核心解説
この問題は、
胸腔穿刺 (Thoracentesis) の介助における看護師の適切な対応を問うています。
胸腔穿刺は、胸腔内に貯留した胸水 (Pleural Effusion) や空気 (気胸: Pneumothorax) を排除するための処置であり、介助時には患者の安全を最優先し、合併症を予防するための知識が不可欠です。特に
最重要! 急速な大量排液による
再膨張性肺水腫 (Re-expansion Pulmonary Edema) のリスクを理解することが鍵となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は
③番 です。
最重要! 胸腔穿刺で大量の胸水を急速に排液すると、虚脱していた肺が急激に再膨張し、肺血管透過性が亢進することで
再膨張性肺水腫 (Re-expansion Pulmonary Edema) を引き起こす危険性があります。また、急速な胸腔内圧の変化は
血圧低下やショック (Shock) を誘発する可能性もあります。そのため、1回の排液量は通常
1000~1500mL を超えないように制限するのが標準的な安全基準です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①番
混同注意! 穿刺中に患者が咳をした場合、胸腔内圧が急変し、針が肺を損傷するリスクがあります。咳が出た場合は
直ちに穿刺を中断し、患者の状態を確認してから医師に報告します。
②番 穿刺中は患者の体動を防ぎ、安全に処置を行うため、
深呼吸ではなく安静呼吸(平常通りの呼吸)を促します。深呼吸は胸腔内圧を大きく変動させ、穿刺針の位置がずれる危険性があります。
④番 穿刺部位は、胸水の貯留している場所(通常は背側下部)を超音波で確認し決定します。肩甲骨角より上部では胸水が貯留していないため、穿刺しても排液できず、肺損傷のリスクが高いです。正しくは
肩甲骨角より下部 で、肋骨上縁(肋間動静脈損傷予防)を穿刺します。
⑤番 穿刺終了後は、穿刺部位からの空気の侵入(気胸再発)や出血を防ぐため、
穿刺部位を上にした側臥位(患側を上にする)または安静臥位で安静を保ちます。穿刺部位を下にすると、創部に圧がかかり痛みが強くなることがあります。
関連概念の整理 (Related Concepts)
胸腔穿刺の合併症として、再膨張性肺水腫、気胸 (Pneumothorax)、出血 (Hemorrhage)、穿刺部位感染、迷走神経反射 (Vagal Reflex) による血圧低下・徐脈があります。特に
再膨張性肺水腫 は、排液量が多い場合や肺の虚脱期間が長い場合にリスクが高まるため、排液量と患者のバイタルサイン (Vital Signs)、呼吸状態 (Respiratory Status) の綿密な観察が必須です。また、排液中に咳嗽 (Cough) や胸痛 (Chest Pain) が出現した場合は、合併症の前兆である可能性が高いため、直ちに医師へ報告します。
概念整理:
胸腔穿刺 (Thoracentesis) は、診断・治療目的で胸腔内の液体(胸水)や空気を排除する手技です。看護師は医師の指示の下、患者の体位保持(座位が基本)、バイタルサインと呼吸状態のモニタリング、排液量・性状の観察、無菌操作の維持、合併症予防が主な役割です。
一目で比較!:
| 比較項目 | 胸腔穿刺 | 胸腔ドレナージ |
|---|
| 目的 | 診断的排液・治療的排液 | 持続的な排液・排気 |
| 排液方法 | 1回の穿刺で排液 | 持続吸引(閉鎖式ドレナージ) |
| 看護の注意点 | 排液量制限(1000~1500mL/回) | ドレーン管理、水封下の管理 |
看護過程ポイント:
アセスメント: バイタルサイン、呼吸音(減弱・消失)、咳嗽・胸痛の有無、穿刺部位の観察(出血・血腫)。
看護診断: 「非効果的呼吸パターン (Ineffective Breathing Pattern)」、「ガス交換障害 (Impaired Gas Exchange)」、「感染リスク状態 (Risk for Infection)」。
計画・実施: 処置前の説明と同意確認、穿刺中の体位保持と安静呼吸の促し、排液量・性状の記録。
評価: 呼吸困難の改善度、合併症の有無。
暗記のコツ: 「
胸腔穿刺、排液は1500mLまで!」と覚えましょう。数字「1500」は再膨張性肺水腫予防のための重要なリミットです。
国試頻出ポイント: 合併症(特に再膨張性肺水腫)とその予防策(排液量制限)、穿刺中の患者の体位と呼吸方法、穿刺部位の解剖学的位置(肋骨上縁)が頻出です。状況設定問題では、排液中の咳嗽や胸痛出現時の対応(穿刺中断)を問われます。
出題パターン注意!: 「胸腔穿刺中の患者が突然咳き込み始めた。看護師の対応として適切なのはどれか。」のような状況設定問題や、「再膨張性肺水腫の予防のために胸腔穿刺で注意すべきことはどれか。」のような知識問題として出題されます。