核心解説
この問題は、
創傷治癒 (Wound Healing) の過程において、
創収縮 (Wound Contraction) に中心的に関与する細胞を問うています。創傷治癒は、炎症期、増殖期、成熟期(リモデリング期)に大別され、それぞれ異なる細胞が重要な役割を担います。
創収縮は主に増殖期後半から成熟期にかけて観察される現象で、創縁が中心に向かって引き寄せられ、創面積が縮小するプロセスです。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は④番の
筋線維芽細胞 (Myofibroblast)です。
最重要! 筋線維芽細胞は、創傷治癒の過程で
線維芽細胞 (Fibroblast) が分化して生じる特殊な細胞です。平滑筋アクチン (α-SMA: α-smooth muscle actin) を発現し、収縮能を持ちます。この収縮能により創縁を引き寄せ、創収縮を引き起こします。この働きにより、創傷の大きさを減少させ、その後の上皮化を促進します。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①
混同注意! リンパ球 (Lymphocyte)は炎症期に浸潤し、免疫応答(抗原認識、抗体産生、細胞傷害)を担当します。創収縮には直接関与しません。
②
混同注意! 血管内皮細胞 (Vascular Endothelial Cell)は増殖期における
血管新生 (Angiogenesis) に必須の細胞です。創傷部への酸素や栄養供給の基盤を作りますが、収縮能は持ちません。
③
混同注意! 角化細胞 (Keratinocyte)は表皮の主要構成細胞で、創傷治癒の最終段階である
再上皮化 (Re-epithelialization) に中心的役割を果たします。創縁から遊走・増殖し、創面を覆います。収縮能は持ちません。
⑤
混同注意! 好中球 (Neutrophil)は炎症期に最初に創部に動員される白血球で、
貪食作用 (Phagocytosis) により細菌や壊死組織を除去します。創収縮には関与しません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
創傷治癒の3つの主要過程とその主な担当細胞を整理しておきましょう。
| 治癒過程 | 主な細胞 | 主な役割 |
| 炎症期 (Inflammatory Phase) | 好中球 → マクロファージ | 異物・細菌の除去、サイトカイン放出 |
| 増殖期 (Proliferative Phase) | 線維芽細胞、血管内皮細胞、角化細胞 | 肉芽組織形成、血管新生、創収縮、再上皮化開始 |
| 成熟期/リモデリング期 (Maturation/Remodeling Phase) | 筋線維芽細胞 | 創収縮、コラーゲン再構築、瘢痕成熟 |
筋線維芽細胞は創収縮に特化した細胞であることを覚えておきましょう。
概念整理: 創収縮は
筋線維芽細胞 (Myofibroblast)の収縮能によって引き起こされる。線維芽細胞が分化し、平滑筋アクチンを獲得することで創縁を引き寄せる。
一目で比較!:
創収縮 (Myofibroblast) vs
再上皮化 (Keratinocyte) vs
血管新生 (Vascular Endothelial Cell)。それぞれ異なる細胞が異なる時期に異なる役割を果たす。
看護過程ポイント: 創傷の観察では、創収縮の程度(創面積の縮小)と再上皮化の進行(創縁からの新しい表皮の伸び)をアセスメントする。創収縮が過度に進むと機能障害や審美的問題を生じることがある(例:熱傷後の瘢痕拘縮)。
暗記のコツ: 「
筋線維芽細胞」という名前自体に「筋(筋肉=収縮する)」という意味が含まれている。筋肉のように収縮する線維芽細胞、と覚えよう。
国試頻出ポイント: 創傷治癒の各期と主な細胞の組み合わせは頻出。特に「炎症期→好中球」「増殖期→線維芽細胞・血管内皮細胞」「成熟期→筋線維芽細胞」の対応を押さえておくこと。