核心解説
この問題は、
多因子疾患 (Multifactorial Disease) と
単一遺伝子疾患 (Monogenic Disease) の鑑別を問うています。
多因子疾患とは、
単一の遺伝子変異ではなく、複数の遺伝的要因(遺伝的素因)に加えて、生活習慣や環境因子が複雑に絡み合って発症する疾患です。この概念を正しく理解しているかが問われています。
1.
核心概念の分析 (Key Concept):
疾患の原因を「遺伝的要因のみ」か「遺伝的要因 + 環境要因」かで分類する能力が求められます。
最重要! 単一遺伝子疾患はメンデルの法則に従い、一つの遺伝子の異常で発症します。一方、多因子疾患は、複数の感受性遺伝子と環境因子(食生活、運動、喫煙、ストレスなど)の相互作用で発症します。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale):
④
高血圧症 (Hypertension) は、多因子疾患の代表例です。
遺伝的な血圧調節系の異常に、食塩摂取過多、肥満、運動不足、ストレスなどの環境要因が加わることで発症・進展します。本態性高血圧症の大部分がこれに該当します。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
①
筋ジストロフィー (Muscular Dystrophy):
混同注意! デュシェンヌ型筋ジストロフィーはX連鎖劣性遺伝の単一遺伝子疾患です。ジストロフィン遺伝子の異常が原因です。
②
ハンチントン病 (Huntington's Disease): 常染色体優性遺伝の単一遺伝子疾患です。HTT遺伝子のCAGリピート異常が原因です。
③
フェニルケトン尿症 (Phenylketonuria, PKU): 常染色体劣性遺伝の単一遺伝子疾患です。フェニルアラニン水酸化酵素遺伝子の異常が原因です。食事療法で発症を予防できる点が環境要因と混同されやすいですが、
根本原因は単一遺伝子の変異です。
⑤
血友病 (Hemophilia): X連鎖劣性遺伝の単一遺伝子疾患です。第VIII因子(血友病A)または第IX因子(血友病B)の遺伝子異常が原因です。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts):
その他の代表的な多因子疾患として、
2型糖尿病 (Type 2 Diabetes Mellitus)、
脂質異常症 (Dyslipidemia)、
気管支喘息 (Bronchial Asthma)、
統合失調症 (Schizophrenia)、
口蓋裂 (Cleft Palate) なども併せて覚えておきましょう。単一遺伝子疾患の代表例(常染色体優性:ハンチントン病、マルファン症候群。常染色体劣性:PKU、嚢胞性線維症。X連鎖:血友病、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)との対比が国試頻出です。
概念整理: 疾患原因の分類(遺伝 vs 環境)
| 分類 | 原因 | 代表疾患 |
| 単一遺伝子疾患 | 1つの遺伝子変異(メンデル遺伝) | ハンチントン病、血友病、筋ジストロフィー、フェニルケトン尿症 |
| 多因子疾患 | 複数の遺伝子 + 環境因子 | 高血圧症、2型糖尿病、喘息、口蓋裂 |
| 染色体異常症 | 染色体の数的・構造的異常 | ダウン症候群、ターナー症候群 |
一目で比較!: 単一遺伝子疾患 vs 多因子疾患
| 項目 | 単一遺伝子疾患 | 多因子疾患 |
| 原因遺伝子数 | 1つ | 複数(ポリジーン) |
| 環境要因の関与 | ほとんどなし | 大きく関与(生活習慣など) |
| 遺伝形式 | メンデル遺伝(優性/劣性/X連鎖) | 非メンデル遺伝(家族集積性あり) |
| 発症率 | 比較的低い | 高い(成人病に多い) |
看護過程ポイント:
多因子疾患の患者を看護する際は、
遺伝的素因と生活習慣の両方にアプローチする必要があります。例えば高血圧症の患者には、薬物療法だけでなく、減塩、運動、体重管理などの生活指導が看護介入の重要な柱となります。患者の遺伝的背景を考慮した個別的な健康教育が求められます。
暗記のコツ: 「高血圧は『高(こう)』い『遺(い)』伝的素因に『環(かん)』境要因」→「高・遺・環」で覚えましょう!単一遺伝子疾患は「メンデル遺伝病」というキーワードで、遺伝形式(優性・劣性・X連鎖)と代表疾患名をセットで暗記するのが効率的です。
国試頻出ポイント: 高血圧症が多因子疾患であることは基本中の基本です。また、「○○病は単一遺伝子疾患か多因子疾患か」という形で、代表疾患の分類を問う問題が繰り返し出題されています。選択肢に並んだ疾患名を見て、即座に分類できるようにしておきましょう。
出題パターン注意!: 「○○の患者さんへの生活指導で適切なのはどれか?」といった状況設定問題に発展する可能性があります。多因子疾患の患者には、遺伝的要因を変えることはできませんが、環境要因(生活習慣)への介入が有効であることを押さえておきましょう。