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在宅療養者の状態・状況にあわせた看護
問題

在宅で療養中の80歳の男性。脳梗塞の既往があり、左片麻痺がある。訪問看護師が評価したところ、日常生活活動(ADL)は低下傾向にあり、特に移動能力の低下が顕著である。疾病の再発予防とADL低下予防のために、訪問看護師が優先して行うべき対応はどれか。

解説
移動能力の低下が顕著な場合、残存機能を最大限に活用し、可能な限り自立した歩行を維持・獲得するための訓練が優先される。これはADL低下予防と廃用症候群の予防に直結する。転倒予防の環境整備(選択肢3)も重要だが、移動能力の改善を図る訓練が優先度が高い。関節可動域訓練(選択肢2)は廃用予防として併用すべきだが、歩行訓練が優先される。
同じテーマの次の問題在宅で療養中の80歳女性、脳梗塞後遺症で左片麻痺があり、妻が主介護者である。訪問看護師が日常生活活動の低下予防を目的に評価する項目として最も優先度が高いのはどれか。

詳細解説

核心解説 この問題は、脳梗塞後遺症 (Post-stroke Sequelae) による左片麻痺 (Left Hemiplegia) を有する高齢者の在宅療養における廃用症候群 (Disuse Syndrome) 予防とADL (Activities of Daily Living) 維持を問うています。訪問看護師は、疾病の再発予防とADL低下予防の両方の視点を持ち、残存機能を最大限に活かす看護介入 (Maximizing Residual Function) を優先する必要があります。脳卒中のリハビリテーションでは、最重要! 発症早期から機能回復訓練 (Functional Recovery Training)廃用予防 (Prevention of Disuse) を並行して行うことが原則です。 正解の根拠 (Answer Rationale) 最重要! 移動能力の低下が顕著な場合、単に動かないことによる廃用を防ぐだけでなく、残存機能を活用して「歩く」という動作を維持・再獲得することがADL低下予防に直結します。選択肢3の「残存機能を活用した歩行訓練の指導」は、麻痺側も含めた体幹機能や非麻痺側の筋力を活かし、実際の日常生活動作に近い形での介入であるため、優先度が最も高くなります。この能動的な介入が、廃用症候群 (Disuse Syndrome) の進行を防ぎ、ひいては寝たきり予防にもつながります。 誤答の分析 (Distractor Analysis) 混同注意! 各選択肢はいずれも在宅療養者にとって重要なケアですが、問題文が示す「移動能力の低下が顕著で、ADL低下傾向にある」という状況下での優先順位を誤ってはいけません。 ①関節可動域 (ROM) 訓練 は、拘縮予防のための基礎的な廃用予防策ですが、ベッド上での受動的・自動介助的な運動にとどまり、移動能力の直接的な改善には結びつきにくいです。 ②家族への介護指導と精神的支援 は在宅療養の継続に不可欠な要素ですが、患者のADL低下という目前の機能問題への直接介入が優先されます。 ④転倒予防の環境整備 は、安全を確保する上で重要ですが、「動かないことによる安全」ではなく「安全に動くための環境」という視点が重要です。まず歩行訓練という能動的介入を優先し、並行して環境整備を検討します。 ⑤栄養指導 は全身状態の維持・改善のための基盤ですが、移動能力の低下に対する直接的なアプローチではありません。 関連概念の整理 (Related Concepts) 混同注意! 廃用症候群とADL低下の悪循環を断ち切るためには、離床 (Mobilization)座位保持 (Sitting Balance)立位 (Standing)歩行 (Ambulation) という段階的な活動性向上が必須です。在宅では、訪問リハビリテーション(理学療法士・作業療法士)との連携も視野に入れ、看護師は日常生活のすべての場面を「リハビリの場」と捉えたケアを提供することが求められます。 概念整理
概念説明看護のポイント
廃用症候群 (Disuse Syndrome)過度の安静や活動性低下により、筋萎縮、関節拘縮、心肺機能低下、褥瘡、精神機能低下など、全身に二次的な機能障害が生じること。「臥床は最後の手段」。早期離床と活動拡大が最大の予防策。残存機能の評価と活用が鍵。
ADL (Activities of Daily Living)日常生活を送るための基本的な動作能力。食事、排泄、移動、更衣、入浴など。「しているADL」と「できるADL」を評価し、乖離がある場合はその原因(環境、意欲、痛みなど)を探る。
一目で比較!
介入の種類主な目的今回の優先度
基礎的廃用予防拘縮・筋萎縮の最小化他動的関節可動域訓練、ポジショニング中 (基礎として並行実施)
機能回復訓練失われた機能の再獲得・代償残存機能を活用した歩行訓練、座位バランス訓練高 (ADL低下に直結)
環境調整安全と自立の確保手すり設置、段差解消、福祉用具導入中 (安全な活動のために必須)
看護過程ポイント アセスメント (Assessment): 片麻痺の状態、筋力(MMT)、関節可動域(ROM)、バランス能力、移動能力(FIMやバーセルインデックスでの評価)、「しているADL」と「できるADL」の乖離、意欲・認知機能、住環境。 看護診断 (Nursing Diagnosis): 身体可動性障害 (Impaired Physical Mobility)活動耐性低下 (Activity Intolerance)廃用症候群リスク状態 (Risk for Disuse Syndrome)看護計画 (Planning): 短期目標「安全な方法でトイレまでの歩行が介助にて可能になる」、長期目標「在宅生活において可能な限り自立した移動手段を確立する」。 実施 (Implementation): 残存機能を活かした起居・移乗・歩行訓練の指導、並行して転倒予防のための環境整備を提案、家族への介助方法指導(過介護の防止)。 評価 (Evaluation): 歩行距離や介助量の変化、ADLスコアの変化、転倒の有無、本人・家族の満足度。 暗記のコツ残機活かして、歩けADL」(能をかしてく訓練がADL低下を防ぐ)と覚えましょう。脳卒中リハビリは「廃用を防ぎつつ、使える機能で生活を再構築する」ことが黄金律です。 国試頻出ポイント 在宅看護論・老年看護学の状況設定問題で頻出です。脳卒中後遺症や廃用症候群の事例で、「優先すべき看護介入」を問われます。正解の選択肢は、たいてい「残存機能の活用」「自立支援」の視点を含んでいます。 出題パターン注意! 単に「適切なケアはどれか」ではなく、本事例のように「優先されるのはどれか」と問われた場合、複数の正しいケアの中から看護の優先順位(マズローの欲求段階説、生命の危機、廃用進行の防止など)に基づいて判断する必要があります。状況設定の詳細(移動能力の低下が顕著、など)が優先順位を決めるヒントになります。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario) 80歳男性、脳梗塞後左片麻痺。妻と二人暮らし。訪問看護週2回、訪問リハビリ週1回利用中。「最近、トイレに行くのが間に合わなくて…」と訴え、バーセルインデックス(BI)の移動項目が10点(歩行自立)から5点(介助歩行)に低下。家の中でも伝い歩きが中心で、ふらつきが目立つ。妻は「転ぶのが怖くて、なるべくベッドで休んでいてほしい」と話す。 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment) 1. 観察 (Observation): 自宅内での実際の移動動作を観察し、どの動作のどこに介助が必要か、バランスを崩す要因は何か(筋力低下? 環境? 履物?)を具体的に評価します。 2. アセスメント (Assessment): 過度な安静が廃用を加速させている悪循環をアセスメントし、妻の「怖い」という感情の背景(過去のヒヤリハット経験、正しい介助法の知識不足など)を探ります。 3. 介入 (Intervention): 最重要! 「トイレに行く」という具体的な目標を設定し、非麻痺側下肢と上肢を活用した安全な立ち上がり・伝い歩きの方法を指導します。妻には「動かないことのリスク」を説明し、「見守り」と「必要な時だけ最小限の介助」を行う過介護防止の方法を指導します。 4. 報告・連携 (Report & Collaboration): 移動能力低下の状況と訓練指導の内容を訪問リハビリの理学療法士と共有し、一貫したプログラムを提供します。 看護プロトコル 観察項目: バイタルサイン、移動時の表情・息切れ、移動能力(FIM/BI)、筋力・バランス、住環境の危険箇所、家族の介護負担感と理解度。 報告基準(SBAR): 「S: トイレまでの歩行が不安定となり、BI移動が5点に低下。妻は転倒を恐れ安静を促している。B: 廃用進行によるADL低下の悪循環が懸念される。A: 残存機能を活かした歩行訓練指導と家族への過介護防止指導が必要と判断。R: 歩行訓練の継続と環境整備の検討、リハビリ職との情報共有を依頼します。」 記録のポイント: 具体的な介助量(見守り、軽介助、中等度介助など)、患者・家族の言動と指導内容、目標達成度をSOAPで記録。 家族への説明: 「今、動かないでいると、ますます歩けなくなってしまいます。〇〇さんの『歩きたい』という気持ちを大切に、安全に歩く練習を続けることが、寝たきりを防ぐ一番の近道です。私たちが安全な方法をお伝えしますので、一緒に見守っていきましょう。」 先輩看護師の一言 「動けなくなっていく患者さんと、『事故が怖い』と願うご家族。どちらの気持ちも痛いほどわかりますよね。でも私たち看護師の役割は、『安全のために動かない』ではなく、『安全に動くための方法を共に考え、支える』ことです。国試で問われる『残存機能の活用』は、患者さんの『まだできる力』を信じ、その人らしい生活を最後まで支えるための看護の本質なんですよ。」

重要概念

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