核心解説
この問題は、
慢性閉塞性肺疾患(COPD: Chronic Obstructive Pulmonary Disease)の患者に対する日常生活指導のうち、最も適切なものを問うています。COPDは、気流閉塞(Airflow Limitation)が進行性に悪化する疾患であり、呼気時に気道が虚脱しやすくなることが病態の核心です。このため、呼吸を効率的に行うためには、
呼気を意識的に延長し、気道内圧を維持することが重要です。
正解である「歩行時は息を吐くことに意識を向けるよう指導する」は、この病態生理に基づいた指導です。歩行時などの労作時に、息を吐くことに集中することで、
口すぼめ呼吸(Pursed-lip Breathing)が自然と促され、気道内圧が上昇し、末梢気道の虚脱を防ぎます。これにより、一回換気量(Tidal Volume)が増加し、呼吸困難(Dyspnea)の軽減と効率的な歩行が可能になります。
他の選択肢は、COPDの病態や生活指導の原則に反する内容を含んでいます。
概念整理
* **COPDの病態**: 慢性気管支炎(Chronic Bronchitis)と肺気腫(Pulmonary Emphysema)が混在。肺胞の破壊と気道の炎症により、呼気時の気道虚脱(Air Trapping)が生じる。
* **口すぼめ呼吸(Pursed-lip Breathing)**: 口をすぼめてゆっくり息を吐く呼吸法。気道内圧を維持し、呼気を延長することで、機能的残気量(FRC)の増加を防ぎ、呼吸仕事量(Work of Breathing)を軽減する。
* **生活指導の原則**: 省エネルギー(Energy Conservation)と呼吸法の習得が中心。入浴は浴槽よりシャワー、食事は少量頻回食、衣服はゆったりとしたものを選ぶ。
一目で比較!
| 呼吸法 | 特徴 | COPDへの適応 |
| 口すぼめ呼吸 | 吸う:鼻 / 吐く:口(すぼめて) | 最重要! 呼気延長による気道虚脱予防。労作時の息切れ軽減に有効。 |
| 横隔膜呼吸(腹式呼吸) | 腹部を膨らませながら吸い、凹ませながら吐く | 横隔膜の可動域を広げ、換気効率を向上。COPD患者では口すぼめ呼吸と併用されることが多い。 |
看護過程ポイント
* **アセスメント**: 患者の呼吸パターン(吸気/呼気時間比)、SpO2、Borg Scaleによる呼吸困難度、ADL動作時の息切れの程度を評価する。
* **看護診断**: 看護診断(Nursing Diagnosis)としては「非効果的気道クリアランス」「非効果的呼吸パターン」「活動耐性低下」などが該当する。
* **計画・実施**: 個々の患者のADLに合わせた具体的な動作指導(例:歩行時は「1,2,3」で吸って、「1,2,3,4,5,6」で吐く)と、省エネルギー動作(例:着替えは座位で行う)の指導を計画する。
* **評価**: 指導後の呼吸困難の改善度、歩行距離の延長、日常生活動作の自立度の変化を評価する。
暗記のコツ
「COPDは"吐く"が大事!」と覚えましょう。気道が狭くなる(閉塞する)病気なので、息をスムーズに吐き出すことが治療の要です。口すぼめ呼吸は「ロウソクの火を消さずに揺らすように、細く長く息を吐く」イメージで指導します。
国試頻出ポイント
COPDの生活指導は、ほぼ毎年何らかの形で出題されます。特に「口すぼめ呼吸」「省エネルギー動作(入浴はシャワー、食事は少量頻回、衣服はゆったり)」は必須知識です。酸素療法(在宅酸素療法: HOT)の指導と併せて、低流量(Low Flow)での投与(
高流量はCO2ナルコーシス(CO2 Narcosis)のリスク)も頻出なので、関連付けて学習しましょう。
出題パターン注意!
本問のような「正しい生活指導を選べ」という単純な知識問題に加えて、「在宅でCOPD患者の訪問看護に行った際、呼吸困難を訴えている。最初に行うべきことは?」といった状況設定問題で、SpO2測定、体位変換(前傾座位: Forward Leaning Position)、口すぼめ呼吸の促しの優先順位を問われることもあります。