核心解説
この問題は、
がん患者のせん妄 (Delirium in Cancer Patients)に対する薬物療法の第一選択薬を問うています。
せん妄 (Delirium)は、急性に発症する意識障害と認知機能障害を特徴とし、がん患者では特に終末期に高頻度で出現します。病態生理として、神経伝達物質の異常(特にドパミン系の亢進)が関与しており、治療の基本は原因の除去と非薬物療法(環境調整、コミュニケーション)ですが、症状が強い場合には薬物療法が行われます。
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! がん患者のせん妄に対する薬物療法の第一選択薬は、定型抗精神病薬の
ハロペリドール (Haloperidol)です。ハロペリドールはドパミンD2受容体遮断作用により、せん妄の陽性症状(興奮、幻覚、錯乱)を速やかに改善します。特に非経口投与(筋肉内注射)でも効果が期待でき、抗コリン作用や呼吸抑制が少ないため、がん患者のせん妄治療において安全性が高いとされています。投与開始時は少量から開始し、症状に応じて漸増します。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! ①番の
ミダゾラム (Midazolam)、②番の
フルニトラゼパム (Flunitrazepam)、⑤番の
ジアゼパム (Diazepam)は全て
混同注意!ベンゾジアゼピン系薬剤 (Benzodiazepines)です。ベンゾジアゼピン系薬剤はGABA受容体を介して抑制作用を示しますが、せん妄の原因となるドパミン系の亢進を抑制できず、むしろ
せん妄を増悪させる可能性があります。特に高齢者や肝機能低下患者では、このリスクが高まるため、せん妄の第一選択とはなりません。ただし、
アルコール離脱せん妄 (Alcohol Withdrawal Delirium)ではベンゾジアゼピン系薬剤(特にジアゼパムやロラゼパム)が第一選択となるため、この鑑別が国試頻出ポイントです。
④番の
フェノバルビタール (Phenobarbital)はバルビツール酸系薬剤で、GABA受容体への作用が強く、呼吸抑制や依存性が強いため、せん妄の第一選択にはなりません。主に抗てんかん薬や麻酔導入薬として使用されます。
関連概念の整理 (Related Concepts):
せん妄の薬物療法では、第一選択薬であるハロペリドール以外に、非定型抗精神病薬(
リスペリドン (Risperidone)や
オランザピン (Olanzapine))も有効性が報告されています。また、せん妄の原因として、電解質異常、感染症、低酸素血症、薬剤(特に抗コリン薬、オピオイド、ステロイド)の影響など、複数の因子が関与するため、薬物療法と並行して原因の特定と是正が極めて重要です。
概念整理:
せん妄 (Delirium)の病態生理は
神経伝達物質の不均衡(ドパミン↑、アセチルコリン↓)です。治療の基本は非薬物療法(環境調整、見当識刺激、家族の付き添い)ですが、症状が激しい場合の薬物療法第一選択は
ハロペリドール (Haloperidol)(定型抗精神病薬)。ベンゾジアゼピン系はアルコール離脱せん妄を除いて禁忌に近い扱いです。
一目で比較!:
| せん妄の種類 | 第一選択薬 | 使用される理由 |
| がん患者のせん妄(一般) | ハロペリドール(定型抗精神病薬) | ドパミン遮断作用が強く、呼吸抑制が少ない |
| アルコール離脱せん妄 | ジアゼパム(ベンゾジアゼピン系) | GABA受容体刺激で離脱症状を抑制 |
看護過程ポイント:
最重要! アセスメント: せん妄の原因(薬剤、感染、低酸素、代謝異常)を早期に特定するために、バイタルサイン、SpO2、血液検査(電解質、肝腎機能、感染マーカー)、使用薬剤(特にオピオイドやステロイド)の見直しを実施。せん妄の有無は
混同注意!DSM-5診断基準または
混同注意!簡易スクリーニングツール(例:
混同注意!CAM-ICU)を用いて評価。
看護診断: 「急性混乱 (Acute Confusion)」「転倒リスク状態 (Risk for Falls)」などが該当。
計画・実施: 環境刺激の軽減(静かな部屋、薄暗い照明)、家族の付き添いの推奨、見当識を促す声かけ(名前、日付、場所)、離床センサーの使用(転倒予防)、ハロペリドール投与時の副作用(特に錐体外路症状、QT延長)の観察。
評価: 症状の改善度、薬剤副作用の有無を定期的に評価し、必要に応じて医師に報告・相談。
暗記のコツ: 「せん妄=ドパミン過剰。ハロペリドールでドパミンをブロック!」「ベンゾ(ジアゼピン)はせん妄増悪で逆効果。ただしアルコール離脱は例外!」と覚えましょう。語呂合わせ:「ハロ(ハロペリドール)でせん妄ストップ。ベンゾ(ベンゾジアゼピン)はストップしない(むしろ悪化)」
国試頻出ポイント: せん妄の薬物療法は必修問題でも頻出。特に「ハロペリドールが第一選択」「ベンゾジアゼピン系は禁忌に近いが、アルコール離脱せん妄では第一選択」という対比は、必ず出題されます。また、せん妄の非薬物療法(環境調整、家族参加)とセットで問われることが多いです。
出題パターン注意!: 単純な「第一選択薬はどれか」という知識問題から、「がん患者でせん妄が出現。点滴を自己抜去し興奮している。看護師の対応で適切なのはどれか」といった状況設定問題への発展に注意。薬剤の選択と同時に、身体抑制の適否、家族への説明、環境調整の優先順位を問われることがあります。