核心解説
この問題は、
妊娠中期から後期にかけての母体の循環血液量の生理的変化を問うています。妊娠中、母体は胎児の発育と胎盤循環を支えるために、様々な循環動態の適応変化を起こします。この中でも、
循環血液量の増加(約40~50%増、非妊娠時の約1.5倍)は最も重要な変化の一つであり、理解しておく必要があります。
1.
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 妊娠中、特に妊娠20週以降、母体の循環血液量は急激に増加し、妊娠32~34週頃にピークに達します。この増加率は約40~50%で、非妊娠時の約1.5倍になります。この血液量増加の目的は、増大する子宮への血流確保、胎盤循環の維持、分娩時の出血に対する備えです。
2.
誤答の分析 (Distractor Analysis): ①血液粘度は、血液量の増加に伴う血液希釈(生理的貧血)により、
低下します。上昇はしません。②収縮期血圧は、妊娠中期にやや低下するのが生理的であり、20mmHg以上の上昇は妊娠高血圧症候群を疑う異常所見です。③1回拍出量は、循環血液量増加により心臓への静脈還流量が増えるため、
増加します。減少はしません。⑤心拍数は、妊娠中は非妊娠時より約10~15拍/分(約15~20%)
増加します。減少はしません。
3.
関連概念の整理 (Related Concepts): 妊娠に伴う循環血液量の増加は、血液成分の希釈(
生理的貧血)を引き起こします。Hb値やHt値が妊娠前より低下するのは正常ですが、低下が大きすぎる場合は鉄欠乏性貧血などを疑います。また、心拍出量も増加し、心臓に負担がかかるため、心疾患合併妊娠では注意が必要です。
概念整理: 妊娠中、母体は胎児の成長と分娩に備え、循環血液量を約1.5倍に増加させる。これに伴い、心拍出量・1回拍出量・心拍数も増加する(血液希釈による生理的貧血を伴う)。血圧はむしろ妊娠中期に軽度低下するのが生理的である。
一目で比較!:
| 指標 | 妊娠中の生理的変化 | 異常所見(要精査) |
| 循環血液量 | 約1.5倍に増加(約40~50%増) | 急激な減少(出血など) |
| 心拍数 | 約10~15拍/分増加 | 頻脈(120回/分以上) |
| 1回拍出量 | 増加 | 減少(心不全徴候) |
| 収縮期血圧 | 中期にやや低下、後期に戻る | 140mmHg以上で妊娠高血圧症候群疑い |
| 血液粘度 | 低下(血液希釈) | 上昇(脱水、多血症) |
看護過程ポイント: 妊娠中期以降の健診では、循環血液量増加が心臓に負担をかけていないか(浮腫、呼吸困難、動悸の有無)をアセスメントします。また、生理的貧血の進行を評価するため、Hb・Ht値の推移を確認します。血圧が140/90mmHg以上に上昇した場合は、
妊娠高血圧症候群(Pregnancy-Induced Hypertension, PIH)の可能性を考え、即座に医師に報告します。
暗記のコツ: 「妊婦は血液を約1.5リットル多く持つ(体重60kgで血液量約4L→6L)」とイメージすると覚えやすい。心拍数は「+10~15拍/分」、血圧は「上がやや下がる(妊娠中期)」がポイント。
国試頻出ポイント: 妊娠の生理的変化は毎年のように出題される必須項目です。特に「循環血液量の増加(約1.5倍)」「血液希釈による生理的貧血」「血圧変動(中期に低下)」の3点はセットで覚えましょう。妊娠高血圧症候群の診断基準(140/90mmHg以上)と混同しないよう注意。
出題パターン注意!: 単純な知識問題として「妊娠中に増加するのはどれか」という出題だけでなく、「妊娠中期の経腟分娩後、循環血液量が急激に減少するリスク(産後出血)」や「妊娠合併心疾患の管理」といった応用問題にもつながります。