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周産期の異常と看護
問題

産褥2日目の経腟分娩後の女性。体温38.2℃、悪露は赤色でやや腐敗臭がある。子宮底は臍下2横指で圧痛を認める。血液検査で白血球12,000/μL、CRP 8.5mg/dL。この患者に最も疑われる病態はどれか。

解説
産褥2日目の発熱、悪露の腐敗臭、子宮の圧痛、CRP上昇は典型的な産褥熱 (子宮内感染) の所見である。産褥熱は通常分娩後2~3日以降に発症し、子宮内膜炎が主体となる。乳腺炎は産褥3~4日以降の乳汁分泌開始期に発症することが多い。尿路感染症では悪露の異常や子宮圧痛は認めない。肺塞栓症では呼吸器症状が主体となる。会陰切開創の感染は局所所見が主体である。
同じテーマの次の問題産褥期に発生する子宮内感染(産褥子宮内膜炎)のリスク因子として最も適切なものはどれか。

詳細解説

核心解説 この問題は、産褥期における発熱と子宮所見から、最も可能性の高い感染性合併症を問うています。核心は、産褥期感染症 (Puerperal Infection)、特に子宮内感染 (Endometritis)の病態とその臨床徴候を理解することです。

核心概念の分析 (Key Concept): 産褥2日目は、経腟分娩後の子宮復古(Involution)が進行している時期です。この時期に発熱(38.2℃)と悪露の腐敗臭、子宮底の圧痛(臍下2横指)が認められます。これは、分娩時に子宮内に侵入した細菌(多くは腟内常在菌)が、子宮内膜に感染を起こしている典型的な所見です。血液検査の白血球増多(12,000/μL)とCRP上昇(8.5mg/dL)は、全身性の炎症反応を示しています。

正解の根拠 (Answer Rationale): 最重要! 産褥熱(Puerperal Fever)は、分娩後24時間以降に38.0℃以上の発熱が2日以上続く状態を指し、その原因の約90%が子宮内感染(子宮内膜炎)です。本例は、発熱、悪露の異常(腐敗臭)、子宮圧痛、炎症反応高値と、子宮内感染の主要な4徴候をすべて満たしています。

誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! 会陰切開創の感染は、発熱を伴うことがありますが、本例のように悪露の異常や子宮の圧痛を認めることはありません。創部の発赤、腫脹、疼痛、排膿が局所所見の主体です。
③ 肺塞栓症(Pulmonary Embolism)は、呼吸困難(Dyspnea)、胸痛、頻呼吸、SpO2低下など呼吸器症状が主体です。本例のような産褥期特有の子宮所見は認めません。
④ 乳腺炎(Mastitis)は、産褥3~4日以降の乳汁分泌が盛んになる時期に発症することが多く、乳房の腫脹、発赤、熱感、疼痛が局所所見です。本例の子宮所見は乳腺炎では説明できません。
⑤ 尿路感染症(Urinary Tract Infection)では、排尿時痛、頻尿、残尿感など尿路症状が主体です。悪露の異常や子宮の圧痛は認めません。

関連概念の整理 (Related Concepts): 産褥熱の原因菌として最も多いのはB群溶血性連鎖球菌 (Group B Streptococcus, GBS)、次いで大腸菌(Escherichia coli)です。予防には分娩時の清潔操作と、GBSスクリーニング陽性者への分娩時抗生物質投与が重要です。治療は広域抗菌薬の投与が基本で、子宮内に胎盤遺残がある場合は掻爬(Curettage)が必要となることもあります。 概念整理: 産褥期感染症は、子宮内感染(産褥熱)が最も頻度が高く、発熱・悪露異常・子宮圧痛が3主徴。会陰創部感染、乳腺炎、尿路感染症は異なる局所所見で鑑別する。感染の起点は腟内常在菌の上行性感染が主体。 一目で比較!:
病態主な所見発症時期
産褥熱 (子宮内感染)発熱、悪露腐敗臭、子宮圧痛、炎症反応高値産褥2~3日以降
乳腺炎乳房の発赤・腫脹・熱感・疼痛産褥3~4日以降
会陰創感染創部の発赤・腫脹・疼痛・排膿産褥2~3日以降
尿路感染症排尿時痛、頻尿、残尿感産褥期全般
看護過程ポイント: - アセスメント: バイタルサイン(特に体温)、悪露の量・色・性状・臭い、子宮底の高さと硬さ・圧痛の有無をルーチン観察。血液検査(WBC、CRP)の経時的変化も評価。 - 看護診断 (Nursing Diagnosis): 感染リスク状態 (Risk for Infection)(予防的)、または感染 (Infection)(発症後)。 - 看護介入: 抗菌薬投与の確実な実施(時間厳守)。安静の確保(子宮収縮促進)。悪露の適切な処理(陰部洗浄、ナプキン交換)と手指衛生の徹底。発熱時は冷却と水分補給を促す。 - 評価: 体温の正常化、悪露性状の改善、炎症反応の低下、子宮圧痛の消失。 暗記のコツ: 「産後2日、熱と悪臭、子宮いたい」=産褥熱(子宮内感染)。「産後3~4日、乳房カチカチ」=乳腺炎。発熱+呼吸苦=肺塞栓症。発熱+排尿痛=尿路感染症。 国試頻出ポイント: 産褥熱の定義(分娩後24時間以降に38℃以上の発熱が2日以上)、原因菌(GBS、大腸菌)、予防(清潔操作、GBSスクリーニング)、治療(抗菌薬、子宮内遺残物除去)が頻出。また、産褥期の正常な子宮復古経過と異常の鑑別もよく問われる。 出題パターン注意!: 単純な「産褥熱の原因は?」という知識問題から、「産褥2日目の患者。体温38.5℃、悪露腐敗臭あり。優先すべき看護介入は?」のような状況設定問題に発展。また、「産褥熱を予防するための看護ケア」を問う問題も多い。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario): 産褥2日目の30歳女性。経腟分娩後、経過は良好でしたが、夕方のラウンドで「なんだかお腹がシクシク痛む気がする」と訴えました。バイタルサインは体温38.0℃、脈拍90回/分、血圧110/68mmHg。悪露は赤色で、わずかに生臭い臭いがします。子宮底は臍下2横指で、触診に軽度の圧痛があります。あなたはこの患者さんの状態をどのようにアセスメントし、行動しますか?

看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment):
1. 観察 (Observation): まず、バイタルサイン(体温、脈拍、血圧、SpO2、呼吸数)を再確認。悪露の量(パッドの交換頻度)、色、臭い、性状(凝血塊の有無)。子宮底の高さ、硬さ、圧痛の程度を評価。創部(会陰切開創)の発赤や腫脹、排膿の有無も確認。
2. アセスメント (Assessment): 最重要! 産褥2日目の発熱と子宮圧痛、悪露の異常臭は、子宮内感染(産褥熱)の初期徴候です。生理的な産褥期の発熱(乳汁産生による一過性の発熱)や単なる疲労による発熱と鑑別する必要があります。子宮復古が良好であれば圧痛は通常認めません。本症例では、子宮圧痛と悪露異常臭という特異的な所見が揃っているため、産褥熱を強く疑います。
3. 報告 (Report - SBAR): 医師へ SBAR (Situation-Background-Assessment-Recommendation) で報告します。
- Situation (状況): 「産褥2日目の経腟分娩後の患者さんが、夕方から発熱と下腹部痛を訴えています。」
- Background (背景): 「分娩経過に問題はなく、既往歴にも特記事項はありません。今までバイタルサインは安定していました。」
- Assessment (アセスメント): 「体温38.0℃、子宮底は臍下2横指で圧痛あり、悪露は赤色で腐敗臭がします。WBC 12,000、CRP 8.5と炎症反応上昇を認めます。産褥熱(子宮内感染)が疑われます。」
- Recommendation (提案): 「血液培養と悪露培養を提出し、抗菌薬の投与開始を検討していただけますか?また、安静度の指示もお願いします。」
4. 介入 (Intervention): 医師の指示に基づき、広域抗菌薬(例:セファゾリン)の投与を開始。安静を促し、子宮収縮を促進するため体位変換を指導(左側臥位が推奨)。悪露処理時の清潔操作を徹底(用手洗い、新しいナプキンの使用)。水分摂取を促す(発熱による脱水予防)。解熱剤(アセトアミノフェン)の使用も検討。
5. 評価 (Evaluation): 抗菌薬投与後、24~48時間以内に体温の低下傾向、子宮圧痛の軽減、悪露性状の改善がみられるかを評価。炎症反応(WBC、CRP)の経時的な低下を確認。副作用(薬疹、下痢など)の有無も観察。

患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions):
- 危険所見! 高熱(39℃以上)が続く、悪露が急に増量・鮮血化する、強い腹痛が出現する、血圧低下・頻脈・意識障害など敗血症性ショック(Septic Shock)の兆候が見られた場合は、直ちに医師に報告し、緊急対応が必要です。
- 感染症法に基づく届出は不要(産褥熱は五類感染症ですが、全数把握対象外)。
- 母子感染予防の観点から、母乳哺育は原則継続可能(抗菌薬の母乳移行性を確認し、安全な薬剤を選択)。
- 手指衛生 (Hand Hygiene) が最も重要な予防策です。患者さん自身の手洗いも指導。
- 安静中は、深部静脈血栓症(DVT)予防のため、足関節の運動や弾性ストッキングの着用を促す。

看護プロトコル: 観察頻度は初期は4時間ごと、安定後は1日2回。記録は経時的な体温、子宮底の位置と硬さ、悪露の性状、疼痛スケール(NRS)、患者の全身状態。医師への報告基準(SBAR)は体温38.5℃以上、血圧低下(収縮期90mmHg未満)、脈拍120回/分以上、意識レベルの変化、悪露の急変。家族への説明は、感染症であること、安静の必要性、治療内容と経過見込み、母乳栄養継続の安全性について。

先輩看護師の一言: 「産褥期の女性は、赤ちゃんのお世話で忙しく、自分の体調変化に気づきにくいんです。『なんか変だな』という患者さんのSOSを見逃さないで! 特に『お腹が痛い』と『悪露が臭う』は、産褥熱の典型的なサイン。バイタルサインと一緒に、必ず子宮と悪露のアセスメントをセットで行いましょう。国試でも臨床でも、この一連の流れをしっかり身につけておいてね!」

重要概念

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