核心解説
この問題は、呼吸器外科手術後(特に開胸手術後)の患者における
肺塞栓症 (Pulmonary Embolism, PE)の予防看護を問うています。肺塞栓症は、
下肢深部静脈血栓症 (Deep Vein Thrombosis, DVT)が原因となることが多く、手術による長時間の不動、血管内皮損傷、血液凝固能亢進(Virchowの三徴)がリスクを高めます。予防の基本は、このDVTを発生させないこと、すなわち「下肢の静脈還流を促進し、血流を改善する」ことです。
正解の根拠 (Answer Rationale)
④
フットポンプによる間欠的空気圧迫法 (Intermittent Pneumatic Compression, IPC) は、下肢に装着したカフが定期的に空気で膨張・収縮し、外部から筋肉を圧迫することで
静脈還流を促進します。これにより、うっ滞した血液が心臓へと押し戻され、DVTおよび肺塞栓症の予防に極めて効果的です。特に、全身麻酔後や開胸手術後など早期離床が難しい患者の第一選択となる非薬物的予防法です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①
混同注意! ベッド上での安静の徹底は、逆に下肢の不動による血流うっ滞を招き、DVTのリスクを高めます。肺塞栓症予防の基本は「早期離床」または「受動的な下肢運動」です。
② 経口抗凝固薬の予防的投与は、医師の処方に基づいて実施される治療であり、看護師が単独で判断して実施する対策ではありません。問題は「看護師が実施する対策」を問うています。
⑤
混同注意! 深呼吸と咳嗽の促し(
呼吸理学療法 (Chest Physiotherapy))は、術後の無気肺 (Atelectasis) や肺炎の予防には有効ですが、下肢のDVT予防には直接的な効果はありません。
概念整理
肺塞栓症 (PE) 予防の3本柱は、(1) 薬物療法(医師指示による抗凝固薬)、(2) 機械的予防法(弾性ストッキング、IPC)、(3) 早期離床・下肢運動です。看護師の役割は、(2)と(3)の実践と評価です。
一目で比較!
| 対策 | 目的 | 看護師の判断可否 |
|---|
| 間欠的空気圧迫法 (IPC) | 下肢静脈還流促進 | 可(医師指示の下で実施) |
| 弾性ストッキング | 下肢静脈還流促進 | 可(装着・管理は看護師) |
| 経口抗凝固薬 | 血液凝固抑制 | 不可(医師の処方が必須) |
| 深呼吸・咳嗽 | 肺拡張・分泌物排出 | 可(PE予防には非該当) |
看護過程ポイント
アセスメント: 肺塞栓症のリスク因子(高齢、肥満、悪性腫瘍、下肢静脈瘤、長時間手術、経口避妊薬内服)を術前に評価。下肢の疼痛、腫脹、発赤、Homan徴候(足関節背屈時のふくらはぎ痛)の有無を観察。
計画: IPC装置の適切な装着時間(通常は覚醒中も継続)、弾性ストッキングの圧迫圧(圧迫が強すぎると動脈血流も阻害するため注意)。
評価: IPC装置の動作確認、皮膚の損傷や圧迫痕の有無、患者の不快感の有無。
暗記のコツ
「PE予防は、足の血液を心臓に戻す!機械はIPC(Intermittent Pneumatic Compression)、靴下は弾性ストッキング(ES)」
国試頻出ポイント
肺塞栓症予防は、整形外科手術(股関節・膝関節置換術後)や産婦人科手術後と合わせて頻出。特に「早期離床」と「間欠的空気圧迫法」のどちらがより優先されるかの状況判断が問われる。また、「なぜベッド上安静が禁忌なのか」という病態生理の理解が重要。
出題パターン注意!
単純な知識問題として「予防法はどれか」だけでなく、「肺塞栓症を発症した患者の初期症状(突然の呼吸困難、胸痛、血痰)」や「発症後の看護介入(酸素投与、バイタルサインの厳重監視)」と組み合わせた事例問題が出題される。