栄養代謝機能障害のある患者の看護
問題
中心静脈栄養 (TPN) を実施中の患者に発熱とカテーテル挿入部の発赤が認められた。看護師の最初の対応として最も適切なのはどれか。
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1
カテーテル先端の培養検査を提出する
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2
発熱の程度を観察し、解熱剤を投与する
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3
直ちに点滴を中止し、カテーテル関連血流感染を疑う
✓ 正解
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4
カテーテル挿入部のガーゼ交換を強化する
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5
すぐにカテーテルを抜去する
解説
中心静脈カテーテル挿入中の発熱と挿入部の発赤は、カテーテル関連血流感染 (CRBSI) を強く疑う所見である。まず点滴を中止し、感染の有無を評価する。カテーテル抜去や培養は医師の指示が必要であり、解熱剤投与やガーゼ交換は原因治療にはならない。
詳細解説
核心解説
この問題は、中心静脈栄養 (Total Parenteral Nutrition, TPN) 実施中の患者における カテーテル関連血流感染 (Catheter-Related Bloodstream Infection, CRBSI) の初期対応を問うています。TPNは高カロリー輸液であるため、細菌にとって格好の増殖培地となり、感染のリスクが非常に高い治療法です。発熱とカテーテル挿入部の発赤は、局所感染から全身性の血流感染へと進展している可能性を示す重大な警告サイン (Warning Sign)です。看護師の最初の対応として最も重要なのは、感染源である可能性が高いTPNの投与を直ちに中止し、カテーテル関連血流感染を疑うことです。これは患者の安全を最優先するための生命に関わる判断です。
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! ③「直ちに点滴を中止し、カテーテル関連血流感染を疑う」が正解です。中心静脈カテーテル (Central Venous Catheter, CVC) 挿入中の発熱と挿入部の発赤は、CRBSIを強く示唆する所見です。まず、感染源となっている可能性のある輸液経路を遮断するため、点滴を中止します。その後、速やかに医師に報告し、診断と治療方針(カテーテル抜去の是非、培養検査、抗菌薬投与など)の指示を仰ぎます。この一連の流れが、感染症の重症化を防ぐための初期対応として最も適切です。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! ①「カテーテル先端の培養検査を提出する」は、カテーテル抜去後に医師の指示で行う検査です。看護師の最初の対応として、培養検査の指示を出すことはできません。②「発熱の程度を観察し、解熱剤を投与する」は対症療法であり、感染源への根本的な対応ではありません。発熱は感染の徴候であり、解熱剤で症状を隠すことは診断を遅らせる可能性があります。解熱剤の投与も医師の指示が必要です。④「カテーテル挿入部のガーゼ交換を強化する」は局所の感染予防には重要ですが、すでに発熱という全身症状が出現している状況では不十分です。原因療法にはなりません。⑤「すぐにカテーテルを抜去する」は、最終的な治療選択肢の一つですが、医師の指示が必要な処置です。看護師の裁量で抜去することはできません。
関連概念の整理 (Related Concepts):
CRBSIの予防には、カテーテル挿入時の最大滅菌バリア予防策 (Maximal Sterile Barrier Precautions)、定期的なドレッシング交換、輸液ラインの無菌的操作が不可欠です。また、CRBSIの診断基準としては、末梢血とカテーテル内血液の培養で同じ菌が検出されることや、カテーテル先端培養が陽性となることなどがあります。
概念整理: カテーテル関連血流感染 (CRBSI) は、CVC留置患者における重篤な合併症です。発熱、悪寒、挿入部の発赤・腫脹・排膿などの兆候を見逃さず、早期発見・早期対応が看護師の重要な役割です。対応の第一歩は、感染源を疑った輸液の中止です。
看護過程ポイント:
- アセスメント: バイタルサイン(特に体温、脈拍、血圧)の測定、カテーテル挿入部の観察(発赤、腫脹、圧痛、排膿の有無)、全身状態(悪寒、戦慄の有無)、意識レベルの評価。
- 看護診断: 感染リスク状態 (Risk for Infection) または 感染 (Infection)。
- 計画・実施: 直ちに点滴を中止し医師に報告。医師の指示に基づき、採血(末梢血培養、カテーテル内血培養)、カテーテル抜去、抗菌薬投与を実施。新たな静脈路の確保。
- 評価: 発熱の経過、炎症反応(CRP、白血球数)の推移、全身状態の改善。
国試頻出ポイント: CRBSIの初期対応(点滴中止→報告)、予防策(無菌操作、ドレッシング交換)、診断のための検査(培養検査)がセットで出題されます。看護師の裁量権の範囲(何ができて、何が医師の指示が必要か)を問う問題もよく出ます。
出題パターン注意!: 「TPN管理中に発熱。看護師の対応は?」→ まず点滴中止。一方、「発熱はないが、挿入部に軽度の発赤」→ ガーゼ交換強化と経過観察。このように、症状の重症度によって対応が変わることを理解しておきましょう。
臨床シナリオ
臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario):
ICU勤務の看護師です。長期TPN管理中だった60代の女性が、夜勤帯に39.5℃の発熱と悪寒戦慄を訴えました。カテーテル挿入部(右鎖骨下)を見ると、周囲に発赤と軽度の腫脹が認められます。バイタルサインは、血圧 90/60 mmHg、脈拍 110回/分、SpO2 96%(酸素3L/分投与中)。あなたはどのように対応しますか?
看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment):
1. 観察とアセスメント: 最重要! CRBSIによる敗血症性ショック (Septic Shock) への移行を疑います。血圧低下、頻脈、発熱はその兆候です。直ちに輸液ポンプを止め、生理食塩液に切り替える準備をしつつ、点滴ルートを遮断するためにラインをクランプします。
2. 報告と連携 (SBAR):
- S (状況): 「A病棟のBです。TPN管理中だったCさんが、39.5℃の発熱と悪寒戦慄、カテーテル挿入部に発赤と腫脹があります。」
- B (背景): 「Cさんは、〜の疾患でTPN管理中です。これまで発熱はありませんでした。」
- A (アセスメント): 「CRBSIの可能性が高く、敗血症性ショックに移行するリスクがあります。」
- R (提案): 「点滴を中止しました。カテーテル抜去と血液培養、抗菌薬投与の指示をお願いします。」
3. 介入と準備: 医師の指示を待ちながら、採血セット、培養ボトル、新しい輸液ライン、ドレッシング材を準備します。患者さんの状態を安定させるために、バイタルサインのモニタリングを継続します。
患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions):
- 注意! 絶対に看護師の判断でカテーテルを抜去してはいけません。抜去は医師の指示が必要な処置です。
- 点滴の中止後、新しい末梢静脈ルートを確保し、必要に応じて輸液を継続できるようにします。
- 感染対策として、無菌操作を徹底し、患者さんを個室隔離するなど、二次感染の予防策を講じます。
先輩看護師の一言: 「中心静脈カテーテルは患者さんの命綱である一方、感染の入り口にもなり得る諸刃の剣です。『発熱=感染』と疑い、まず輸液を止める。この一歩が、患者さんを重症化から守る第一歩です。国試でも、現場でも、この判断基準は絶対に忘れないでくださいね。」
重要概念
- カテーテル関連血流感染 (Catheter-Related Bloodstream Infection) — 中心静脈カテーテルなどの血管内カテーテルが原因で発生する血流感染症。発熱、悪寒、カテーテル挿入部の炎症所見が主な徴候。
- 中心静脈栄養 (Total Parenteral Nutrition) — 経口・経腸での栄養摂取が不可能な患者に対して、中心静脈から高カロリー輸液を投与する栄養療法。感染リスクが高い。
- 敗血症性ショック (Septic Shock) — 感染症が重症化し、全身の循環不全をきたした状態。血圧低下、頻脈、意識障害などを呈し、緊急対応が必要。
- 無菌操作 (Aseptic Technique) — 感染を予防するために、清潔な環境で微生物を体内に侵入させないように行う手技。中心静脈カテーテル管理では必須。
- SBAR (Situation-Background-Assessment-Recommendation) — 医療現場での情報伝達を効率的かつ正確に行うためのコミュニケーションツール。状況、背景、アセスメント、提案の順に報告する。
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