核心解説
この問題は、
シスプラチン (Cisplatin) を含む化学療法における看護師の副作用対策を問うています。
催吐性リスクと腎毒性が最も高く、適切な支持療法が治療継続の鍵となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! シスプラチンは抗がん薬の中でも
催吐性リスク (Emetic Risk) が非常に高い(高度催吐性リスク:High Emetic Risk)薬剤に分類されます。そのため、治療開始前からの
制吐剤の予防投与(Preventive Antiemetic Administration) が国際的なガイドラインで標準治療として推奨されています。具体的には、5-HT3受容体拮抗薬(グラニセトロンなど)、ステロイド(デキサメタゾン)、NK1受容体拮抗薬(アプレピタント)の3剤併用療法が基本です。予防的に投与することで、遅発性嘔吐を含む悪心・嘔吐を効果的に抑制できます。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①
混同注意! 末梢神経障害予防のための冷罨法は、
オキサリプラチン (Oxaliplatin) で注意が必要な寒冷誘発性の末梢神経障害(手指や喉の違和感)に対して、寒冷曝露を避ける指導が行われます。シスプラチンでも末梢神経障害は生じますが、冷罨法(冷却)はかえって症状を誘発・悪化させる可能性があり、予防策として推奨されません。
② 骨髄抑制対策としての白血球輸血の準備は適切ではありません。化学療法後の骨髄抑制(好中球減少)に対しては、通常は
G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子) の投与が行われます。白血球輸血(顆粒球輸血)は、重症感染症で抗菌薬が無効な場合など、ごく限られた状況で考慮されるのみで、日常的な予防策ではありません。
③ 脱毛予防のための頭部冷却帽(スカルプクーリング)は、タキサン系薬剤(パクリタキセル、ドセタキセル)やアントラサイクリン系薬剤(ドキソルビシン)で用いられることがあります。シスプラチンでは脱毛は起こり得ますが、冷却帽による予防は標準的ではありません。
④
混同注意! シスプラチンの主な副作用に腎毒性があります。しかし、腎機能保護のために行うべき対策は輸液量の制限ではなく、
十分な輸液負荷(輸液量の増加)とマンニトールなどを用いた強制利尿です。これにより、尿中に排泄されるシスプラチンが尿細管に長時間留まるのを防ぎ、腎障害を軽減します。輸液量制限は逆効果であり、急性腎障害(AKI)のリスクを高めます。
関連概念の整理 (Related Concepts)
シスプラチンの主な副作用として、
腎毒性、高度催吐性、骨髄抑制、聴覚毒性(高音域難聴)、末梢神経障害、低マグネシウム血症があります。特に腎毒性対策として、投与前後の十分な輸液(輸液負荷、Hydration)と尿量モニタリングは必須の看護ケアです。催吐性リスクは薬剤によって異なり(高度:シスプラチン、中等度:カルボプラチン・オキサリプラチン、軽度:ゲムシタビン)、適切な制吐剤の選択が求められます。
概念整理: シスプラチン(Cisplatin)は白金製剤に分類される抗がん薬。副作用対策の基本は「高度催吐性への予防的制吐剤投与」と「腎毒性への輸液負荷+強制利尿」。冷却や輸液制限は逆効果となるケースが多い。
一目で比較!:
| 薬剤 | 主な副作用 | 看護介入 |
|---|
| シスプラチン | 腎毒性・高度催吐性 | 輸液負荷・予防的制吐 |
| オキサリプラチン | 寒冷誘発性末梢神経障害 | 冷罨法・寒冷曝露回避 |
| パクリタキセル | 過敏反応・脱毛 | 前投薬・冷却帽 |
| アドリアマイシン | 心毒性・骨髄抑制 | 心機能モニタリング |
看護過程ポイント:
アセスメント:治療開始前に催吐性リスク評価、腎機能(血清Cr、BUN、eGFR)、聴力(自覚症状)、電解質(特にMg)を確認。
看護診断:「吐き気・嘔吐」「腎障害リスク」「感覚知覚変化」が優先される。
計画・実施:制吐剤の指示通り確実な投与、輸液速度と尿量(1日尿量1500mL以上目標)の厳重な管理、聴覚障害の早期発見のための問診(「耳鳴りはありませんか?」)。
評価:嘔吐の有無(回数・性状)、尿量、腎機能検査値の推移。
暗記のコツ: 「シスプラチン(Cisplatin)=『腎と吐き気』を押さえろ!」「予防は『制吐剤(3剤)』と『輸液(負荷)』」と語呂合わせで覚えましょう。「冷やすのはオキサリプラチン(Oxaliplatin)=『冷(オキ)』」。
国試頻出ポイント: シスプラチンの副作用対策は国試で非常に頻出。特に「腎機能保護のための輸液負荷」と「悪心・嘔吐予防のための制吐剤予防投与」の組み合わせが正答となるパターンが多い。誤答として「輸液制限」「白血球輸血」「冷罨法」が設定されやすい。
出題パターン注意!: 「肺がん患者、シスプラチン+ビノレルビン投与中。朝から嘔吐あり。まず行う看護は?」という状況設定問題に発展。正解は「制吐剤の追加投与の医師への報告」や「バイタルサインと尿量の確認」となる。