核心解説
この問題は、高齢者の杖を使用した歩行指導における
正しい杖の持ち方と
長さの調整に関する基礎知識を問うものです。
杖の目的は、支持基底面を広げ、体重を分散させ、バランスを安定させることです。特に片麻痺や疼痛がある場合、適切な杖の使用方法は転倒予防に直結します。
1.
核心概念の分析 (Key Concept)
この問題の核心は、
杖 (Cane) と
歩行補助具 (Walking Aids) の基本原理です。
杖は、支持が必要な下肢(麻痺側や疼痛側)と反対側の手で持つことで、歩行時の三点支持を可能にし、重心を安定させます。これは、人間の歩行が左右交互の動きであることに基づいています。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 正解は
①番の「杖は麻痺側または痛みのある側と反対の手で持つ」 です。
杖を
健側(反対側)の手で持つことで、杖と患側の下肢が同時に前方へ出る「交互歩行」が可能になります。これにより、体重が杖と健側の下肢に分散され、患側への負担が軽減し、安定した歩行が実現します。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 各誤答の間違いポイントを解説します。
②番の「杖の長さは床から大転子までの高さとする」は
誤りです。杖の長さの基準は、
床から手首のしわ(尺骨茎状突起)までの高さ、または
立位で肘関節が約20~30度屈曲する長さが正解です。大転子は股関節の目安であり、杖の長さには用いません。
③番の「杖は利き手側で持つ」は
誤りです。杖は利き手ではなく、
支持が必要な下肢と反対側の手で持ちます。利き手がたまたま反対側であれば良いですが、原則ではありません。
④番の「杖は両手で持つことができる軽量なものを選ぶ」は
誤りです。杖は原則として片手で持つ歩行補助具です。
混同注意! 両手で持つものは「歩行器 (Walker)」や「松葉杖 (Crutches)」です。
⑤番の「杖は麻痺側または痛みのある側と同じ手で持つ」は
誤りです。この持ち方では、患側と杖が同じ側になり、支持基底面が狭くなり不安定です。むしろ患側に体重がかかりやすく、疼痛が増強したり転倒リスクが高まります。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts)
杖の長さ調整と歩行パターンを整理します。
| 項目 | 正しい知識 | 誤った知識 |
|---|
| 杖の長さ | 床~手首のしわ (尺骨茎状突起) | 床~大転子 |
| 杖を持つ手 | 支持が必要な下肢と反対側 (健側) | 利き手側、または患側と同じ手 |
| 基本歩行パターン | 杖と患側下肢を同時に出す | 杖と健側下肢を同時に出す |
概念整理: 杖による歩行補助の基本原理は「三点支持」と「交互歩行」です。支持が必要な側(麻痺側・疼痛側)の下肢を、反対側の手で持った杖と同時に動かすことで、体重を3点(両足+杖)で支え、安定性を高めます。
一目で比較!:
| 歩行補助具 | 持ち方 | 主な適応 |
|---|
| 杖 (Cane) | 片手(反対側) | 軽度の麻痺・疼痛・バランス障害 |
| 松葉杖 (Crutches) | 両手(腋窩支持) | 片足非荷重・骨折術後 |
| 歩行器 (Walker) | 両手 | 重度のバランス障害・筋力低下 |
看護過程ポイント:
アセスメントでは、患者の筋力、バランス能力、麻痺の程度、疼痛の有無を評価します。
計画・実施では、杖の長さを適切に調整し、正しい持ち方と歩行パターン(杖→患側→健側の順)を指導します。
評価では、歩行時の安定性、疼痛の有無、転倒リスクを再評価します。
暗記のコツ: 「杖は『反対側』で持つ」と覚えましょう。「痛い方の足と反対の手で杖を持つ」=「杖は健側で持つ」。語呂合わせ:「痛い足を助ける杖、反対の手でしっかりと」。
国試頻出ポイント: 杖の持ち方と長さは、
老年看護学および
基礎看護学の「歩行補助具」の項目で頻出です。特に「麻痺側と反対側の手」というキーワードは毎年必ず確認される知識です。
出題パターン注意!: 単純な知識問題(今回のような〇×問題)だけでなく、事例問題として「70代男性、右片麻痺。杖歩行の指導で適切なのはどれか」のように出題されることが多いです。