B (呼吸) の客観的評価が最優先。

一目で比較!:
評価項目目的緊急度本問での優先度
SpO2測定低酸素血症の有無と程度を即時評価最優先
HOT機器点検酸素供給システムの安全性と機能確認SpO2評価後
食事摂取量評価栄養状態・サルコペニアリスク把握状態安定後
ADL尺度評価生活機能障害の程度とケア必要量の判定状態安定後
服薬状況確認アドヒアランス・副作用・効果判定呼吸評価後

看護過程ポイント:
アセスメント: 主観的情報(息切れ、ADL低下)と客観的情報(SpO2、呼吸音、呼吸数、脈拍、意識レベル)を統合し、COPD急性増悪のリスクを判断。
看護診断: 「ガス交換障害 (Impaired Gas Exchange)」「活動耐性低下 (Activity Intolerance)」が優先される看護診断となる。
実施: SpO2値に応じて酸素流量の調整(指示範囲内)、呼吸リハビリテーション(口すぼめ呼吸の指導)、受診勧奨。
評価: 介入後のSpO2変化、息切れ感の軽減(修正Borgスケールなどで評価)、ADLの改善度を追跡する。

暗記のコツ:
「息切れ増えたら、まずはサチュレーション!」(SPO2 = **サ**チュレーション、**チュ**ーと測る)。
COPD増悪のアセスメントは「パン(パルスオキシメータ)く(薬)え(栄養)よ(ADL)」よりも「パン(パルスオキシメータ)」が先!

国試頻出ポイント:
在宅酸素療法中のCOPD患者の訪問看護アセスメントは、第110回・第111回・第112回と連続出題されている超頻出テーマです。状況設定問題(事例問題)として、主観的訴えから「看護師の最初の対応はどれか」を問う形式が典型です。ABCDの優先順位を常に意識しましょう。

出題パターン注意!:
状況設定問題で、息切れ増強に加えて「発熱」「膿性痰」の情報が追加された場合、COPD急性増悪(感染誘発)と判断し、受診調整が最初の対応となります。単なるSpO2測定だけでなく、より能動的な判断が求められる応用問題も対策しておきましょう。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario):
75歳女性、COPD(GOLD分類:中等症~重症)にてHOT導入中。訪問時、本人は椅子に座り込んで「洗濯物を干そうとしたら息が上がってしまって…ここ数日、横になるのも楽じゃないの」と話す。顔色はやや蒼白で、口すぼめ呼吸をしているが、会話は連続して可能。

看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment):
1. 観察 (Observation): まず、パルスオキシメータでSpO2を測定しながら、同時に呼吸数(1分間)、呼吸パターン(浅呼吸か、陥没呼吸の有無)、脈拍意識レベルを迅速に確認します。聴診器で呼吸音(喘鳴、副雑音)の左右差や減弱も評価します。
2. アセスメント (Assessment): SpO2が安静時でも90%未満(特に88%以下)、呼吸数が24回/分以上、脈拍が100回/分以上の場合は、急性増悪の可能性が高いと判断します。本人の苦痛の程度を「修正Borgスケール(0~10)」で評価することも有効です(例:「全く息苦しくないのが0、今まで経験した最大の息苦しさを10としたら、今はいくつですか?」)。
3. 報告 (Report): SBARを用いて主治医や連携医療機関に報告します。
- S (Situation): 「COPDでHOT導入中の〇〇様が、3日前から労作時呼吸困難が増強し、現在安静時SpO2が88%に低下しています。」
- B (Background): 「GOLD分類中等症、在宅酸素は安静時1L/分経鼻カニュラで通常SpO2は94%前後でした。」
- A (Assessment): 「急性増悪が疑われ、感染の徴候(発熱、膿性痰)は現時点で確認できていませんが、呼吸不全進行のリスクがあると考えます。」
- R (Recommendation): 「酸素流量の一時的な増量許可、または本日の受診調整が必要と思われます。指示をお願いします。」
4. 介入 (Intervention): 医師の指示範囲内で酸素流量を調整(例:安静時SpO2 90-94%を目標に増量)。口すぼめ呼吸を促し、安楽な体位(起坐呼吸が楽な場合は背上げ座位)を確保します。不安が強いため、タッチングや穏やかな声かけで精神的サポートを行います。
5. 評価 (Evaluation): 介入後15分程度で再度SpO2と自覚症状を評価し、改善の有無を確認。必要に応じて家族にも状況を説明し、受診への準備を支援します。

患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions):
COPD患者では、高流量酸素投与により高二酸化炭素血症が悪化するリスク(CO2ナルコーシス)があるため、SpO2の急激な上昇(100%近く)を目指さないことが安全です。目標はSpO2 88-92%(低酸素血症ドライブが疑われる場合)または90-94%程度です。

看護プロトコル:
観察項目: SpO2、呼吸数、呼吸様式、脈拍、血圧、体温、意識レベル(JCS/GCS)、痰の性状・量、会話の連続性、チアノーゼの有無、HOT機器の作動状況、酸素流量と指示の一致。
記録ポイント: SOAP形式で、主観的情報(息切れの程度、増悪時期)、客観的情報(SpO2値、バイタルサイン)、アセスメント(増悪リスク評価)、計画(医師指示内容、次回訪問時の観察焦点)を明確に記載。特に、SpO2は酸素流量とセットで記録する(「安静時SpO2 92% (O2 1L/分)」)。

先輩看護師の一言:
「在宅では、病院のようにすぐに医師が駆けつけてくれるわけではありません。だからこそ、看護師の客観的評価能力と臨床判断力が患者さんの命を守る最後の砦になります。『なんとなくしんどい』という訴えを決して聞き流さず、パルスオキシメータの数値というエビデンスを武器に、チーム医療につなげるのが私たちの役割です!」

重要概念

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