核心解説
この問題は、
インスリンポンプ (Continuous Subcutaneous Insulin Infusion: CSII) 療法を導入した糖尿病患者への看護指導の適切性を問うています。CSIIは、携帯型のポンプを用いてインスリンを24時間持続皮下注入する治療法で、
生理的なインスリン分泌パターンを模倣し、血糖コントロールの向上を目指します。しかし、機械の故障やカテーテルの閉塞・屈曲によりインスリン注入が中断するリスクがあり、
最重要! 高血糖やケトアシドーシス(Diabetic Ketoacidosis: DKA)の危険性があるため、患者自身がバックアッププランを理解していることが必須です。
1.
核心概念の分析 (Key Concept): CSII療法の最大のリスクは、何らかの原因によるインスリン注入の中断です。そのため、患者はポンプの基本的な操作(一時的な中断、再開、基礎注入率の一時変更など)を安全に行えること、そしてトラブル発生時に代替手段(インスリン注射)を用いて自己対処できることが求められます。また、感染予防のためのカテーテル交換や、ポンプの防水性能の理解も重要です。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale): 選択肢①「ポンプのトラブル時に備え、インスリン注射器を常に携帯する。」が適切です。ポンプの故障やカテーテルトラブルでインスリンが注入されなくなった場合、
速やかに自己注射でインスリンを補う必要があります。これにより、高血糖やケトーシスの進行を防ぐことができます。患者には、ペン型注入器や注射器とインスリン製剤を常時携帯するよう指導します。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
- ②番:
混同注意!「ポンプ装着中は入浴やシャワーを浴びることができない。」→ 多くの最新のインスリンポンプは
防水仕様(IPX7やIPX8など)であり、装着したまま入浴やシャワーが可能です。ただし、長時間の潜水などは避けるよう指導します。機種によっては取り外しが必要な場合もあるため、個別の取扱説明書に従う必要があります。
- ③番: 「ポンプの設定変更はすべて医師が行うため、患者は触ってはいけない。」→ 誤りです。患者は自己管理の一環として、食事量や運動量に応じて
一時的な基礎注入率の変更や追加注入(ボーラス)を自分で行えるよう、医師や看護師から指導を受けます。すべての設定を医師に頼ることは、患者のセルフケア能力を損ないます。
- ④番: 「ポンプを使用すれば血糖測定は不要になる。」→
混同注意! 絶対に誤りです。CSII療法の効果を評価し、
低血糖や高血糖を早期に発見するため、血糖自己測定(Self-Monitoring of Blood Glucose: SMBG)は必須です。ポンプはあくまでインスリン注入装置であり、血糖値を自動測定するものではありません(一部のハイブリッド型システムを除く)。1日4回以上の測定が推奨されます。
- ⑤番: 「ポンプのカテーテルは1週間に1回交換すればよい。」→ 誤りです。感染予防とインスリンの安定した吸収のために、
カテーテルと注入部位は通常2~3日ごと(72時間以内)に交換する必要があります。1週間の装着は、局所感染や脂肪萎縮(Lipodystrophy)のリスクを高めます。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts): CSII療法は、頻回注射法(Multiple Daily Injections: MDI)と比較して、より柔軟なインスリン調整が可能ですが、トラブル時のリスクも高いことを理解する必要があります。また、近年は
持続血糖モニター (Continuous Glucose Monitoring: CGM) と連動した
センサー強化型ポンプ (Sensor-Augmented Pump: SAP) や、自動的にインスリン注入を調整する
ハイブリッドクローズドループシステム も登場しており、これらの最新デバイスの特徴も国試で問われる可能性があります。
概念整理: CSII療法(インスリンポンプ)の看護の核心は、
安全な自己管理支援です。患者はポンプ操作の基本(ボーラス、中断・再開)を理解し、トラブル時の対応(注射器携帯、カテーテル交換、高血糖時の対応)を習得している必要があります。また、ポンプに過信せず、血糖測定と記録を継続する重要性を指導します。
一目で比較!:
| 項目 | CSII (インスリンポンプ) | MDI (頻回注射) |
|---|
| インスリン注入方法 | 持続皮下注入 + ボーラス | 1日数回の皮下注射 |
| 最大のメリット | 生理的インスリン分泌に近似 | 機器がシンプルで安価 |
| 最大のリスク | 注入中断によるDKA | 注射手技の問題(痛み、硬結) |
| 患者の役割 | 高度な自己管理能力が必要 | 比較的管理が容易 |
看護過程ポイント:
-
アセスメント: 患者のセルフケア能力(認知機能、手指の巧緻性、血糖測定・記録の習慣)、ポンプに対する理解度、注入部位の状態(発赤、硬結、感染徴候)。
-
看護診断:
非効果的健康維持 (Ineffective Health Maintenance)、
危険性のある自己管理 (Risk for Ineffective Self-Health Management)、
感染リスク状態 (Risk for Infection)。
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計画・実施: ポンプ操作とトラブル対応の指導、カテーテル交換手順の指導(無菌操作の徹底)、低血糖・高血糖の症状と対応の指導、緊急連絡先の確認。
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評価: 患者が正しく自己管理できているか、血糖コントロール状態(HbA1c、血糖日内変動)、注入部位の感染兆候の有無。
暗記のコツ: 「ポンプは相棒、でも過信は禁物!」と覚えましょう。ポンプは便利ですが、あくまで機械です。故障した時の「保険(=注射器)」を常に持ち歩くことが安全の鍵です。また、「カテーテルは2~3日(みっか)ごと」と語呂合わせで覚えましょう。
国試頻出ポイント: CSII療法では、トラブル時の対応(特にインスリン注射器の携帯)と、カテーテル交換の頻度が頻出です。また、「ポンプ=血糖測定不要」という誤った認識を正す問題もよく出ます。状況設定問題では、ポンプのアラームが鳴った時の対応や、高血糖が持続する患者への介入が問われることがあります。
出題パターン注意!: 「ポンプを使用中の患者が、『ポンプの調子がおかしい』と訴えた。まず看護師が行うべきことは?」という事例問題では、
血糖測定(高血糖の有無を確認)が最優先となります。その後、ポンプのカテーテルやリザーバーの確認、トラブルシューティングへと進みます。