核心解説
この問題は、
急性腎障害 (Acute Kidney Injury: AKI) の診断基準を問うています。AKIは、腎機能が急激に低下する病態であり、その診断には国際的に標準化された
KDIGO (Kidney Disease: Improving Global Outcomes) 基準が広く用いられます。この基準の核心は、腎機能の指標である
血清クレアチニン値 (Serum Creatinine) の上昇と
尿量 (Urine Output) の減少です。
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! AKIの診断基準 (KDIGO基準) は以下の3つの項目で定義されます。
1.
血清クレアチニン値の上昇: 48時間以内に
0.3mg/dL以上 の上昇、または7日以内にベースライン値の
1.5倍以上 の上昇。
2.
尿量の減少: 6時間以上持続して
0.5mL/kg/時未満。
これらのいずれかを満たすことでAKIと診断されます。よって、選択肢③の「血清クレアチニン値の上昇」は正しい診断基準の一つです。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! ①「血中尿素窒素 (BUN) の低下」は、AKIでは腎機能低下により
BUNは上昇 します。低下するのは肝不全や低栄養時です。BUNは診断基準には含まれません。
②「尿中蛋白の増加」は、
糸球体腎炎 (Glomerulonephritis) や
ネフローゼ症候群 (Nephrotic Syndrome) などで認められますが、AKIの診断基準項目ではありません。
④「血清カリウム値の上昇」は、AKIの合併症として重要な
高カリウム血症 (Hyperkalemia) ですが、これは診断基準ではなく、重篤な電解質異常として観察・治療すべき項目です。
⑤「尿比重の上昇」は、脱水や腎前性AKIで認められることがありますが、診断基準には含まれず、むしろAKIの病態分類の参考所見です。
関連概念の整理 (Related Concepts):
AKIの診断には、血清クレアチニン値と尿量に加え、原因検索のための画像検査や尿検査所見(尿沈渣、FENaなど)が併用されます。AKIは腎前性、腎性、腎後性に分類され、それぞれアプローチが異なります。また、
混同注意! 慢性腎臓病 (CKD) との違いは、発症からの経過時間(AKIは数時間〜数日、CKDは3ヶ月以上)です。
概念整理: AKIの診断は「血清Cr上昇」と「尿量減少」の2本柱(KDIGO基準)。BUNは腎機能の補助指標だが診断基準には非該当。高K血症は合併症であり診断基準ではない。
一目で比較!:
| 指標 | AKI診断基準 | 関連するが診断基準外 |
|---|
| 血清Cr | 上昇 (48hで0.3↑、7日で1.5倍↑) | - |
| 尿量 | 減少 (6h以上で0.5mL/kg/h未満) | - |
| BUN | 基準外 | 腎前性AKIで高値、肝障害で低値 |
| 尿蛋白 | 基準外 | 糸球体疾患の指標 |
| 血清K | 基準外 | AKI合併症として重要 |
看護過程ポイント:
-
アセスメント: 血清Crの経時的変化を必ず確認。尿量は時間尿測定(1時間ごとの蓄尿)が正確。BUN/Cr比(正常10〜20: 腎前性では20以上)で病態分類の手がかりを得る。
-
看護診断: 「体液量過剰(腎機能低下による)」や「電解質バランス異常のリスク状態(高カリウム血症など)」が優先される。
-
介入: 医師への報告はSBAR形式で「血清Crが〇時間で△上昇、尿量が□mL/時です」と具体的数値を伝える。高K血症時の心電図モニタリング(テント状T波など)を怠らない。
暗記のコツ: 「AKIの診断は『Cr』と『尿』の2つ!数字は『48時間で0.3mg/dLアップ』『7日で1.5倍アップ』『6時間で0.5mL/kg/h未満』の3パターンをゴロで覚えよう。Crは『C』= Creatinine、尿は『U』= Urine Output!」
国試頻出ポイント: AKIの診断基準は毎年のように出題される基本中の基本。KDIGO基準の具体的な数値(0.3mg/dL、1.5倍、0.5mL/kg/h)が問われる。選択肢に「BUN」「尿蛋白」「血清K」が混ざっている問題は定番パターン。
出題パターン注意!: 単純な知識問題(どの項目が診断基準か)から、事例問題(「術後2日目の患者、尿量が30mL/時、血清Crが0.8→1.2mg/dLに上昇。看護師の対応は?」)へと発展。診断基準を基にAKIを早期発見するアセスメント能力が問われる。