こんな問題があと800問挑戦 ›
脳・神経機能障害のある患者の看護
くも膜下出血後、軽度の記憶障害と易怒性が残存する患者が職場復帰を希望している。看護師の対応として最も適切なのはどれか。
-
1
症状が完全に消失するまで復職を延期するよう指導する
-
2
易怒性が問題となるため、復職は困難であると伝える
-
3
記憶障害に対して薬物療法の追加を提案する
-
4
復職を強く勧め、社会参加を促す
-
5
復職後の具体的な業務内容や勤務形態について主治医と相談する機会を設ける
✓ 正解
解説
高次脳機能障害がある患者の復職支援では、症状と業務内容の適合性を評価し、職場との調整を行うことが重要である。主治医や職場の産業医と連携しながら、段階的な復職を検討する。
同じテーマの次の問題脳卒中により右片麻痺と失語症がある患者の退院調整において、看護師が最初に優先して評価すべき項目はどれか。この問題が収録された問題集成人看護学KRW 12,900
核心解説
この問題は、高次脳機能障害 (Higher Brain Dysfunction) の患者に対する職場復帰(復職)支援の看護を問うています。くも膜下出血 (Subarachnoid Hemorrhage, SAH) 後遺症としての軽度の記憶障害と易怒性は、患者の社会復帰における大きな障壁となります。重要なのは、症状を単に否定したり、無理に促したりするのではなく、残存する機能と障害をアセスメントし、患者・家族・職場・医療チームが連携して具体的な調整を行うことです。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! ⑤「復職後の具体的な業務内容や勤務形態について主治医と相談する機会を設ける」が最も適切です。高次脳機能障害では、症状の完全消失を待つのではなく、障害と業務内容の適合性 (Job Matching) を評価し、段階的な復職計画を立てることが基本です。主治医、場合によっては産業医や職場の上司との情報共有・調整の機会を設けることは、患者の安全な社会復帰を促進する看護師の重要な役割です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①「症状が完全に消失するまで復職を延期するよう指導する」: 混同注意! 高次脳機能障害の症状は完全に消失しないことも多く、回復期以降は社会参加を通じて改善することもあります。延期だけでは患者の社会復帰の機会を奪う可能性があります。
②「易怒性が問題となるため、復職は困難であると伝える」: 看護師が一方的に復職困難と判断するのは不適切です。障害と業務内容を調整することで復職可能な場合もあります。患者の希望を否定せず、支援の方向性を探るべきです。
③「記憶障害に対して薬物療法の追加を提案する」: 高次脳機能障害の記憶障害に対する特効薬はなく、薬物療法だけでは根本的な解決になりません。看護師が薬物療法の追加を提案するのは役割を超えています。
④「復職を強く勧め、社会参加を促す」: 患者の障害や業務の負担を考慮せずに復職を強く勧めるのは危険です。挫折や二次的な精神障害(うつ病など)を引き起こす可能性があります。
関連概念の整理 (Related Concepts)
高次脳機能障害の主な症状: 記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害(易怒性、無関心、脱抑制など)。これらの症状は外見からはわかりにくく、混同注意! 認知症 (Dementia) と誤解されることもあります。復職支援では、職場での周囲の理解と配慮、段階的な業務負荷の調整が不可欠です。また、高次脳機能障害者支援法に基づく相談支援も活用できます。
概念整理: 高次脳機能障害の復職支援の核心は、障害の特性に合わせた職務調整とチーム連携。症状の完全消失を待つのではなく、残存能力を活かせる環境を整えることが重要。
一目で比較!:
| 項目 | 高次脳機能障害 | 認知症 (Dementia) |
|---|
| 発症経過 | 急性発症(脳血管障害・頭部外傷後) | 緩徐進行性 |
| 主な症状 | 記憶障害、注意障害、易怒性、感情コントロール障害 | 記憶障害、見当識障害、人格変化、行動・心理症状 (BPSD) |
| 経過 | 一定の回復が期待できることが多い | 進行性・不可逆的 |
| 復職支援の考え方 | 障害と業務の適合性を評価し、段階的復職を支援 | 就労は困難な場合が多く、社会参加の場の調整が中心 |
看護過程ポイント: アセスメントでは、記憶障害の程度(新しい記憶の保持、手順の記憶)、易怒性の誘因(疲労、混乱、刺激の過多)、患者の復職に対する具体的な希望と不安を評価。看護診断は「役割遂行の非効果的 (Ineffective Role Performance)」や「転倒リスク (Risk for Falls)(注意障害による)」など。計画では、職場との情報共有(業務内容、勤務時間、周囲の理解)、段階的な復職スケジュールの調整、家族の協力体制の構築を含む。
暗記のコツ: 高次脳機能障害の復職支援は「3つのC」: Communication(チーム連携)、Coordination(調整)、Consideration(配慮)。
国試頻出ポイント: 高次脳機能障害患者の社会復帰支援では、看護師の役割として「主治医や職場との調整」「段階的な復職計画」「症状に合わせた業務内容の工夫」が頻出。単純な「復職を勧める」「延期する」という二者択一ではなく、具体的な調整過程を問う問題が出やすい。
出題パターン注意!: 単純な知識問題から、「事例: くも膜下出血後、記憶障害と易怒性がある患者。復職を希望。看護師の対応として適切なのはどれか」のような状況設定問題で、正解の選択肢が「主治医と産業医、職場と相談する」のような具体的な連携行動であることが多い。
臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)30代男性、くも膜下出血(SAH)発症後6ヶ月、リハビリ病院から外来通院中。軽度の記銘力低下(新しいことを覚えられない、約束を忘れる)と、予定外の変更があるとイライラして声を荒げてしまう易怒性が残存。現在は休職中で、職場復帰を強く希望している。家族は「まだ早いのでは」と心配している。
看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)1. 観察・アセスメント: 具体的な記憶障害の内容(新しい指示の保持、複数作業の同時処理)、易怒性の誘因(疲労感、マルチタスク、予定変更)、患者の復職に対する具体的なイメージ(元の仕事内容、希望する勤務時間)を聴取。2. チーム連携: 主治医(リハビリ科医)に患者の希望を伝え、復職に向けた就労可能な状態か評価を依頼。必要に応じて、精神科医や医療ソーシャルワーカー(MSW)にも相談。3. 職場との調整の準備: 患者に、主治医から職場(上司、人事、産業医)への情報提供の同意を得る。職場の産業医や上司と連絡を取り、障害の特性と配慮事項(例えば「段階的な業務量の増加」「口頭指示はメモで補う」「クールな職場環境を整える」など)を伝える機会を設定。4. 患者・家族への支援: 家族には、復職が焦りや過度な負担にならないよう、段階的な復職(週2〜3日から始める、残業禁止など)の意義を説明。患者には、易怒性への対処法(タイムアウト、リラクゼーション法)を一緒に考え、自己管理を促す。最重要! 復職初日からフルタイム勤務を想定せず、段階的復職 (Gradual Return to Work) が安全かつ持続可能な復帰の鍵。患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)- 危険所見! 復職後に疲労が強く、易怒性や記憶障害が悪化する場合、二次的なうつ病発症のリスクがある。早期発見のために、定期的なフォローアップの重要性を説明。
- 職場での事故防止: 注意障害がある場合、高所作業や危険な機械操作は当面避けるよう、職場と調整する。
- 家族へのサポート: 患者の易怒性による家族の介護負担(心理的負担)にも配慮し、必要に応じて家族会や相談窓口を紹介。
看護プロトコル: 観察項目は、記憶障害の具体的内容(新しい指示の保持、数分前の会話の想起)、易怒性の頻度と誘因、睡眠・休息状態。報告基準(SBAR): Situation「患者が復職を希望しています」→ Background「SAH後、軽度の記憶障害と易怒性が残存」→ Assessment「職場との調整が必要な状態」→ Recommendation「主治医と職場との面談調整の機会を設けたい」。
先輩看護師の一言: 「高次脳機能障害は見えにくい障害です。患者さんは『頭がぼんやりする』『疲れやすい』と訴えても、外見は普通に見えるため、職場の理解を得るのが難しいことがあります。看護師は、客観的な情報を整理してチームや職場に伝える『橋渡し役』です。単に『復職させましょう』『延期しましょう』ではなく、『どんな仕事ならできそうか、どんな配慮が必要か』を具体的に考えることが、患者さんの自立支援につながります!」
- 高次脳機能障害 — 脳損傷後に生じる認知機能障害の総称。記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害など。外見からはわかりにくく「見えない障害」とも呼ばれる。
- 復職支援 — 病気や障害からの社会復帰を支援するプロセス。障害の評価、業務内容の調整、職場環境の整備、段階的な復職計画、医療・職場・家族の連携が重要。
- 易怒性 — 些細な刺激で怒りっぽくなる状態。高次脳機能障害の社会的行動障害の一つ。疲労や混乱、刺激過多が誘因となる。
- 段階的復職 (Gradual Return to Work) — いきなりフルタイムで復職するのではなく、勤務時間や業務量を徐々に増やしながら職場に適応していく方法。再発予防と持続可能な社会復帰に有効。
- 産業医 — 職場の労働者の健康管理を担当する医師。高次脳機能障害者の復職時には、職場の業務内容と障害の適合性を評価し、就労配慮を指示する重要な役割を担う。
MyMerciで看護師国家試験を完全対策
過去問と詳しい解説を無料で。弱点を分析し、進捗を管理してより効率的に学習しましょう。
無料で始める
学習参考用です。実際の臨床は最新のガイドラインと所属機関のプロトコルに従ってください。