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高齢者の生活を支える看護
問題

認知症のない80歳の男性。妻と2人暮らし。歩行は安定しているが、最近物忘れが増えたと妻が心配している。生活アセスメントで最も優先して評価すべき項目はどれか。

解説
物忘れの増加がみられる高齢者では、手段的日常生活動作 (IADL) の評価が優先される。IADLは買い物、食事の準備、金銭管理、服薬管理などの複雑な生活行為であり、認知機能の低下が最初に現れる領域である。基本的日常生活動作 (BADL) は維持されていても、IADLの低下が早期発見につながる。
同じテーマの次の問題75歳の女性。要介護1で自宅で一人暮らしをしている。訪問看護師が初回訪問時に生活アセスメントを行うことになった。生活アセスメントの目的として最も適切なのはどれか。

詳細解説

核心解説 この問題は、認知機能低下が疑われる高齢者に対する生活アセスメントの優先順位を問うています。特に、認知症 (Dementia)の早期発見と支援においては、基本的日常生活動作 (BADL: Basic Activities of Daily Living)よりも、より高次の複雑な生活行為である手段的日常生活動作 (IADL: Instrumental Activities of Daily Living)の評価が極めて重要です。物忘れなどの認知機能低下は、まず複雑な判断や計画を要するIADLに影響を及ぼすため、ここに着目することで早期のアセスメントが可能となります。 正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 認知機能が低下すると、まず影響が出るのがIADLです。買い物、食事の準備、金銭管理、服薬管理、電話の使用、交通機関の利用などは、記憶、遂行機能、計画性といった複数の認知機能を必要とします。歩行が安定している本例では、BADLは保たれている可能性が高いため、IADLの評価を優先することで、具体的な支援ニーズ(例:買い物支援、服薬管理の見守り)を早期に把握できます。これは認知症の段階を評価する上で臨床的に最も優先されるアセスメント項目です。 誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 経済的収入額は生活全体の基盤ですが、今回の「物忘れ」という主訴に直接的に優先される初期アセスメントではありません。支援が必要となった後の社会資源活用の検討段階で評価します。
② 既往歴の詳細は重要ですが、現在の認知機能低下のアセスメントに直接つながるIADL評価が優先されます。既往歴の聴取は診療情報の一部として行いますが、生活機能の評価としてはIADLが先です。
③ 趣味の有無は生活の質 (QOL) の評価や活動性を知る上で有用ですが、今回の「物忘れによる生活への影響」を直接評価する項目としてはIADLが優先されます。
混同注意! 排便の回数と性状は、便秘や下痢といった身体症状の評価であり、認知機能低下に伴う生活機能障害を直接評価するものではありません。排泄ケアが必要になった後のアセスメント項目です。 関連概念の整理 (Related Concepts)
IADLとBADLの違いを明確に理解しましょう。BADLは「食事・更衣・移動・排泄・入浴」といった基本的な身の回りの動作で、認知症が進行しても比較的長く維持されることが多いです。一方、IADLは「金銭管理・買い物・食事の準備・服薬管理」などで、認知機能低下の最も初期のサインが現れやすい領域です。評価尺度としては老研式活動能力指標LawtonのIADL尺度が有名です。
概念整理: IADL(手段的日常生活動作)vs BADL(基本的日常生活動作)
IADLは認知機能に依存する複雑な生活行為であり、認知症の早期発見に必須の評価項目です。BADLは基本的な身体機能に依存し、比較的後期まで維持されます。この問題では、両者の概念を明確に区別し、認知機能低下時の優先アセスメントを問うています。
一目で比較!:
評価項目内容認知症との関連
BADL食事、更衣、移動、排泄、入浴進行期まで比較的維持されやすい
IADL買い物、金銭管理、服薬管理、食事の準備早期に低下しやすく、スクリーニングに有用

看護過程ポイント: アセスメント段階では、主訴(物忘れ)から「認知機能低下による生活への影響」をアセスメントするために、IADLの評価を優先。その後、評価結果に基づいて「非効果的健康維持(Non-effective Health Maintenance)」や「セルフケア不足(Self-Care Deficit)」などの看護診断を検討します。
暗記のコツ: 「認知症の初期は、IADL(アイアドル)から落ちる!」と覚えましょう。「I(家事や電話などの Instrumental)」が先にできなくなり、その後に「B(Basic:食べる・着替える)」ができなくなる、という順番です。
国試頻出ポイント: 認知症の早期発見と生活機能評価の問題は頻出です。特に、IADLの具体的な項目(買い物、金銭管理、服薬管理)を問う問題や、IADLとBADLのどちらが先に低下するかを問う問題が出題されやすいです。
出題パターン注意!: 単純な知識問題として「IADLとは何か」を問うものから、事例問題として「認知症が疑われる高齢者のアセスメントとして最も優先すべき項目は?」という形で、判断力を問う出題が増えています。事例のキーワード(例:物忘れ、金銭管理ができない、買い物に失敗する)をIADLの評価に結びつける力が重要です。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario)
80歳男性、妻と2人暮らし。物忘れが気になり来院。歩行は安定しており、食事や入浴などのBADLは自立しています。しかし妻によると「最近、薬を飲み忘れることが増えた」「スーパーで買い物をしても、何を買うか忘れて何も買わずに帰ってくることがある」とのこと。あなたは訪問看護師として初回訪問を行います。生活アセスメントとして、何を最も優先して評価しますか? 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)
観察 → アセスメント → 報告 → 介入 → 評価の流れ
1. 観察とアセスメント: まず、IADLの各項目(買い物、金銭管理、服薬管理、食事準備、電話使用、交通機関利用)を具体的に聴取します。「週に何回買い物に行くか」「お金の管理は誰がしているか」「薬の管理はできているか」などを尋ねます。また、Mini-Cog長谷川式簡易知能評価スケール (HDS-R)などの認知機能スクリーニング検査も併用します。
2. 報告: アセスメント結果を担当医やケアマネジャーとSBARで共有します。特に「IADLのどの項目に低下がみられるか」を具体的に報告します。
3. 介入: IADLの低下に応じた具体的な支援を計画します。例:服薬管理が困難であれば、一包化調剤服薬カレンダーの導入を提案。買い物が困難であれば、配食サービス訪問販売の利用を検討します。
4. 評価: 介入後、IADLの各項目が改善したか、または悪化していないかを定期的に再評価します。 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)
最重要! IADL低下の背景に、認知症以外の原因(せん妄、うつ病、身体疾患、薬剤の副作用)がないかも必ずアセスメントします。また、金銭管理の低下は詐欺被害につながるリスクがあります。患者と家族への金銭管理に関する指導と、必要に応じて成年後見制度の情報提供も視野に入れましょう。転倒リスクはBADLが保たれていてもIADL低下に伴い増加する可能性があるため、環境調整も忘れずに行います。
看護プロトコル: 観察項目:IADL各項目の自立度(完全自立、一部介助、全介助)、認知機能スクリーニングスコア、家族の主観的負担感。報告基準(SBAR):状況(S)「物忘れによるIADL低下あり」、背景(B)「80歳男性、認知症疑い」、アセスメント(A)「服薬管理と買い物に支援が必要」、推奨(R)「一包化調剤の提案と配食サービスの導入検討を」。記録のポイント:具体的なエピソード(いつ、どこで、何ができなかったか)を記載。家族への説明:IADL低下は認知症の初期症状である可能性があること、早期の支援が生活の質維持につながることを伝えます。
先輩看護師の一言: 「認知症の診断がつく前の『もの忘れ』の段階から、私たち看護師が生活に目を向けて支援できることが本当に大切です。BADLが自立しているからといって安心せずに、『買い物や薬の管理はどうですか?』と聞く習慣をつけましょう。その一言が、患者さんの生活の安全を守る第一歩です!」

重要概念

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