核心解説
この問題は、
気管支喘息 (Bronchial Asthma) の発作時における呼吸機能検査の典型的な変化を問うています。喘息の病態生理の根幹は、
可逆性の気道閉塞 (Reversible Airway Obstruction) であり、発作時には気管支平滑筋の収縮、粘膜の浮腫、分泌物の増加により気道が狭窄します。この狭窄は特に呼気時に顕著となり、呼気流量の制限を引き起こします。
1.
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! ピークフロー (Peak Expiratory Flow, PEF) は、最大努力での呼気開始直後の最大呼気速度を表します。気道が狭窄すると、この最大速度が低下するため、PEFは発作の重症度評価や治療効果のモニタリングに非常に有用です。患者自身が簡易機器で測定できるため、在宅管理においても必須の指標です。正解は②番です。
2.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
- ①番
肺拡散能 (DLCO) の低下:
混同注意! 肺拡散能は肺胞毛細血管でのガス交換効率を反映します。喘息では気道の閉塞が主体であり、肺胞自体の障害や間質性肺炎のような拡散障害は通常認められません。DLCO低下は主に
肺気腫 (Pulmonary Emphysema) や間質性肺疾患で見られます。
- ③番
肺活量 (VC) の増加:発作時には強い呼気努力にもかかわらず、気道が早期に閉塞するため、むしろ肺活量は低下(または努力性肺活量 FVC が低下)する傾向があります。
- ④番
残気量 (RV) の減少:
混同注意! 気道閉塞により呼出が不完全になるため、肺内に残る空気量(残気量)は
増加 します(エアートラッピング現象)。結果として、全肺気量 (TLC) も増加傾向となります。
- ⑤番
1秒率 (FEV1.0%) の上昇:1秒率は努力性肺活量 (FVC) に対する1秒間の努力呼気量 (FEV1.0) の割合です。気道閉塞があると FEV1.0 が著しく低下するため、
1秒率は低下します。
3.
関連概念の整理 (Related Concepts): 喘息の呼吸機能検査では、閉塞性換気障害のパターン(FEV1.0%低下、PEF低下、RV増加)を理解することが重要です。一方、肺線維症などの拘束性換気障害では、肺活量 (VC) や全肺気量 (TLC) が低下し、1秒率は正常または上昇します。この鑑別は国試頻出です。
概念整理:
気管支喘息 発作時は
閉塞性換気障害 を示す。努力性呼気流量(PEF, FEV1.0)は低下し、肺内に空気が残るため残気量 (RV) は増加する。肺活量 (VC) や肺拡散能 (DLCO) は通常保たれる。
一目で比較!:
| 病態 | 1秒率 (FEV1.0%) | ピークフロー (PEF) | 残気量 (RV) | 肺活量 (VC) | 肺拡散能 (DLCO) |
|---|
| 喘息発作時 | 低下 | 低下 | 増加 | 正常~低下 | 正常 |
| 肺気腫 | 低下 | 低下 | 増加 | 正常~低下 | 低下 |
| 肺線維症 | 正常~上昇 | 正常~低下 | 正常~低下 | 低下 | 低下 |
看護過程ポイント: 喘息患者のアセスメントでは、PEF値の測定と経時的変化を観察することが重要です。発作時にはPEFが患者個人の最良値(ベスト値)の50%未満に低下することが重症度の指標となります。看護計画には、「患者のPEFベスト値を把握し、発作時は測定して医師へ報告する」を含めましょう。
暗記のコツ: 「喘息は息を吐きにくい(呼気障害)」と覚えましょう。「吐き出す力(PEF, FEV1.0)」が弱くなり、「肺に残る空気(RV)」が増える。肺胞自体の機能(DLCO)は正常です。
国試頻出ポイント: 閉塞性(喘息、COPD) vs 拘束性(肺線維症、胸郭変形)の呼吸機能検査パターンの比較は、毎年必ずと言っていいほど出題されます。特にFEV1.0%とPEFは必須知識です。
出題パターン注意!: 「喘息発作時の看護介入として適切なのはどれか(例:酸素投与、体位管理、薬剤投与)」という状況設定問題に発展します。PEFの低下を「重症化のサイン」として捉え、迅速な対応が求められます。