80歳女性。脳梗塞の既往があり、左片麻痺と軽度の認知症がある。トイレまで歩行可能だが、尿意を感じてからトイレに間に合わず… | MyMerci
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高齢者に特有な症候・疾患・障害と看護
問題

80歳女性。脳梗塞の既往があり、左片麻痺と軽度の認知症がある。トイレまで歩行可能だが、尿意を感じてからトイレに間に合わずに尿が漏れることが週に3回程度ある。この患者の尿失禁のタイプとして最も適切なものはどれか。

解説
機能性尿失禁は、認知症や身体障害によりトイレに行く動作が間に合わないために生じる尿失禁である。本症例では脳梗塞後の左片麻痺と軽度認知症があり、尿意を感じてからトイレに行くまでの動作が間に合わずに尿が漏れており、機能性尿失禁に該当する。切迫性尿失禁は尿意切迫感が先行するが、本症例では尿意はあるものの動作が間に合わない点が異なる。
同じテーマの次の問題高齢者の腹圧性尿失禁の原因として最も関与が大きいものはどれか。

詳細解説

核心解説 この問題は、尿失禁 (Urinary Incontinence)の病態分類と、患者の背景因子(認知症・身体障害)を結びつけて考える看護アセスメント力を問うています。
尿失禁は大きく4つに分類され、それぞれ原因と症状が異なります。機能性尿失禁 (Functional Incontinence)は、認知機能低下や身体障害によって、トイレに間に合わずに尿が漏れる状態です。
本症例は「脳梗塞後の左片麻痺」による歩行障害と「軽度認知症」があり、「尿意を感じてからトイレに間に合わない」という状況が典型的であり、機能性尿失禁に該当します。
最重要! 機能性尿失禁の核心は「尿意はある(尿路の異常は軽度)」が「行動が伴わない」点です。他の尿失禁と混同しないようにしましょう。 正解の根拠 (Answer Rationale)
1. 本症例の特徴:尿意は感じている(括約筋機能・膀胱知覚はおおむね保たれている)。
2. しかし、左片麻痺による歩行速度低下と認知症によるタイミング判断の遅れが重なり、トイレに到達する前に尿が漏れる。
3. これは、認知・身体機能の低下が直接的な原因であり、尿路の器質的異常(括約筋不全や膀胱収縮異常)が主因ではないため、機能性尿失禁 (Functional Incontinence)が最も適切です。 誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ②番:腹圧性尿失禁 (Stress Incontinence)は、咳・くしゃみ・笑うなど腹圧がかかった瞬間に尿が漏れるもので、尿道括約筋の弱化が原因です。本症例のような「尿意があって動作が間に合わない」とは異なります。
③番:溢流性尿失禁 (Overflow Incontinence)は、膀胱が過伸展し、尿が少しずつあふれ出るものです。前立腺肥大などによる排尿筋低活動が原因で、残尿が特徴です。尿意は乏しいか鈍いことが多く、本例とは合いません。
④番:真性尿失禁 (True Incontinence)は、膀胱・尿道の解剖学的異常や神経障害により、尿が常時漏れ出る状態です。本症例は断続的な漏れであり、該当しません。
⑤番:切迫性尿失禁 (Urge Incontinence)は、急な強い尿意(尿意切迫感)が先行し、我慢できずに漏れるものです。本症例では「尿意を感じてから」漏れるが、動作の問題が主であり、切迫性の病態(過活動膀胱など)が主因とは言い切れません。 関連概念の整理 (Related Concepts)
尿失禁の鑑別ポイントは「尿意の有無」「漏れるタイミング(動作時?切迫時?無自覚?)」「残尿量」です。
混同注意! 特に「機能性」と「切迫性」は高齢者で併存しやすい(混合性尿失禁)ため、どちらが主因かを見極めることが看護介入の優先順位決定に重要です。
概念整理: 尿失禁は「尿意の質とタイミング」「身体・認知機能」「残尿」の3軸で分類する。機能性尿失禁は「認知症・運動障害による行動困難型」、切迫性は「膀胱の過敏型」、腹圧性は「尿道の支えの弱化型」、溢流性は「膀胱の出し疲れ型」。
一目で比較!
タイプ原因尿意漏れるタイミング代表的なケア
機能性認知・身体機能低下ありトイレ動作中に間に合わず環境調整・見守り・トイレ誘導
切迫性過活動膀胱・神経因性膀胱強い切迫感急な尿意で我慢できず膀胱訓練・抗コリン薬
腹圧性尿道括約筋・骨盤底筋群弱化なし咳・くしゃみ・運動時骨盤底筋訓練・生活指導
溢流性排尿筋低活動・尿道閉塞鈍い・乏しい膀胱が満杯で少しずつ残尿測定・導尿・薬物療法

看護過程ポイント - アセスメント: 尿意の有無と強さ、漏れるタイミング、排尿日誌(時間・量)、残尿測定、認知機能(長谷川式簡易知能評価スケールなど)とADL評価(Barthel Indexなど)。 - 看護診断 (Nursing Diagnosis): 「排尿パターン障害:機能性尿失禁」または「トイレ動作に関連した排泄セルフケア不足」。 - 計画・介入: 定時誘導トイレ(例:2時間ごと)、ポータブルトイレの配置、排泄に適した服装(ズボンはゴム紐など)、転倒予防策と併せた環境整備。 - 評価: 漏れる頻度の減少、患者のQOL向上、皮膚トラブルの有無。
暗記のコツ: 「機(機能性)=体と頭の動作が遅れて漏れる」→「体(片麻痺)と頭(認知症)の動きが機(機能)に関わる」と覚えましょう。
切迫性は「切(急に)迫(迫られる)」、腹圧性は「お腹に力が入ると漏れる」、溢流性は「あふれ出る(Overflow)」とキーワードを結びつけると混同しにくいです。
国試頻出ポイント: 尿失禁の分類は、高齢者看護や基礎看護学の領域で頻出です。事例問題で「脳梗塞後遺症・認知症」の患者が出たら、まず機能性尿失禁を疑うクセをつけましょう。「尿意はあるか」が鑑別の第一歩です。
出題パターン注意!: 単純な「機能性尿失禁の定義」を問う問題から、「混合性尿失禁(機能性+切迫性)の患者への優先的な介入はどれか」といった応用問題に発展します。病態と看護介入をリンクさせて理解しておきましょう。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario)
80代女性、左片麻痺・軽度認知症。病棟で夜間、看護師が巡視中、ベッドサイドに尿が少量漏れているのを発見。患者は「トイレに行きたくなって、すぐに起き上がったけど、間に合わなかった」と話します。日中はトイレ歩行自立(見守りレベル)ですが、夜間は特にトイレ動作が遅くなりがちです。 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)
1. 観察: 排尿状況(漏れた量・タイミング)、バイタルサイン、転倒リスク(夜間トイレ歩行)、皮膚のびらん・発赤の有無。
2. アセスメント: 機能性尿失禁と判断。夜間の覚醒度低下と片麻痺による動作遅延が主因。切迫性の可能性も併せて、尿意切迫感の有無を確認。
3. 報告(SBAR): 「S(状況):夜間トイレ歩行中に尿失禁。B(背景):左片麻痺・認知症あり。A(アセスメント):機能性尿失禁。R(提案):夜間のポータブルトイレ導入と定時誘導を提案します。」
4. 介入: 最重要! 夜間はポータブルトイレをベッドサイドに配置し、足元の照明をつける。寝る前のトイレ誘導(排泄習慣の確立)を実施。転倒防止のため、センサーマットやナースコールを手元に置くよう指導。
5. 評価: 漏れの頻度が週3回から1回に減少。皮膚トラブルなし。患者の「恥ずかしい」という訴えが軽減した。 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)
- 転倒・転落リスク:夜間トイレ歩行は転倒のハイリスク。ポータブルトイレの配置は有効だが、バランスを崩さないよう手すりや安定した椅子の設置も検討。
- 皮膚トラブル:尿漏れによる皮膚びらん(失禁関連皮膚炎 (IAD))を予防するため、陰部洗浄と保湿を徹底。
- 感染対策:手指衛生と環境清潔を保ち、尿路感染症のリスクを低減。
- 高齢者では脱水予防のため、過度な水分制限は避ける。夕方以降の利尿作用のある飲料(カフェインなど)を控える工夫も有効。
看護プロトコル - 観察項目: 排尿日誌(時間・量・漏れの有無)、残尿測定(必要時)、転倒リスク評価(STRATIFYなど)。 - 報告基準(SBAR): 上記参照。特に「尿意切迫感の有無」は鑑別に重要。 - 記録のポイント: 尿失禁のタイミング(食後?就寝時?)、漏れの程度(少量/多量)、患者の認知・身体状況との関連、介入内容と効果。 - 家族への説明: 「認知症や麻痺の影響でトイレに間に合わないことがあります。無理にトイレに行かせようとせず、ポータブルトイレやおむつを活用することで、本人の負担と転倒リスクを減らせます。」
先輩看護師の一言: 「尿失禁は高齢者にとって大きな精神的負担になります。『漏らした』と責めるのではなく、『トイレに行くのが間に合わなかったね』と共感し、環境を整えることで自信を取り戻してもらうのが看護の役割です。機能性尿失禁は、環境調整と声かけで改善できるケースが多いので、諦めずに介入しましょう!」

重要概念

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