核心解説
この問題は、
白内障 (Cataract) 手術後の高齢者の
視覚障害 (Visual Impairment) と生活指導に関する知識を問うています。白内障手術によって混濁した水晶体が除去され視力は改善しますが、加齢に伴う
暗順応 (Dark Adaptation) の低下 や
調節力 (Accommodation) の喪失 は残存するため、夜間の視環境に合わせた安全な行動を支援することが看護の役割です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 本問の患者は「暗くて足元が見えにくい」という具体的な生活上の困難を訴えています。白内障術後であっても、加齢による
暗順応の遅延 や
網膜感度の低下 は完全には改善しません。そのため、
携帯用の懐中電灯 (Flashlight) を持ち歩くことで、足元や周囲の視認性を高め、
転倒 (Fall) 予防 につなげることができます。これは患者の
Quality of Life (QOL) を維持しながら安全を確保する、根拠に基づく看護介入です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意!
①番:眼科で再検査を受けるよう強く勧める → 手術後で視力自体は改善しており、急を要する異常が示唆されているわけではありません。まずは生活環境の調整で対応可能な範囲であるため、「強く勧める」のは過剰な介入です。
③番:明るい色の服装を勧める → 夜間の視認性(他の人から見えやすくなる)には有効ですが、患者自身の「足元が見えにくい」という問題の解決にはなりません。
④番:夜間の外出を完全に控えるよう勧める → 患者の社会的活動やQOLを著しく低下させる可能性があり、転倒リスクだけを理由に行動制限をするのは適切ではありません。環境調整や補助具の活用を優先すべきです。
⑤番:白い杖を使用するよう指導する →
白い杖 (White Cane) は、
視覚障害 (Visual Impairment) が重度で、歩行に著しい支障がある場合に適応される補助具です。本問の患者は「暗い場所で見えにくい」という限定的な状況であり、日常的に白い杖を必要とする状態とは異なります。
関連概念の整理 (Related Concepts)
白内障術後の視機能の変化を理解する上で、
混同注意! 以下の点を押さえましょう。
-
水晶体摘出 (Lens Extraction) により調節力は完全に失われるため、遠近両用の眼鏡が必要。
- 術後の
後発白内障 (Posterior Capsular Opacification) では再び視力低下をきたすことがあり、その場合は
YAGレーザー後嚢切開術 (YAG Laser Capsulotomy) が行われる。
- 加齢性の
黄斑変性 (Macular Degeneration) や
緑内障 (Glaucoma) を合併している場合は、術後も視野障害や視力低下が残存する可能性がある。
概念整理: 白内障術後の主な視機能変化は
調節力消失 と
暗順応低下。夜間の転倒リスクが高まるため、環境調整(照明確保・段差の除去)と補助具(懐中電灯)の活用が安全な生活に不可欠。
一目で比較!:
| 補助具 | 適応 |
|---|
| 携帯用懐中電灯 | 暗順応低下による夜間の視認性低下 |
| 白い杖 | 重度視覚障害(光覚弁~手動弁)による歩行補助 |
| 拡大鏡 | ロービジョン(低視力)時の読書・細かい作業 |
看護過程ポイント:
アセスメント:患者の訴える「見えにくさ」の状況(時間帯・場所・活動内容)を具体的に聴取。術後の経過(視力値・合併症の有無)を確認。
計画:夜間の安全な移動方法を患者と共に検討し、転倒予防策(環境整備・補助具)を立案。
実施:懐中電灯の使用方法を実演し、実際に夜間歩行をシミュレーション。
評価:「夜間の外出が安全にできるようになったか」「転倒が生じていないか」を確認。
暗記のコツ: 「白内障術後 = 調節力ゼロ + 暗いところが苦手」。暗いところには「懐中電灯」と覚えましょう。「白い杖 = 重度の視覚障害」とセットで暗記。
国試頻出ポイント: 高齢者の視覚障害と転倒予防は、
老年看護学 と
在宅看護論 の分野で頻出。単に「転ばせない」ではなく、「安全に活動できるように支援する」視点が求められます。
出題パターン注意!: 本問は単純な知識問題ですが、事例問題では「夜間に自宅内で転倒した高齢患者」の事例から、看護計画や環境整備の優先順位を問う形に発展します。