核心解説
この問題は、心理的ストレス対処理論における「
コーピング (Coping)」の種類を問うています。コーピングは、ストレス状況に適応するための認知的・行動的努力であり、大きく2つの分類に分けられます。
問題焦点型コーピング (Problem-focused Coping) は、ストレスの原因そのものに直接働きかけ、問題解決や環境改善を図る能動的な対処行動です。一方、
情動焦点型コーピング (Emotion-focused Coping) は、問題を変えられない場合に、ストレスに伴う感情(不安、怒り、悲しみ)を調整することに焦点を当てた対処行動です。
正解の根拠
最重要! 選択肢③「問題の原因を分析し解決策を考える」は、ストレッサー(原因)に対して直接アプローチし、状況を変えようとする行動です。これは、
ラザルス (Lazarus) とフォークマン (Folkman)が提唱した問題焦点型コーピングの典型的な例であり、患者の適応状態を高めるための積極的なストレス対処戦略です。看護師は、患者がこのタイプのコーピングを選択できるよう、情報提供や環境調整を支援します。
誤答の分析
混同注意! ①「友人に愚痴を聞いてもらう」は、感情を表出し社会的サポートを得ることで不安を軽減しようとする
情動焦点型コーピングです。問題解決ではなく、感情調整が目的です。
②「感情を抑えて我慢する」は、
情動焦点型コーピングの一種で、特に
抑圧 (Suppression)と呼ばれる防御機制に近い対処です。長期的には適応を妨げる可能性があります。
④「問題をなかったことにする」は、
情動焦点型コーピングの
否認 (Denial)に該当し、現実からの逃避行動です。
⑤「ストレスを感じないように気をそらす」も、問題そのものから注意をそらすことで感情を調整する
情動焦点型コーピングです。
関連概念の整理
コーピングの2分類をしっかり区別しましょう。
| 項目 | 問題焦点型コーピング | 情動焦点型コーピング |
| 対象 | ストレッサー(原因)そのもの | ストレスに伴う感情 |
| 目的 | 問題解決、環境改善 | 感情調整、苦痛の軽減 |
| 具体例 | 情報収集、計画立案、専門家への相談、スキル獲得 | リラクゼーション、気晴らし、感情表出、否認、抑圧 |
| 看護支援 | 情報提供、問題解決技法の教育、環境調整 | 傾聴、受容、リラクゼーション法の指導、安全な感情表出の場の提供 |
看護過程ポイント
-
アセスメント: 患者のストレス要因(病状、治療、環境など)と、現在取っているコーピング方略を特定する。患者にとって有効か、不適応を引き起こしていないか評価。
-
看護診断: 「非効果的コーピング (Ineffective Coping)」や「不安 (Anxiety)」など。特に問題焦点型が選択できない状況では、支援が必要。
-
計画・介入: 患者のコーピングスタイルを尊重しつつ、状況に応じた適応的なコーピング方略を一緒に探す。問題焦点型が有効な場面では、具体的な問題解決プロセスを支援。
-
評価: 患者がストレスに適応し、心理的・身体的症状が改善したか評価。
暗記のコツ
「問題焦点型 = 原因に『攻める』(能動的)」、「情動焦点型 = 感情を『なだめる』(受動的)」とイメージしましょう。
国試頻出ポイント
この問題は、コーピングの分類を具体的な行動から選ばせる形で頻出です。事例問題で「患者が〇〇という行動をとったが、これはどのようなコーピングか?」という形で問われることが多いので、各行動がどちらに分類されるか、具体的な例を覚えましょう。
出題パターン注意!
単純な知識問題だけでなく、「手術を控えた患者が、『手術のリスクについて詳しく知りたい』と医師に質問した」という事例で、問題焦点型コーピングと気づく問題や、「『考えないようにしている』と話す患者への看護介入」を問う問題にも対応できるようにしておきましょう。