核心解説
この問題は、
急性心筋梗塞 (Acute Myocardial Infarction: AMI) 発症直後における看護師の
バイタルサイン (Vital Signs) のアセスメント と
緊急対応の優先順位 を問うています。発症直後は
心筋虚血 (Myocardial Ischemia) による壊死 が進行しており、
心拍出量 (Cardiac Output: CO) が急激に低下する可能性が高いため、それを早期に捉える指標を理解することが鍵となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 急性心筋梗塞発症直後、広範囲の心筋が虚血・壊死に陥ると、
左心室 (Left Ventricle) のポンプ機能が著しく低下し、
心拍出量 (CO) が減少 します。これにより全身への血流が不足するため、まず
血圧が低下(収縮期血圧 < 90mmHg)します。この血圧低下に対して、生体は代償機構として
交感神経系 (Sympathetic Nervous System) を活性化し、心拍数を増加させて心拍出量を維持しようとします。その結果、
脈拍の増加(頻脈: Tachycardia) が出現します。これは
心原性ショック (Cardiogenic Shock) の前兆であり、看護師はこの変化をいち早く察知し、医師へ報告し、
昇圧薬や輸液療法 (Fluid Therapy) の準備をする必要があります。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ①番の「血圧の上昇と脈拍の減少」は、急性心筋梗塞発症直後の典型的な所見ではありません。血圧上昇は
高血圧緊急症 (Hypertensive Emergency) などでみられますが、AMI急性期の心不全・ショック状態では血圧は低下します。脈拍減少(徐脈)は、
完全房室ブロック (Complete AV Block) など、一部の合併症(特に下壁梗塞)でみられることがありますが、血圧上昇を伴うことは稀です。
②番の「呼吸数の減少」は、急性期にはむしろ
呼吸困難 (Dyspnea) や肺水腫 (Pulmonary Edema) により
呼吸数は増加(頻呼吸: Tachypnea) するのが一般的です。
③番の「体温の上昇」は、壊死心筋の吸収により
発症後24~48時間以降 にみられることがありますが、発症直後の最優先観察項目ではありません。
⑤番の「体温の低下」も急性期の主要な変化ではなく、ショックが進行した場合の末梢循環不全の一症状として現れることはありますが、初期のバイタルサイン変化としては血圧低下と頻脈が優先されます。
概念整理
急性心筋梗塞(AMI)発症直後の病態生理は、
冠動脈閉塞 (Coronary Occlusion) →
心筋虚血・壊死 →
心拍出量低下 (Low Cardiac Output) →
血圧低下 (Hypotension) →
代償性頻脈 (Compensatory Tachycardia) という一連の流れです。看護師はこの流れを理解し、
血圧 (Blood Pressure) と
脈拍 (Pulse Rate) の変化を常に監視する必要があります。
一目で比較!
| 病態 | 血圧 | 脈拍 | 呼吸数 | 体温 |
| AMI急性期 (心原性ショック前兆) | 低下 | 増加(頻脈) | 増加傾向 | 後日上昇あり |
| 心タンポナーデ (Cardiac Tamponade) | 低下 | 増加(奇脈あり) | 増加 | 変動なし |
| 大動脈解離 (Aortic Dissection) | 上昇(または左右差) | 変動あり | 変動あり | 変動なし |
看護過程ポイント
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アセスメント (Assessment): 発症直後は5分おきのバイタルサイン測定が基本。特に
血圧の低下傾向と脈拍数の増加 を経時的に評価する。尿量減少(< 30mL/h)も腎灌流圧低下の重要な指標。
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看護診断 (Nursing Diagnosis):
「心拍出量減少 (Decreased Cardiac Output)」 が最優先。リスク状態として
「ショック (Risk for Shock)」 も関連。
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計画・実施 (Planning & Implementation): 絶対安静の維持、酸素吸入(4L/分 鼻カニューレなど)、モニター管理、静脈路確保、疼痛コントロール(モルヒネ投与の準備)。
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評価 (Evaluation): 血圧が正常範囲に維持され、脈拍が安定、尿量が確保されているか。
暗記のコツ
「AMIのショックサインは『血圧が下がって、脈が速くなる』」と覚えましょう。「心臓が壊れてポンプが弱る → 血圧が下がる → 体が慌てて心拍数を上げる」というストーリーでイメージすると記憶に定着します。
国試頻出ポイント
最重要! AMI急性期の
血圧低下 + 頻脈 は、
心原性ショック (Cardiogenic Shock) のサインとして毎年のように出題されます。選択肢に「血圧上昇」や「脈拍減少」があれば、まず疑ってかかりましょう。また、
急性心筋梗塞 (AMI) のバイタルサイン変化 は、
狭心症 (Angina Pectoris) との鑑別ポイントとしても頻出です。
出題パターン注意!
単純な知識問題として「AMI発症直後のバイタルサインは?」と聞かれるだけでなく、事例問題として「AMIで入院中の患者のバイタルサインが血圧80/50mmHg、脈拍120回/分、呼吸数28回/分になった。看護師の対応で適切なのはどれか」といった形で、
異常値の認識から適切な報告・対応へ と発展します。血圧低下と頻脈のセットを見たら「ショックかも!」と反射的に考えられるようにしておきましょう。