核心解説
この問題は、
産褥期 (Puerperal Period) に発症する
急性乳腺炎 (Acute Mastitis) の原因菌に関する知識を問うています。急性乳腺炎は、乳汁分泌が盛んな産褥期に多く、主に乳汁うっ滞(乳管の閉塞)をきっかけに細菌感染が成立します。
正解の根拠 (Answer Rationale):
最も頻度の高い原因菌は
黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus) です。特に
メチシリン感受性黄色ブドウ球菌 (MSSA) が多く、乳頭の亀裂や擦り傷から侵入し、乳汁うっ滞部位で増殖して炎症を引き起こします。この菌は
コアグラーゼ陽性 であり、膿瘍形成能が高く、重症化すると乳腺膿瘍を形成することもあります。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
①
混同注意! 大腸菌 (Escherichia coli) は主に尿路感染症や腹腔内感染症の原因菌であり、急性乳腺炎の起因菌としては頻度は低いです。
②
肺炎桿菌 (Klebsiella pneumoniae) は呼吸器感染症(肺炎)の原因菌として有名で、乳腺炎の原因菌ではありません。
④
緑膿菌 (Pseudomonas aeruginosa) は院内感染や免疫不全患者に多く、乳腺炎の主たる起因菌ではありません。
⑤
混同注意! レンサ球菌 (Streptococcus agalactiae) は新生児の早期発症型感染症や産婦の子宮内感染(絨毛膜羊膜炎)の原因として有名ですが、急性乳腺炎の起因菌としては頻度は高くありません。
関連概念の整理 (Related Concepts):
急性乳腺炎の治療は
抗菌薬療法(ジクロキサシリンやセファレキシンなどのペニシリン系・セフェム系) と
排膿・乳汁うっ滞の解除(授乳・搾乳の継続) が基本です。膿瘍形成時は
切開排膿が必要 となります。授乳中止は禁忌ではなく、むしろ継続することで乳汁うっ滞を解除し、治癒を促進します。
概念整理: 急性乳腺炎の原因菌は
黄色ブドウ球菌 (S. aureus) が最多。乳頭亀裂からの感染と乳汁うっ滞が発症の2大要因。
一目で比較!:
| 疾患 | 主な原因菌 |
|---|
| 急性乳腺炎 | 黄色ブドウ球菌 (S. aureus) |
| 産褥熱 | レンサ球菌 (S. agalactiae / GBS)、大腸菌 (E. coli) |
| 尿路感染症 | 大腸菌 (E. coli) |
看護過程ポイント:
アセスメント: 乳房の熱感・発赤・硬結・圧痛の有無、体温上昇、乳汁の性状。
看護介入: 授乳または搾乳の励行(乳汁うっ滞解除)、患側からの授乳も継続して良いことを指導、適切な抗菌薬投与の確認、疼痛緩和(冷罨法や鎮痛薬)。
暗記のコツ: 「
乳腺炎は黄色ブドウ球菌(黄色い膿をつくる菌)」と覚えましょう。化膿性感染症の代表格です。
国試頻出ポイント: 急性乳腺炎の原因菌、治療(授乳継続の可否)、膿瘍形成時の対応、産褥熱との鑑別が頻出。産褥熱の原因菌(レンサ球菌、大腸菌)と混同しないように。