核心解説
この問題は、肺胞レベルでのガス交換効率を直接評価する指標を問うています。
肺拡散能 (Diffusing Capacity of the Lung) は、肺胞内の酸素(O2)または一酸化炭素(CO)が肺胞毛細血管壁を通って血液中に移動する速度・効率を測定する検査です。これにより、肺胞上皮と毛細血管内皮からなる
肺胞毛細血管膜 (Alveolar-Capillary Membrane) の厚さや表面積の異常(例:間質性肺炎による膜肥厚、肺気腫による表面積減少)を評価できます。この指標がガス交換効率を最も直接的に反映するため、正解は
肺拡散能です。
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 肺拡散能(特にDLCO: 一酸化炭素拡散能)は、ガス交換の場である肺胞毛細血管膜の機能を総合的に評価します。低下は膜肥厚(間質性肺炎、肺水腫)や有効表面積減少(肺気腫、肺切除後)を示唆し、臨床的にガス交換障害の重症度判定に用いられます。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! ②肺コンプライアンスは肺の伸展性(弾性)を評価し、③1回換気量と⑤肺活量は換気量(空気の移動量)を、④気道抵抗は気道の狭さを評価する指標です。これらは換気効率や呼吸仕事量の評価には有用ですが、肺胞レベルでのガス交換の「効率」を直接測るものではありません。
関連概念の整理 (Related Concepts):
| 指標 | 評価対象 | 主な異常所見と疾患例 |
|---|
| 肺拡散能 (DLCO) | 肺胞毛細血管膜でのガス交換効率 | 低下:間質性肺炎、肺気腫、肺水腫 / 上昇:肺出血、赤血球増多症 |
| 肺コンプライアンス | 肺の伸展性(弾性抵抗) | 低下:肺線維症、肺水腫 / 上昇:肺気腫 |
| 1回換気量 (TV) | 1回の呼吸で出入りする空気量 | 低下:拘束性障害、呼吸筋力低下 |
| 気道抵抗 (Raw) | 気道の狭さ(粘性抵抗) | 上昇:気管支喘息、COPD、気道狭窄 |
| 肺活量 (VC) | 最大吸気位から最大呼気位までの換気量 | 低下:拘束性障害、呼吸筋障害 |
概念整理: ガス交換効率の評価は「換気(V)」と「灌流(Q)」のバランス(V/Q比)が基本ですが、その前提として肺胞毛細血管膜の拡散能が正常であることが必要です。拡散能低下は低酸素血症の原因の一つです。
一目で比較!: 肺拡散能(膜通過効率) vs 肺コンプライアンス(肺の硬さ) vs 換気量指標(肺に入る空気の量)。問題文の「ガス交換の効率」に着目し、膜を通過する「速度・しやすさ」を測る指標を選びましょう。
看護過程ポイント: 肺拡散能低下が疑われる患者では、アセスメントとして
経皮的動脈血酸素飽和度 (SpO2) と動脈血液ガス分析(ABG)のPaO2、PaCO2を確認します。看護診断として「ガス交換障害 (Impaired Gas Exchange)」を立案し、介入として酸素療法やポジショニング(肺拡張促進)、患者教育(禁煙、呼吸法)を計画します。評価ではSpO2やABG値の改善を確認します。
暗記のコツ: 「拡散=膜を通過して広がる」イメージ。「コンプライアンス=伸びやすさ(ゴムのよう)」、「気道抵抗=ストローを吸う時の抵抗」と連想して覚えましょう。肺拡散能は「膜の健康状態チェック」です。
国試頻出ポイント: 肺機能検査の各指標とその意味は頻出です。特に「ガス交換効率=肺拡散能」は直接対応します。また、拘束性障害(肺コンプライアンス低下)と閉塞性障害(気道抵抗上昇)の鑑別とセットで出題されることが多いです。
出題パターン注意!: 単純な用語定義だけでなく、事例問題(例:「間質性肺炎患者の肺機能検査で最も低下が予想されるのは?」)や、検査値の解釈問題に発展します。数値基準(DLCOの正常範囲)を問う問題も稀にあるため、正常値の目安(80%以上)も押さえておきましょう。