尿崩症の診断に用いられる検査とその結果の組み合わせで正しいのはどれか。 | MyMerci
内部環境調節機能の障害
問題

尿崩症の診断に用いられる検査とその結果の組み合わせで正しいのはどれか。

解説
尿崩症はADHの分泌不全 (中枢性) または腎臓でのADH反応性低下 (腎性) により、多尿と口渇をきたす疾患である。中枢性尿崩症ではバソプレシン負荷により尿浸透圧が上昇するが、腎性尿崩症では上昇しない。選択肢1、2は正常またはSIADHでみられる反応である。

詳細解説

核心解説 この問題は、尿崩症 (Diabetes Insipidus)の診断に用いられる検査とその結果の組み合わせを問うています。尿崩症は、抗利尿ホルモン (ADH: Antidiuretic Hormone) の分泌不全(中枢性尿崩症)または腎臓でのADHに対する反応性低下(腎性尿崩症)により、水の再吸収が障害され、大量の低張尿が排泄される疾患です。診断には、ADHの分泌能と腎臓の反応性を評価する負荷試験が用いられます。

正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は「最重要! バソプレシン負荷試験で尿浸透圧が上昇しない」です。
バソプレシン負荷試験は、外因性のADH(バソプレシン)を投与し、尿浸透圧の変化をみる検査です。
- 中枢性尿崩症では、体内のADHが不足しているため、外因性ADHに反応して尿浸透圧は上昇します。 - 腎性尿崩症では、腎臓のADH受容体の異常や反応性低下があるため、外因性ADHを投与しても尿浸透圧は上昇しません。 つまり、この検査は中枢性と腎性の鑑別に用いられ、「バソプレシン負荷試験で尿浸透圧が上昇しない」という結果は、腎性尿崩症を示唆する所見です。問題文は「尿崩症の診断に用いられる検査とその結果の組み合わせで正しいもの」を問うており、腎性尿崩症を含む尿崩症全体で正しい所見は、この選択肢のみとなります。

誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意!
②「尿崩症では抗利尿ホルモン (ADH) が過剰に分泌される」→ 誤り。尿崩症ではADHの分泌不全(中枢性)または作用不全(腎性)です。ADHが過剰に分泌されるのは、SIADH (抗利尿ホルモン不適合分泌症候群)です。
③「血漿浸透圧が低下する」→ 誤り。尿崩症では、水分が尿中に大量に失われるため、血漿浸透圧は上昇(高ナトリウム血症)します。血漿浸透圧が低下するのは、SIADHや水分過剰摂取時です。
④「高張食塩水負荷試験で尿量が減少する」→ 誤り。高張食塩水負荷試験は、血漿浸透圧を上昇させ、ADH分泌を促す検査です。健常者ではADHが分泌され尿量は減少しますが、尿崩症(特に中枢性)ではADHが分泌されず、尿量は減少しません。
⑤「水分制限試験で尿浸透圧が上昇する」→ 誤り。水分制限試験は、体内を脱水状態にしてADH分泌を促す検査です。健常者や軽症の中枢性尿崩症では尿浸透圧は上昇しますが、重症の中枢性尿崩症や腎性尿崩症では、ADHの分泌不全または反応性低下により尿浸透圧は上昇しません。尿崩症全般で必ず上昇するとは言えません。

関連概念の整理 (Related Concepts)
尿崩症とSIADHは、ADHを中心とした真逆の病態です。鑑別ポイントを整理しましょう。
項目尿崩症 (Diabetes Insipidus)SIADH
ADH分泌低下(中枢性) or 正常(腎性)過剰(不適合分泌)
尿量多尿 (3L/日以上)乏尿傾向
尿浸透圧低張尿 (300 mOsm/L未満)高張尿
血漿浸透圧高値(高Na血症)低値(低Na血症)
主な症状口渇、多飲水分貯留、浮腫、低Na血症症状

概念整理: 尿崩症の核心は「ADHの作用不足による水の再吸収障害」であり、診断には「ADHの分泌能(中枢性 vs 腎性の鑑別)」と「腎臓の反応性」を評価する負荷試験が重要です。
一目で比較!: 混同注意! 「尿崩症 vs SIADH」はADHの「不足 vs 過剰」で真逆。尿量・浸透圧・Na値の3点セットで覚えましょう。
看護過程ポイント: アセスメントでは、1日尿量(多尿の有無)、口渇の程度、血清Na値、体重変化を継続的に観察。看護診断は「体液量不足 (Deficient Fluid Volume)」や「口渇 (Thirst)」が優先されます。計画では、必要に応じた水分補給の支援、電解質バランスの維持、ADH補充療法(デスモプレシン酢酸塩水和物:DDAVP)の確実な投与と効果判定が重要です。
暗記のコツ: 「尿崩症 = 尿がドバドバ(多尿) → 体の水が減る → 血液が濃縮(高Na血症) → 喉がカラカラ(口渇)」。一方「SIADH = ADHが出過ぎ → 水をため込む → 血液が薄まる(低Na血症)」。
国試頻出ポイント: 尿崩症の定義(多尿・低張尿・口渇)、中枢性と腎性の鑑別に用いる検査(バソプレシン負荷試験・水分制限試験)、SIADHとの鑑別(血漿浸透圧・尿浸透圧・血清Na値)が頻出です。特に「バソプレシン負荷試験で尿浸透圧が上昇する = 中枢性尿崩症」は必須知識です。
出題パターン注意!: 単純な知識問題に加えて、「頭部外傷後や脳腫瘍術後に多尿が出現した患者」という状況設定問題で、尿崩症の発生と看護介入(尿量測定、電解質補正、DDAVP投与)を問う問題がよく出ます。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario)
脳外科病棟で勤務するあなた。下垂体腺腫術後1日の患者さん(50代女性)が、1時間の尿量が300mlを超え、口渇を強く訴えています。尿は薄い色で、バイタルサインは血圧 98/60 mmHg、脈拍 102回/分、体温 37.0℃です。尿崩症の可能性が疑われます。看護師としてどのようにアセスメントし、対応すべきでしょうか?

看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)
1. 観察 (Assessment): 尿量(1時間ごと)、尿比重、尿浸透圧、口渇の程度、皮膚ツルゴール、体重変化を確認。電解質(特にNa)の緊急採血をオーダー。
2. 報告 (Report / SBAR): 「S (状況): 下垂体腺腫術後1日、1時間尿量300ml、口渇あり。B (背景): 術後の尿崩症を疑う。A (アセスメント): 血圧低下と頻脈あり、循環血液量減少のリスク。R (提案): 緊急のNaと浸透圧の採血、およびDDAVP投与の指示を仰ぎたい。」
3. 介入 (Intervention): 最重要! 医師の指示のもと、デスモプレシン酢酸塩水和物 (DDAVP)を投与。同時に、経口または静脈内での水分補給を開始(口渇に応じて、かつ電解質バランスを考慮)。
4. 評価 (Evaluation): DDAVP投与後、尿量が減少したか、尿浸透圧が上昇したか、血清Na値が是正されたかを確認。

患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)
- 最重要! 尿崩症の患者は、意識レベルが低下している場合や口渇を感じられない場合(高齢者・乳幼児・意識障害者)、重症の高Na血症を来たしやすく、脳細胞の脱水から意識障害や痙攣を引き起こす危険があります。
- DDAVP投与後は、水分の再吸収が促進されるため、水分の過剰摂取による低Na血症(水中毒)に注意が必要です。バランスの良い水分管理が求められます。
- 頭部外傷後や脳腫瘍術後は、一過性または永続的な尿崩症が発生し得ることを常に念頭に置き、術後の尿量測定は必須です。
看護プロトコル: 術後患者の尿量は、原則1時間ごとに測定し、200ml/時間以上が2時間以上続く場合は、尿崩症を疑い医師に報告する。記録には、尿量の他に、尿の色・性状、水分出納バランス、口渇の有無、血清Na値の推移を必ず含める。
先輩看護師の一言: 「術後の多尿を見たら、まずは尿崩症を疑って!『術後だから』で放置すると、あっという間に高Na血症になって患者さんの意識レベルが悪化することもある。尿量測定は地味だけど、患者さんの命を守る大切な観察項目です。国試でも現場でも、この『気づき』ができる看護師を目指しましょう!」

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