核心解説
この問題は、
補体系 (Complement System) の3つの活性化経路のうち、どの経路が
抗原抗体複合体 (Immune Complex) によって開始されるかを問う、免疫学の基本中の基本です。補体は、体内に侵入した病原体を排除するための重要な自然免疫・獲得免疫のエフェクター機構であり、その活性化経路の違いを理解することは、感染症や自己免疫疾患の病態を理解する上で不可欠です。
1. 核心概念の分析 (Key Concept)
補体系は、肝臓で産生される約30種類の血中タンパク質からなるカスケード反応系です。活性化経路は大きく3つに分類されます。
①
古典的経路 (Classical Pathway): 抗原抗体複合体(特にIgGまたはIgM)がC1qタンパク質に結合することで活性化が開始されます。
②
第二経路 (Alternative Pathway): 細菌や真菌などの微生物の表面構造に、C3タンパク質が自然に(抗体非依存的に)結合することで活性化が開始されます。
③
レクチン経路 (Lectin Pathway): 微生物表面の糖鎖(マンノースなど)に、マンノース結合レクチン (MBL) が結合することで活性化が開始されます。
これらの3経路は、最終的にC3転換酵素を形成し、その後の共通経路(C5転換酵素の形成、膜侵襲複合体 (MAC) の形成)へとつながります。
2. 正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は
③ 古典的経路 です。古典的経路は、抗体(IgG、IgM)が抗原と結合して形成された
抗原抗体複合体 (Immune Complex) が、補体第一成分であるC1qに結合することで活性化が開始されるため、
獲得免疫 (Adaptive Immunity) に連携した経路であることが特徴です。
3. 誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意!
①
第二経路 (副経路): 抗体の関与なしに、微生物表面の多糖類などに直接C3が結合することで活性化します。
自然免疫 (Innate Immunity) の重要なエフェクターです。抗原抗体複合体は関与しません。
②
レクチン経路: これも抗体非依存的です。病原体の糖鎖(マンノース)を認識するMBL(レクチン)が結合することで活性化します。
④
共通経路: 3つの経路が合流した後の、C3以降の活性化段階を指す用語で、経路の開始段階ではありません。C3転換酵素の形成以降の反応を指します。
⑤
終末経路: 共通経路の最終段階で、C5からC9までが重合して膜侵襲複合体 (MAC) を形成する過程を指します。開始経路ではありません。
4. 関連概念の整理 (Related Concepts)
古典的経路は、自己免疫疾患(例:
全身性エリテマトーデス (SLE))の病態に深く関与します。SLEでは、過剰な免疫複合体が産生され、それが腎臓の糸球体基底膜などに沈着し、古典的経路を活性化することで組織障害(例:ループス腎炎)を引き起こします。そのため、SLEの活動期には補体価(特にC3、C4)が消費により低下する(低補体血症)ことが臨床的に重要です。
概念整理
| 経路名 | 開始因子 | 免疫の種類 |
|---|
| 古典的経路 | 抗原抗体複合体 (IgG/IgM + C1q) | 獲得免疫 (Adaptive) |
| 第二経路 | 微生物表面構造 (抗体非依存) | 自然免疫 (Innate) |
| レクチン経路 | 微生物の糖鎖 (MBL結合) | 自然免疫 (Innate) |
一目で比較!
- 古典的経路 vs 第二経路:抗体の有無が最大の違い。古典的経路は免疫複合体依存、第二経路は微生物表面へのC3自然沈着依存。
- 補体価の低下(低補体血症)は古典的経路の活性化を示唆し、SLEや急性糸球体腎炎でよく見られます。
看護過程ポイント
免疫複合体が関与する疾患(SLE、血管炎症候群など)の看護では、補体価(C3、C4)の変動をモニタリングし、疾患活動性の評価に役立てます。また、補体活性化による炎症反応(発熱、皮疹、関節痛など)の観察と、ステロイド療法や免疫抑制剤の副作用の管理が重要です。
暗記のコツ
「古→抗体(Classical = Antibody)」、「第2→直接(Alternative = Direct activation)」、「レクチン→糖(Lectin = Sugar recognition)」と、経路名の頭文字と開始因子を結びつけて覚えましょう。
国試頻出ポイント
「古典的経路は何によって開始されるか?」という単純知識問題はもちろん、SLEの病態(低補体血症)や、グラム陰性菌感染症における第二経路の活性化など、疾患と経路の関連を問う問題にも対応できるようにしておきましょう。
出題パターン注意!
「SLEの患者で補体価が低下している。この現象に関与する補体活性化経路はどれか。」のように、免疫複合体と古典的経路の関連を、疾患の検査データと結びつけて問う問題が増えています。