核心解説
この問題は、
肺血栓塞栓症 (Pulmonary Thromboembolism: PTE) のリスクアセスメントにおける優先的な問診項目を問うています。PTEの病態を理解するには、まず原因となる血栓の発生メカニズムを押さえることが重要です。PTEの大部分は、下肢や骨盤内の深部静脈で形成された血栓(深部静脈血栓症:
Deep Vein Thrombosis: DVT)が遊離し、血流に乗って肺動脈を閉塞することで発症します。したがって、アセスメントの第一歩は、このDVTのリスク因子の有無を確認することに他なりません。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! ③「最近の手術や長期臥床の有無」は、DVTの最も代表的なリスク因子である「血流うっ滞」と「血管内皮障害」を引き起こす状況です。手術による不動、ギプス固定、長期の安静臥床、あるいは長時間の座位(例えば長距離フライト:エコノミークラス症候群)は、下肢静脈の血流を低下させ、血栓形成を促進します。この情報を問診で得ることは、PTEの可能性を評価する上で最も優先度が高いです。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
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混同注意! ①喫煙歴:喫煙は動脈硬化や心血管疾患のリスク因子であり、
肺塞栓症 (PE) よりも
心筋梗塞 (MI) や
脳卒中 (Stroke) との関連が強い項目です。もちろん喫煙は血栓症のリスクを高める一因ではありますが、急性期のPTE発症リスク評価において「最も重要」な問診項目とは言えません。
- ②既往歴としての高血圧:高血圧も動脈硬化性疾患のリスク因子であり、PTEの直接的なリスク因子ではありません。
- ④アレルギー歴:薬物アレルギーは治療薬(抗凝固薬や造影剤など)の選択時に重要ですが、PTE発症のリスク評価とは直接関係しません。
- ⑤職業歴:職業によってはDVTのリスクが高まる可能性(例:長時間の立ち仕事や座り仕事)はありますが、「最も重要」とまでは言えず、③の直接的なリスク因子の確認が優先されます。
関連概念の整理 (Related Concepts)
PTEのリスク因子は「
Virchowの三徴 (Virchow's Triad)」で整理すると記憶しやすいです。
1.
血流うっ滞 (Stasis): 長期臥床、手術後、肥満、妊娠、長時間の旅行
2.
血管内皮障害 (Endothelial Injury): 手術、外傷、中心静脈カテーテル留置
3.
血液凝固能亢進 (Hypercoagulability): 悪性腫瘍、経口避妊薬、凝固異常症、脱水
概念整理:
肺血栓塞栓症 (PTE) は、主に下肢
深部静脈血栓症 (DVT) を原因とする。DVTのリスク評価には
Virchowの三徴 が基本となる。
一目で比較!:
| 疾患 | 主要リスク因子 | 優先問診項目 |
|---|
| 肺血栓塞栓症 (PTE) | 手術後・長期臥床・骨折・悪性腫瘍 | 最近の不動状態の有無 |
| 急性心筋梗塞 (AMI) | 喫煙・高血圧・脂質異常症・糖尿病 | 胸痛の性状・発症時間・冠危険因子 |
| 脳梗塞 (Cerebral Infarction) | 心房細動・高血圧・糖尿病 | 発症時刻・症状の経過・抗凝固薬内服の有無 |
看護過程ポイント: 【アセスメント】意識レベル、呼吸状態(呼吸数、SpO2、胸痛の有無)、循環動態(血圧、心拍数)を迅速に評価する。同時にDVTの有無(下肢の疼痛、腫脹、圧痛、Homan徴候)を確認する。【看護診断】「非効果的呼吸パターン」「心拍出量減少リスク」「不安」など。【介入】絶対安静、酸素療法の準備、静脈路確保、抗凝固療法の準備と観察(出血のリスク評価)。
暗記のコツ:
「PTEのリスク = 動かないこと(手術・安静・旅行)」 と覚えましょう。「エコノミークラス症候群」のイメージが最も分かりやすいです。
国試頻出ポイント: PTEの危険因子(特に術後・長期臥床・骨折)は頻出。また、発症時の3徴候(
突然の呼吸困難・胸痛・血痰)と、診断に用いる検査(
造影CT、
肺血流シンチグラフィ、
D-ダイマー検査)もセットで覚えること。
出題パターン注意!: 単純に「リスク因子はどれか」という知識問題だけでなく、「術後3日目の患者が突然呼吸困難を訴えた」という状況設定問題(事例問題)で出題されることが非常に多いです。その時、第一選択となる検査や看護介入を問われるので、病態とリスク因子をセットで理解しておきましょう。