核心解説
この問題は、
経腸栄養法 (Enteral Nutrition) 中の合併症である
下痢 (Diarrhea) に対する看護師の優先的な対応を問うています。
経腸栄養中の下痢は、投与速度が速すぎる、濃度が高すぎる、栄養剤の温度が低い、栄養剤の汚染など、様々な要因で発生します。看護師はまず、患者の状態を悪化させない安全な介入から始める必要があります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 経腸栄養中の下痢が発生した場合、最初に行うべき看護介入は
投与量の減量または投与速度を遅くすること(選択肢5)です。これは、消化管に過剰な負担がかかっている可能性が高いためです。投与量を減らしたり速度を遅くすることで、腸管内の浸透圧負荷を軽減し、下痢の原因を取り除きながら経腸栄養を継続できます。患者の全身状態や腹部所見を観察し、改善が見られれば徐々に元の投与量・速度に戻していきます。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
*
混同注意! ①番の「栄養剤の温度を冷たくする」は誤りです。冷たい栄養剤は腸蠕動を亢進させ、かえって下痢を悪化させる原因となります。経腸栄養剤は通常、室温程度(約20~25℃)で投与するのが基本です。
* ②番の「栄養剤の濃度を高くする」は誤りです。濃度を高くすると、腸管内の浸透圧が上昇し、水分が腸管内に引き出されて下痢が悪化します(浸透圧性下痢)。
* ③番の「栄養剤の投与速度を速める」は誤りです。投与速度を速めると、消化管の許容量を超え、一気に腸管内に流れ込むため下痢の原因となります。
* ④番の「栄養剤の種類を高カロリー輸液に変更する」は誤りです。高カロリー輸液(IVH)は経腸栄養が絶対に継続できない場合(腸閉塞など)の最終手段です。まずは経腸栄養を継続する方向で調整すべきです。
関連概念の整理 (Related Concepts)
経腸栄養の合併症には下痢以外にも、
誤嚥 (Aspiration)、
便秘 (Constipation)、
腹部膨満 (Abdominal Distension)、
チューブの閉塞 (Tube Occlusion) などがあります。特に誤嚥性肺炎は生命に関わる重篤な合併症であり、
投与中の頭部挙上(30度以上)と投与後の体位管理は必須です。
概念整理: 経腸栄養中の下痢の主な原因は、投与速度・濃度・温度の不適切さ、または栄養剤の細菌汚染です。まずは安全で調整可能な「投与速度/量の減量」から対応するのが基本です。
一目で比較!:
| 介入 | 下痢への影響 | 根拠 |
|---|
| 投与速度/量の減量 | 改善 | 消化管への物理的・浸透圧的負担を軽減 |
| 濃度を高くする | 悪化 | 高浸透圧による水分の腸管内移動 |
| 温度を冷たくする | 悪化 | 腸蠕動の亢進 |
看護過程ポイント:
アセスメント:下痢の頻度・性状・量、腹部の聴診(腸蠕動音)、腹部の触診(圧痛・膨満)、全身状態(脱水の有無)を観察します。
計画・実施:医師に報告し、指示に基づき投与速度を減速または投与を一時中断します。必要に応じて栄養剤の変更(半消化態→消化態栄養剤など)を検討します。
評価:介入後の下痢の改善状況と、栄養状態の維持(体重、血清アルブミン値など)を評価します。
暗記のコツ: 「経腸栄養の合併症対応の3原則」:
「まずは減らす」(速度を遅く・量を減らす)、
「温める」(冷たいのはダメ)、
「薄める」(濃度は下げる)と覚えましょう。
国試頻出ポイント: 経腸栄養の合併症とその対応は、基礎看護学はもちろん、成人看護学(特に消化器疾患や脳血管障害後の嚥下障害患者の事例)でも頻出です。下痢の原因と看護介入の優先順位を、病態生理と紐付けて理解しておくことが重要です。
出題パターン注意!: 単純な知識問題に加え、「経腸栄養中に下痢が出現した事例」として状況設定問題(例えば、患者のバイタルサインや腹部所見が示され、適切な対応を選ばせる)で出題されることがあります。