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高齢者の生活を支える看護
問題

72歳の男性、慢性閉塞性肺疾患(COPD)で在宅酸素療法を行っている。階段の上り下りで息切れが強く、日常生活動作(ADL)が低下している。この患者の活動と休息の調整で適切なのはどれか。

解説
COPD患者の活動時息切れに対しては、活動前に気管支拡張薬を予防的に吸入することで、気道を拡張し息切れを軽減できる。酸素流量は活動時には増量が必要な場合があり、安静時と同じ流量では不十分なことがある。無理な活動は呼吸困難を増強させるため避ける。
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詳細解説

核心解説 この問題は、慢性閉塞性肺疾患(COPD: Chronic Obstructive Pulmonary Disease)の患者に対する 活動と休息の調整 における適切な看護介入を問うています。COPDでは、気道の炎症と閉塞(Airway Inflammation and Obstruction)により、換気障害とガス交換能の低下が生じ、労作時に呼吸困難(Dyspnea on Exertion)が出現します。患者の ADL(Activities of Daily Living)を維持・向上させるためには、呼吸困難を悪化させずに安全に活動量を確保する工夫が重要です。 1. 核心概念の分析 (Key Concept): この問題の核心は、COPD患者における 呼吸リハビリテーション(Pulmonary Rehabilitation) の原則です。呼吸リハビリテーションでは、無理のない範囲での活動、エネルギー節約法、呼吸法の指導に加え、薬物療法のタイミングを活動前に設定する ことが呼吸困難の予防と活動耐容能の向上に有効です。 2. 正解の根拠 (Answer Rationale): ④「活動前の予防的な気管支拡張薬の吸入を指導する」が正解です。最重要! 活動前に 短時間作用型気管支拡張薬(Short-Acting Bronchodilator, SABA) を予防的に吸入することで、気管支が拡張され、活動中の気道抵抗が軽減されます。これにより、息切れの出現を遅らせ、より長く、より安全に活動を行うことが可能となります。これは エネルギー節約法(Energy Conservation Technique) の一環として推奨されています。 3. 誤答の分析 (Distractor Analysis):
- ①「活動量を増やすために、無理にでも歩行距離を伸ばすよう促す。」混同注意! これは 禁忌 に近い指導です。無理な活動は呼吸筋疲労と低酸素血症を誘発し、患者の意欲を低下させます。活動は「息切れが出現しない程度」または「会話ができる程度」の強度で段階的に行うべきです。 - ②「酸素流量は安静時と同じ流量で活動するよう指導する。」混同注意! 活動時は酸素需要が増大するため、多くの場合 活動時の酸素流量増量(Exertional Oxygen Supplementation) が必要です。安静時流量で活動すると、活動時の酸素飽和度(SpO2)が低下し、呼吸困難を悪化させる可能性があります。 - ③「休息時は完全に臥床するよう指導する。」混同注意! 完全臥床は廃用症候群(Disuse Syndrome)を促進し、筋力低下とADL低下を悪化させます。休息は、座位や半坐位(Semi-Fowler's Position) で、呼吸を楽にできる姿勢を取ることが推奨されます。 - ⑤「息切れが出現するまで活動を継続させる。」混同注意! 息切れが出現してから活動を続けることは、呼吸困難を増強させ、患者に苦痛と恐怖を与えます。活動は 息切れが出現する前に休憩を挟む ペース配分が重要です。 4. 関連概念の整理 (Related Concepts): COPD患者の活動調整には、呼吸法指導(口すぼめ呼吸 Pursed-lip Breathing、腹式呼吸 Diaphragmatic Breathing)、ポジショニング(前傾座位 Forward-leaning Position)、エネルギー節約のための生活指導(動作を分割する、頻回に休憩を取る)などが含まれます。また、低酸素血症のサイン(チアノーゼ Cyanosis、頻脈 Tachycardia)の観察も重要です。 概念整理: COPDの病態は、気道閉塞と肺の過膨張(Hyperinflation)による換気障害です。このため、労作時には呼吸筋への負担が増大し、息切れが生じます。活動と休息の調整の基本は、「活動前に呼吸を楽にする準備をする(気管支拡張薬吸入、ポジショニング)」と「活動中は呼吸困難を起こさない強度とペースを守る」ことです。 一目で比較!:
項目COPD活動調整の正しい方法誤った方法(禁忌)
薬物療法活動前に予防的吸入息切れが出現してから吸入
活動強度「会話ができる」程度(Borg Scale 3-4/10)「息切れが出現するまで」頑張る
酸素療法活動時は流量増量を検討安静時と同流量で活動
休息姿勢座位・半坐位(前傾座位が有効)完全臥床
活動計画段階的、頻回な休憩、ペース配分無理な歩行距離の延長
看護過程ポイント: - アセスメント: 安静時と活動時のSpO2、呼吸数、心拍数、呼吸困難の程度(Borg Scale、MMRC息切れスケール)、活動パターン、酸素流量。 - 看護診断: 「活動耐容能低下 (Activity Intolerance)」関連因子:換気障害と酸素化障害の不均衡。 - 計画・介入: 活動前の気管支拡張薬吸入指導、活動時の酸素流量調整(医師の指示のもと)、呼吸法とポジショニングの指導、エネルギー節約法の指導。 - 評価: 活動時間の延長、息切れの程度の軽減、SpO2の維持、ADLの向上。 暗記のコツ: 「COPDの活動前は、ブ・ラ・シ!」→「ロンコデート(気管支拡張薬)を クに吸って、ッカリ活動する」と覚えましょう。活動時の酸素は「増やす」が基本とセットで。 国試頻出ポイント: COPD患者の「活動と休息」は、毎年必出のテーマです。特に「活動前の気管支拡張薬吸入」「活動時の酸素流量増量」「無理な活動の禁止」の3つは、正誤を問う問題で頻繁に登場します。状況設定問題では、「患者が息切れを訴えた時の看護師の対応」として出題されることが多いです。 出題パターン注意!: 単純な知識問題として「COPD患者の活動指導で適切なのはどれか」だけでなく、事例問題として「在宅酸素療法中の患者が『階段を上ると息が切れて動けない』と訴えた。看護師の対応で最も適切なのはどれか」のように発展します。事例では、患者の訴えをアセスメントし、具体的な介入(酸素流量調整の相談、呼吸法指導、活動量の調整)を選ぶ力が問われます。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド - 臨床シナリオ (Clinical Scenario): あなたは訪問看護師として、COPDで在宅酸素療法(HOT)を行っている72歳男性の訪問をしています。患者さんは「最近、家の2階に上がるのがとてもつらくて、途中で2回も休まないといけない。1階で過ごす時間が増えた」と話しました。バイタルサインは、SpO2 93%(安静時、酸素1L/分)、呼吸数18回/分でした。看護師として、どのようにアセスメントし、具体的な指導や提案を行いますか? - 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment): 1. 観察: 患者の活動パターン(階段昇降時の呼吸困難の程度、SpO2変動、心拍数変化)、使用している酸素流量、気管支拡張薬の使用状況を詳しく聴取。実際に一緒に階段を昇り、SpO2モニターを装着して活動中の変化を観察する(安全に配慮し、負荷がかかりすぎない範囲で)。 2. アセスメント: 活動時のSpO2が88%未満に低下している可能性が高い。安静時流量(1L/分)では活動時の酸素需要を満たせていないと判断。また、活動前に気管支拡張薬を使用していない可能性も考慮。 3. 報告と介入: 医師にSBARで報告。 - Situation: 「在宅酸素療法中のCOPD患者で、階段昇降時の息切れが増強し、活動耐容能が低下しています。」 - Background: 「安静時SpO2 93%、酸素流量1L/分。活動時のSpO2低下が疑われます。」 - Assessment: 「活動時の酸素流量不足、気管支拡張薬の予防的吸入未実施が原因と考えられます。」 - Recommendation: 「活動時の酸素流量増量(例:2L/分)と、活動前の気管支拡張薬吸入の指示をお願いします。」 4. 患者指導: 「次に階段を昇る時は、昇る前にこの吸入薬(気管支拡張薬)を使ってみましょう。そして、酸素の量を少し増やしてから昇ってみてください。もし途中で苦しくなったら、すぐに立ち止まって口すぼめ呼吸をして、落ち着くまで休憩しましょう。」と具体的なアクションを指導。 - 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions): 危険所見:活動中にSpO2が88%未満に低下した場合、または脈拍が20回/分以上増加した場合は、活動を中断し、医師に報告する。酸素流量の自己判断での変更は禁忌。転倒・転落リスク(特に階段昇降時)に注意する。 看護プロトコル: - 観察項目: 活動前後のSpO2、呼吸数、心拍数、血圧、呼吸困難のBorg Scaleスコア、疲労感、チアノーゼの有無。 - 報告基準(SBAR): 活動時のSpO2 < 90%持続、呼吸数 > 30回/分、脈拍 > 120回/分、新たな胸痛や動悸の出現。 - 記録のポイント: 活動内容(例:階段昇降2階分)、活動時間、活動前後のSpO2、呼吸数、心拍数、呼吸困難の程度、酸素流量、気管支拡張薬の使用有無、患者の自己評価(「いつもより楽だった」など)。 - 家族への説明: 家族にも、活動前の吸入の重要性、活動時の酸素流量増量の必要性、息切れが出現した時の対応(活動中断、安静、医師連絡)を具体的に伝え、協力を仰ぐ。 先輩看護師の一言: 「COPDの患者さんは、『息切れが怖い』から動かなくなる、という悪循環に陥りがちです。私たち看護師の役割は、薬と酸素をうまく使って、患者さんが『もう少し動けそう』という自信を取り戻せるようにサポートすることです。国試で『活動前の吸入』が正解になるのは、まさにこの『予防的に介入して、安全に活動できる環境を整える』という看護の本質が問われているからなんですよ。『苦しくなってから』ではなく、『苦しくなる前に』手を打つ。これがCOPDケアの鉄則です!」

重要概念

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