核心解説
この問題は、
うつ病 (Major Depressive Disorder) の病態生理に関連する
神経内分泌学的検査 (Neuroendocrine Testing) を問うています。特に、うつ病の一部の患者で認められる
視床下部-下垂体-副腎系 (HPA axis) の機能亢進 (Hyperactivity) を評価する検査法を理解することが鍵となります。うつ病では、ストレス応答の調節異常により、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)やコルチゾールの分泌が過剰になることがあり、これが病態形成に関与すると考えられています。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は③の
デキサメタゾン抑制試験 (Dexamethasone Suppression Test, DST) です。
最重要! この検査は、合成副腎皮質ホルモンである
デキサメタゾン (Dexamethasone) を投与し、その後測定する血中コルチゾール値が適切に抑制されない「非抑制 (Non-suppression)」の状態を評価します。これは、うつ病患者におけるHPA軸の機能亢進を反映するバイオマーカーの一つであり、診断の補助や治療効果判定(抗うつ薬治療により正常化する例がある)に用いられることがあります。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ①番の
成長ホルモン分泌負荷試験は、成長ホルモン分泌不全症(低身長症)や末端肥大症の診断に用いられます。うつ病の評価には使用しません。
②番の
プロラクチン測定は、乳汁分泌異常やプロラクチノーマ(下垂体腫瘍)の診断に用います。
④番の
糖負荷試験 (Oral Glucose Tolerance Test, OGTT) は、糖尿病の診断に用いる検査です。
⑤番の
甲状腺刺激ホルモン(TSH)測定は、甲状腺機能亢進症や低下症の診断に用います。うつ病との関連では、甲状腺機能低下症がうつ症状を呈することがあるため鑑別診断に用いられることがありますが、問題文にある「視床下部-下垂体-副腎系の機能評価」には該当しません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
うつ病の神経内分泌学的異常としては、HPA軸機能亢進の他に、
甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)負荷試験におけるTSH反応の鈍化や、
成長ホルモン(GH)の分泌低下なども報告されています。また、うつ病の診断はあくまで問診と診断基準(DSM-5)に基づく臨床診断が主体であり、DSTなどの検査は補助的な位置づけであることを理解しておきましょう。
概念整理:
デキサメタゾン抑制試験 (DST) は、うつ病患者における
HPA軸機能亢進 → コルチゾール分泌抑制の異常(非抑制) を評価する神経内分泌学的検査。
一目で比較!:
| 検査名 | 評価対象 | 主な用途 |
|---|
| デキサメタゾン抑制試験 | HPA軸機能 (コルチゾール抑制) | うつ病の補助診断、Cushing症候群の診断 |
| TRH負荷試験 | 視床下部-下垂体-甲状腺系 (TSH反応) | 甲状腺機能異常、うつ病の補助診断 |
| 成長ホルモン分泌負荷試験 | 成長ホルモン分泌能 | 低身長症、末端肥大症 |
| 糖負荷試験 (OGTT) | 耐糖能 (インスリン分泌) | 糖尿病の診断 |
看護過程ポイント: この検査が行われる場合、看護師は検査の目的(うつ症状の原因や重症度評価の補助であること)と方法(夜間にデキサメタゾンを内服し、翌朝採血する)を患者に説明します。検査結果が「異常(非抑制)」であっても、それが直ちにうつ病の診断確定になるわけではなく、臨床症状と総合的に評価することを理解しておくことが重要です。
暗記のコツ: 「うつ病(Depression)→ ストレスホルモン(Cortisol)の異常 → Dexamethasone(抑制試験)」と連想しましょう。
国試頻出ポイント: うつ病の病態生理と関連する検査として、DSTは頻出です。また、Cushing症候群の診断にも同様の検査が用いられることを併せて覚えておくと良いでしょう。鑑別診断として、甲状腺機能低下症(うつ症状を呈することがある)のTSH測定も重要です。