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周産期の異常と看護
問題

産褥1日目の女性。分娩時の出血量は1,200mLであった。現在、顔色は蒼白で、倦怠感を強く訴えている。血圧90/60mmHg、脈拍100/分、Hb 8.5g/dL。この患者に対する看護計画として最も優先すべきものはどれか。

分娩時出血量1,200mL、現在のHb 8.5g/dL、血圧90/60mmHg、脈拍100/分。
解説
産褥早期の大量出血後の症例では、まず出血の持続や子宮復古不全による再出血のリスクが高い。そのため、子宮収縮状態の観察 (子宮底の高さ、硬さ、悪露の量) とバイタルサインの頻回測定が最優先である。鉄剤内服や栄養指導は貧血改善のために重要だが、急性期の出血管理が優先される。早期離床は出血リスクを高める可能性がある。授乳指導は全身状態が安定してから行う。
同じテーマの次の問題産褥期に発生する子宮内感染(産褥子宮内膜炎)のリスク因子として最も適切なものはどれか。

詳細解説

核心解説 この問題は、産褥早期 (Early Puerperium) における大量出血後の 産後出血 (Postpartum Hemorrhage, PPH) リスクと看護の優先順位を問うています。
分娩時出血量1,200mLは異常出血であり、現在の 血圧90/60mmHg (収縮期血圧低下)脈拍100/分 (頻脈)Hb 8.5g/dL (貧血)、顔色蒼白・倦怠感という状態は、循環血液量減少 (Hypovolemia) および出血性貧血 (Hemorrhagic Anemia) の典型的な徴候です。
この患者は、子宮収縮不全による遅発性産後出血 (Delayed Postpartum Hemorrhage) のリスクが極めて高い状態にあります。看護の最優先目標は、生命の安全確保 であり、バイタルサインと子宮の状態を頻回に観察し、出血の再燃や進行を早期に発見することです。 正解の根拠 (Answer Rationale)
選択肢②の 子宮収縮状態の観察とバイタルサインの頻回測定 が最優先です。
理由は、産褥1日目は子宮復古が最も不安定な時期であり、分娩時の大量出血により子宮筋の収縮力が低下している可能性があります。子宮底の高さ、硬さ(収縮の強さ)、悪露の量と性状を観察することで、最重要! 子宮収縮不全による出血の再開(弛緩出血)を早期に発見できます。同時にバイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸、体温、SpO2)を頻回(15~30分毎)に測定し、ショックの前兆を見逃さないことが最優先の看護介入です。 誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意!
① 早期離床と歩行の励行:現時点では 禁忌に近い対応 です。血圧低下と頻脈がある状態での離床は、起立性低血圧や失神、転倒リスクを高めます。まずは安静を確保し、出血が安定してから段階的に開始します。
③ 退院後の栄養指導と生活指導:退院指導は 回復期以降の看護介入 です。急性期の出血リスク管理が優先されるため、時期尚早です。
④ 安静保持と鉄剤の内服指導:安静保持は重要ですが、鉄剤の内服は貧血改善に有効ですが、即効性はありません。急性期の出血管理の方が優先順位が高いです。また、鉄剤内服前に出血が持続していないかの確認が必須です。
⑤ 授乳方法の指導と母乳分泌促進:授乳は子宮収縮を促進するため有用ですが、母体の全身状態が不安定な現時点では、まずは安静と出血コントロールが優先です。母体の回復を待ってから指導します。 関連概念の整理 (Related Concepts)
産後出血の定義は、分娩後24時間以内の出血量が経腟分娩で500mL以上、帝王切開で1,000mL以上とされます。本症例は1,200mLと明らかな異常出血です。弛緩出血(Uterine Atony)のリスク因子として、多産、巨大児、遷延分娩、全身麻酔、そして 分娩時大量出血 自体が挙げられます。出血量が多く、子宮内に凝血塊が残存すると、子宮の収縮がさらに阻害されるという悪循環に陥ります。

概念整理: 産褥早期の大量出血後は、循環血液量減少 (Hypovolemia)子宮収縮不全 (Uterine Atony) のリスクが同時に存在する。看護の優先順位は「生命維持のための循環動態の安定化」であり、そのための観察(子宮収縮・悪露・バイタルサイン)と早期発見・報告が最優先される。
一目で比較!:
項目産褥1日目(本例)産褥3~4日目
主なリスク産後出血(弛緩出血)子宮内感染、乳腺炎、血栓症
看護の焦点生命の安全(バイタルサイン・出血管理)感染予防、排泄援助、褥婦の休息
離床安静(禁忌に近い)段階的に開始

看護過程ポイント: アセスメントでは 子宮底の高さ(臍下何cmか)子宮の硬さ(収縮良好か軟らかいか)悪露の量(時間当たりのパッド交換回数、凝血の有無) を必ず記録する。看護診断は「出血リスク状態 (Risk for Bleeding)」または「循環血液量減少リスク状態 (Risk for Deficient Fluid Volume)」が優先される。
暗記のコツ: 産後出血のリスクを「4つのT」で覚える。Tone(子宮収縮不全)、Trauma(裂傷)、Tissue(遺残胎盤)、Thrombin(凝固異常)。本例のリスクは Tone が最も高い。
国試頻出ポイント: 産後出血のリスク因子と、その観察項目(バイタルサイン、子宮底、悪露)は頻出。また、「離床の可否」「経腟分娩 vs 帝王切開での管理の違い」も併せて問われる。
出題パターン注意!: 単純な「産後出血の看護」という知識問題から、「事例問題でバイタルサインの異常値を読み取り、どのような報告(SBAR)をするか」という応用問題に発展することが多い。常に 数値(出血量・Hb・血圧) を意識して学習しよう。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario)
あなたは産科病棟の看護師。産褥1日目のAさん(30代、経腟分娩)の夜間のラウンド中、分娩時出血1,200mLの情報を受け、Aさんの状態を確認しに行きました。顔色が蒼白で「少しふらふらする」と訴えています。バイタルサインは血圧88/58mmHg、脈拍104回/分、呼吸20回/分、SpO2 98%(室内気)。子宮底は臍高より1横指上で、やや軟らかく、悪露は中等量で凝血が混じっています。 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)
1. 最重要! 観察: まず バイタルサイン子宮の状態 を再評価。血圧低下と頻脈が持続し、子宮が軟らかい場合は弛緩出血の可能性が高い。
2. アセスメント: 血圧88/58mmHg脈拍104回/分 は、ショックの前段階(代償性ショック)の可能性がある。分娩時出血1,200mLの既往から、循環血液量が減少しているとアセスメントする。
3. 報告(SBAR):
Situation: 「産褥1日目、Aさん。分娩時出血1,200mLの経過です。」
Background: 「現在、血圧88/58mmHg、脈拍104回/分、顔色蒼白、倦怠感あり。子宮底は臍高+1cm、やや軟らかく、凝血混じりの悪露中等量です。」
Assessment: 「弛緩出血による循環血液量減少とショックのリスクがあるとアセスメントしています。」
Recommendation: 「直ちに医師の診察を依頼します。子宮収縮薬(オキシトシン)の投与指示、輸液の指示、Hb/Htの再検査を提案します。」
4. 介入: 医師の指示のもと、子宮収縮薬(オキシトシン) の投与、輸液(乳酸リンゲル液など) の開始、子宮底マッサージ を実施。安静を指示し、離床は禁止。
5. 評価: 30分後、血圧100/64mmHg、脈拍88回/分に改善。子宮底は臍下2横指、硬く収縮良好。悪露量は減少。出血がコントロールできていることを確認。 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)
- 絶対安静:起立性低血圧と失神による転倒を予防するため、離床は医師の許可が出るまで禁止。
- 感染対策:出血に伴う子宮内感染のリスクが高まるため、清潔なパッド交換と手指衛生を徹底。悪露の性状(悪臭の有無)も観察する。
- 血栓予防:長期安静による下肢静脈血栓症(DVT)のリスクも念頭に置き、可能な範囲での下肢の自動運動やフットポンプを促す(出血が安定した後)。
看護プロトコル: 産褥出血の観察頻度は、リスクに応じて15分~1時間毎。記録には、時間、バイタルサイン、子宮底の高さ(臍上/下○cm)、子宮の硬さ(硬い/軟らかい)、悪露の量(少量/中等量/多量)と性状(凝血の有無、色、臭い) を漏れなく記録する。
先輩看護師の一言: 「産褥期の出血は『分娩が終わったから安心』という油断が一番怖い!『この患者さんは分娩時の出血量が多かった』という情報は、引き継ぎの時に必ず共有してね。バイタルサインが少しでもおかしいと思ったら、迷わず先輩や医師を呼んでください。出血は一瞬で急変するから、『いつもと違う』を見逃さないことが、母体の命を守る鍵です!」

重要概念

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